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夏競馬も後半戦! 菊花賞で有望な夏の上がり馬をチェック

勝木淳競馬ライター

実りの秋、GⅠシーズンを前にした夏競馬は魅力的。新馬戦、新種牡馬産駒の活躍、波乱含みのハンデ戦、若い騎手の躍進、そして旅打ちなど、みんな思い思いに夏を楽しむ。反面、その季節は短く、気がつけば夏競馬も後半戦に入ろうとしている。早くも秋に向けた話題も聞こえ、その終わりが刻々と近づいてきた。

そんな話題の一つがクラシック。ことさら菊花賞はドウデュースをはじめ、春の上位馬たちは海外遠征や古馬中距離路線を歩むことが明らかになり、今年の菊花賞は春とは顔ぶれがガラリと変わりそうな気配がある。であれば、注目したいのは夏に条件戦を勝ちあがってきた、いわゆる夏の上がり馬たち。しばしば春のクラシック不出走馬たちが逆転の菊を勝ちとる。76年グリーングラス、86年メジロデュレン、90年メジロマックイーン、95年マヤノトップガン、02年ヒシミラクル、14年トーホウジャッカルなど菊花賞を勝った上がり馬は数多いる。今年も状況的に夏の上がり馬が台頭しそうな雰囲気。そこで注目馬を振り返り、秋への楽しみを膨らませたい。

今年6月以降、古馬2勝クラス、芝2000m以上を勝った3歳馬は4頭。菊花賞の出走賞金ボーダーラインは例年、2勝クラスを突破した3勝馬。今年はこの時点で菊花賞出走のメドは立っている。その4頭はボルドグフーシュ、ブラックブロッサム、ゼッフィーロ、ラーグルフだ。まずはこの4頭について。

●ボルドグフーシュ(6/5一宮特別、中京芝2200m、2.11.6)

父スクリーンヒーローは自身も晩成型で、産駒も成長力がある血統。母ボルドグザグの産駒は目立った活躍馬を出していないが、5歳年上のコンボルド(父コンデュイット)は芝2600mが得意だった。

ボルドグフーシュは昨秋、2戦目で未勝利脱出後、1勝クラス7、3着。2勝目は3/12阪神芝2400mのゆきやなぎ賞。残り600mまでペースが上がらない我慢比べから、最後600m11.4-11.1-11.5。4角7番手から繰り出した上がり33.3は次位に0.6差つける圧勝。その後、ダービー出走をかけた京都新聞杯は3着。出直しの一戦だった一宮特別は京都新聞杯での自身の記録より1.8遅い記録だったものの、後半1000m11.8-11.7-11.5-11.8-12.2と持久力を要する流れ。4角7番手から差す形は流れに乗じた面も否めない。昨年の菊花賞と比べると、残り400~200mの加速が欲しいところ。トライアルでそこを克服できるだけの成長を見せられるかがポイントではないか。

●ブラックブロッサム(7/17信夫山特別、福島芝2600m、2.44.2)

父はラスト一冠菊花賞を勝ち、翌年飛躍を遂げたキタサンブラック。半姉ポレンティア(父ハーツクライ)は芝2400mで2勝目。距離延長で変わり身を見せた。

ブラックブロッサムは1/30と遅めのデビューだったが、新馬、1勝クラスと連勝。2勝目大寒桜賞ではのちにラジオNIKKEI賞を勝つフェーングロッテンに勝利。2着に8馬身差つけたことで、次走京都新聞杯は1番人気。前後半1000m58.2-59.2と先行勢に厳しい展開。後半1000mは11.8-11.8-11.8-11.7-12.1とロングスパート。勝ち時計2.09.5は当時のレコード決着。最後の直線で早めに先頭に立つ積極策も差し馬勢が上位を占め、5着。出直しの一戦、信夫山特別は先手をとり、ひとり旅。対戦メンバーはさほど高くなかったが、馬体重プラス18キロで出走し、後半1000mは11.5-11.5-11.8-11.6-11.6と持久力は示した。中盤までは前半200~400m12.7を除きすべて13秒台で、流れは相当楽だったので、この記録は必ずしも評価基準にはならないかもしれないが、2着マリノアズラは次走で札幌芝2600m阿寒湖特別0.5差圧勝。馬自身の成長も見込め、楽しみはある。

●ゼッフィーロ(7/23高千穂特別、小倉芝2000m、1.58.7)

父はチャンピオン種牡馬ディープインパクト。キャリア5戦で1、2、3、1、1着と堅実。新馬は2/6と遅めだったが、2戦目で負けたショウナンマグマはラジオNIKKEI賞2着の実力馬。2勝目は中京芝2000m1.59.6、3勝目の高千穂特別は1.58.7と馬場の恩恵はあったが、高速決着への強さを証明。高千穂特別は後半1000m11.7-11.8-11.7-11.3-11.7で、こちらも持久力を示した。長距離戦への適性は陣営も模索しているだろう。3勝クラスでの走りには注目だ。

●ラーグルフ(8/7月岡温泉特別、新潟芝2000m、1.58.5)

父モーリスは持久力に長けた中距離型だが、母系はファルブラヴからフェアリーキング、またシンボリクリスエスの血。フェアリーキングの兄はサドラーズウェルズであり、産駒は凱旋門賞を勝ったエリシオ、ラーグルフの母の父ファルブラヴと持久戦にも対応する。シンボリクリスエスも菊花賞馬エピファネイアを出しており、母系のあと押しはありそうだ。

2歳暮れホープフルS3着から春はクラシックに進み、皐月賞8着。上記上がり馬とはいささか戦歴は異なるが、出直しとなる月岡温泉特別を勝ったことで、再浮上のきっかけはつかんだ。その月岡温泉特別はインを抜け出す我慢強い競馬で混戦向き。今後の去就に注目したい。

これら4頭のほかに小倉で1勝クラスを7馬身差圧勝ガイアフォース(父キタサンブラック)はトライアルへの出走予定があるようで、権利獲得なら面白い。

夏の上がり馬とはいえ、セントライト記念や神戸新聞杯といったトライアルに出走、重賞を経験することも菊花賞に進む上では重要。というのも菊花賞は00年以降の22回で前走トライアル出走は【19-17-15-194】。逆転の秋に向け、有力どころはトライアルで春の実績馬との力関係を推し量りたい。

競馬ライター

かつては築地仲卸勤務の市場人。その後、競馬系出版社勤務を経てフリーに。仲卸勤務時代、優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)、AI競馬SPAIA、競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にて記事を執筆。近著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ(星海社新書)

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