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2022年芝中長距離チャンピオン大集合! 有馬記念プレビュー

勝木淳競馬ライター

競馬の祭典が日本ダービーなら、有馬記念は年末最後のお祭り。一年最後の大勝負もよし、ドラマチック有馬が紡ぐ物語に浸るもよし。お祭りは楽しんだもの勝ち。グズグズせずに目一杯満喫したいものだ。

今年の有馬記念はまさにオールスター感謝祭。古馬芝中長距離GⅠ6レースの勝ち馬がすべて顔をそろえてくれた。なかでもジャパンC勝ち馬ヴェラアズールの参戦には感謝したい。過去10年でジャパンC勝ち馬の参戦は4頭。エピファネイア、キタサンブラック、シュヴァルグラン、そして最後は19年スワーヴリチャードなので、3年ぶりの参戦だ。大阪杯からジャパンC、牝馬のエリザベス女王杯まで。中長距離GⅠ勝ち馬勢ぞろいを記念して、2022年の芝中長距離戦線を振り返る。

■大阪杯 ポタジェ 1.58.4

春最初は大阪杯。有馬記念を勝ち、年度代表馬になったエフフォーリアが単勝人気1.5倍と注目を集め、5連勝中の上がり馬ジャックドールがどんなレースを展開するか。戦前はそんな雰囲気だった。そのペースは前後半1000m58.8-59.6とGⅠにふさわしい締まった流れになり、エフフォーリアは4角で失速、好位にいたポタジェが前を行くジャックドールやレイパパレを捕まえ、優勝した。姉ルージュバックは切れ味勝負のイメージも、最後の勝利は先行して押し切ったオールカマー。ポタジェの大阪杯もそれを彷彿させる。後半800m11.7-11.5-11.8-12.5。切れはしなくとも、一定のラップで走る競馬に強い。中山は新馬1着とAJCC5着の2回のみだが、極端に時計が速くならなければ、大阪杯で身につけた先行力を武器に対応できる。

■天皇賞(春) タイトルホルダー 3.16.2

前年菊花賞と同じくタイトルホルダーが先手を奪い、最初の1000m60.5と強気な入り。中盤もある程度ペースを落とさず、ライバルが仕掛けにくい地点1400~2000m12.8-13.3-12.9と息を入れ、中盤1000m63.1。さらに最後の800m11.9-11.5-11.7-13.2。最後の直線坂下で勝負を決めに行き、後続を封じた。押し引き自在、強気な攻めとチャンピオンの巧みさを見せつけた。

■宝塚記念 タイトルホルダー 2.09.7

上半期グランプリは王者タイトルホルダーにドバイターフを勝ったパンサラッサの組み合わせ。戦前からハイペースが予想された競馬はパンサラッサがハナに行き、最初の600m33.9。スプリント戦並みに突っ込んだ入り。中盤以降もいっさい緩む箇所はなく、残り1000m11.9-11.8-11.9-12.0-12.4とスピードと持久力、耐久力を試す競馬。2番手から抜け出したタイトルホルダーが怪物レベルの持久力を発揮した。大阪杯に続き、エフフォーリアは見せ場を作れず、明暗くっきり。タイトルホルダーは中距離でもスタミナ勝負に持ち込めることを証明した。

■天皇賞(秋) イクイノックス 

タイトルホルダーが凱旋門賞へ向かい、不在。主役は3歳イクイノックス、4歳ダービー馬シャフリヤール、春の雪辱を期するジャックドール、パンサラッサが顔をそろえ、またもハイペースの予感。札幌記念で引いてパンサラッサに先着したジャックドールが控え、パンサラッサが大逃げの形に持ち込み、前半1000m57.4。ジャックドールら好位勢が勝負所でも差を詰めに行かなかったことで、パンサラッサの展開に。しかしイクイノックスがパンサラッサの幻惑を打ち破る。レース上がり36.7の競馬で、4コーナー9番手から上がり32.7の末脚で大逆転。春無冠も研ぎ澄まされた末脚に心身のかみ合った底力を感じる。パンサラッサと2番手以下とはまったく違う競馬になり、評価は難しい。イクイノックスは記録は瞬発力型を示すが、大逃げパンサラッサのペースを中団で構え、物理的距離を逆転できたことからむしろ持続力に優れる。父キタサンブラック、母の父キングヘイローはどちらも持続力と底力に富んでおり、イクイノックスも最終的にそういった形になるだろう。中山は皐月賞2着。中団から勝負所でじわりと進出する器用さを見せた。スタートで遅れた日本ダービーを除けば、ある程度の位置につけられ、中山芝2500mにも対応できる。

■エリザベス女王杯 ジェラルディーナ 2.13.0

雨の影響を受け、重馬場でのレース。前半1000m60.3は馬場を考えれば速めの流れで先行勢は軒並み苦しくなった持久戦。ジェラルディーナは以前はもどかしい成績だったが、オールカマー勝利でひと皮むけた印象。父モーリス、母ジェンティルドンナともにスピードの持続力に長けたタイプで、ジェラルディーナもこの秋、そんな強みをレースで表現できるようになった。本格化とはこのこと。レース上がり36.4のタフな末脚比べで上がり最速35.4。1秒上回る末脚で同着2着争いを完封。母と同じく牡馬相手でも負けない強さを見せ、タイトルホルダーが演出する持久戦でもやれそうな予感がある。条件戦時代のイメージとは一変した。

■ジャパンカップ ヴェラアズール 2.23.7

ユニコーンライオンが予想よりもペースを落とし、スローペースに持ち込む。前半1000m61.1と今年の古馬芝中長距離戦線ではもっとも遅い流れだった。スローで馬群一団の競馬は最後はスペースの奪い合い。末脚全開を意図して外へ行ったシャフリヤールを馬群から突き抜けたヴェラアズールが捕らえた。終始インを進み、直線ではわずかなスペースを逃さず突く。ライアン・ムーア騎手の真骨頂。外国馬、外国人騎手多数参戦で欧州競馬のようなレースだった。これがジャパンCの最大の特徴で、ほかの古馬中長距離GⅠとはチャンネルが違う印象もある。勝ったヴェラアズールはダートでキャリアを重ね、芝転向後、6戦4勝。瞬く間に頂点まで駆け上がった彗星。負けた2戦のうち1戦は中山芝2500mサンシャインS3着。瞬発力型で広いコース向きは事実。勢いでそれを跳ねのけられるか。サンシャインS2着はアルゼンチン共和国杯を勝ち、ここに出走するブレークアップ。

これら勝ち馬が一堂に会するほかにもタフな菊花賞で末脚発揮のボルドグフーシュ、先行してスタミナを証明したジャスティンパレスの菊花賞組、今年未勝利だが、昨年の年度代表馬エフフォーリアも宝塚記念以降、休養に入り、じっくり立て直しをはかる。前年有馬記念2着ディープボンド、同7着、前年エリザベス女王杯でタフな流れを制したアカイイトなどまさにオールスター。目移りが止まらない。

競馬ライター

かつては築地仲卸勤務の市場人。その後、競馬系出版社勤務を経てフリーに。仲卸勤務時代、優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)、AI競馬SPAIA、競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にて記事を執筆。近著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ(星海社新書)

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