80年代に見せた、KAJA(カジャ)の印象的だったドレッドヘアも人を寄せ付けさせない尖った空気感も今はもうない。そのKAJAがノーギャラでライブハウスを支援するとの噂を聞きつけ、直接本人に聞いた。

自ら「みんな大変だから」とノーギャラライブを提案

観月ありさ主演の映画「ぼくんち」で4曲の挿入歌を提供。あの独特のガナリ声は映画でもぴかぴかに光っていた。

御年71歳。関西レゲエ界のレジェンドKAJA、その人である。今でも精力的にライブ活動を続け、年間のライブ本数は約200本。驚嘆するのは癌の術後、ライブ本数を減らして、今なおこの回数。今でもライブにとことん拘り、今でも頑なにライブDVDは出さない。どこまでも人との対面。いわゆる“生”に拘るミュージシャンである。

そのKAJAが、コロナ禍で悲鳴をあげているライブハウスやライブバーに支援を始めている。そんな噂を耳にしたのは6月の初めのことだ。

「若い子らお金ないし、タダやったら観てくれるんちゃう? 俺ら歌えるの、ライブハウスのおかげやし、お客さんのおかげやんか。バンドのみんなもそう思うやろ、といったらノーギャラで賛同してくれた(笑)」

飄々と笑顔でいうのが、実にKAJAらしい。2020年にライブハウスでクラスターが発生。世間を騒がせた、あのニュースによって音楽ライブを興行するライブハウスや飲食店は惨憺たる日々が続いた。アフターコロナと口ではいうが、客足はまだまだ鈍い。今でも逆風が吹き荒れている。

この日のライブは満員御礼  筆者撮影
この日のライブは満員御礼  筆者撮影

支援の輪が波及して手を挙げる賛同者も

「でもさあ、ノーチャージにすれば大丈夫かといえばそうじゃない。チャージにはミュージシャンの取り分だけやなくて、お店の取り分も含まれるやんか。お店には機材代だったり、人件費も掛かる訳で、いざノーチャージでやって、お客さんを喜ばせてもお店の支援にならへんかったりする。ここが難しい。ノーチャージにして、飲食をたくさんしてくれればええやねんけど。今のところ、みんな理解してたくさん飲んでくれてるけどな(笑)」

支援の輪も広がり、以前に紹介した伊香桃子やミナミのバー「大きな輪」なども協賛する。

「大阪はまだいい方。地方がもっと酷くて悲惨。このままだと手遅れになる。意識の差が大阪と東京でも違うからね」

MCでは場を笑いに包んでいた  筆者撮影
MCでは場を笑いに包んでいた  筆者撮影

映画「ぼくんち」を観て衝撃を受けた彫刻家の大森暁生

「若い人に聞いて貰いたいし、ライブの依頼は基本断らんかな」

KAJAを言い表すなら、客との距離が非常に近いミュージシャンである。トーク中もそうだが、ライブ中も自然と周りが盛り上げようとする。常連女性の一人もこういう。

「身内の集まりにしたくないんですよ。そんな意識でみんないますよ。いくらライブが楽しくても居づらい場所だと、初見の人は二度と来ないと思うから。KAJAさんのファンってそんな人ばかりですよ」

映画「ぼくんち」でKAJAを知った長年のファンを自称する彫刻家、大森暁生。深キョンこと深田恭子主演のドラマ「ルパンの娘」(フジテレビ)に自身の作品がセットに使用されるほど、その世界では著名人。その大森が数年前、大阪のライブに突然現れた。

「普段は先生という肩書きで偉い人やのに、大阪やとみんなフランクやんか。普通の人として彼と接するから、彼も大阪は居心地が良いというてたわ(笑)」

昨年、KAJA&JAMMIN'で発売したアルバム「GLOOM」のジャケットにも大森の彫刻が使用されている。

盛り上がったライブは休憩を抜いても2時間30分  筆者撮影
盛り上がったライブは休憩を抜いても2時間30分  筆者撮影

日清のCMソングに起用されて全国的ヒットするも浮かぬ毎日

KAJAは1978年にロックバンド「HIGHーWAY」を結成。翌年、毎日放送が主催する「HAPPY FORK CONTEST」の全国大会でグランプリを受賞する。この大会のスポンサーは日清食品。80年に「ギラリ熱愛」でメジャーデビューを果たすと日清食品の「めんコク」のCMソングに起用された。

「好きさ、好きさ、ベイビー。熱く、熱く、燃え上がれ」

そんなキャッチーな歌詞と、刺激的なコマーシャルで一気にお茶の間の人気者に。KAJAが29歳の時だ。

「喫茶店に入ると、自分の音楽が普通に流れとるやん。不思議な感じやったなぁ。ただ、メジャーデビューはしたけど、自分がやりたい音楽じゃないから心の片隅ではずっと葛藤があった。当時の芸能界の空気感みたいんが嫌やったんやな。番組のプロデューサーみたいな偉そうなオッサンが来るやん。芸能界全体がアーティスト側に立ってない。そんな人たちが売れる、売れないを決めるような…。デビュー曲の「ギラリ熱愛」と2曲目の作曲家が鈴木キサブローで作詞家が森雪之丞。当時のヒットメーカーやね。ホンマはオリジナルでやりたかったけど、自分達の曲はやらせて貰われへんから、それで何度も揉めたね」

ある番組にゲスト出演すると、これまで出演した、どの歌番組とも明らかに装いが異なっていた。マッチや岩崎良美らと共演して、拳の先につけた風船を割るゲームに参加。当時、KAJAは30歳。20代の山川豊を捕まえて、「俺たち浮いているよな」とボソリ。扱いはバンドマンではない。そう、アイドルである。

「音楽に対しての評価じゃなしに、俺らここでこんなことやっててええんかって。それで最終的に決断を下そうとなって、レコード会社にもう辞めますと告げてサヨウナラ」

途中から踊り始める観客も  筆者撮影
途中から踊り始める観客も  筆者撮影

「ありがたや節」はアマチュアバンド時代に完成していた

82年にバンドを解散、そして84年にKAJA&JAMMIN'を結成する。

「アマチュアバンドの時に、『有難や節』をレゲエにしたらオモロイな、と思ったのがきっかけ。その曲を入れたデモテープを作ったら松竹芸能からハングマンのプロデューサーの手に渡って、すぐに『これを使いたい』となった」

レゲエ風にアレンジした「ありがたや節」は最大のヒット曲となった。ドラマ「ザ・ハングマン4」(テレビ朝日)のエンディングテーマ曲に採用され、CBS・ソニーからリリース。レゲエの第一人者として再ブレイクを果たす。

「エンディングに零心会が踊っていたから、彼らの曲やと勘違いしていた人も多かったなぁ。東京でライブやると今でも観に来てくれるで。前にダンスパフォーマンスをお願いしたんやけど、流石に年やから出来んと断られたわ(笑)」

やしきたかじんとも長年交流があった。たかじんの前座やライブで度々顔を合わせ、たかじんの番組にもKAJAは出演。

「たかじんのバックバンドにJAMMIN'のメンバーを使ってくれて、ホンマにあの人は面倒見が良かった。音楽が心から好きやったんやと思う。売れっ子になってもしばらく、マネージャーに内緒で闇営業しとったから。事務所で話し込んでいると『今から北新地のバーで歌ってくるわ』って(笑)」

ライブを一番楽しんでいるのは本人かもしれない  筆者撮影
ライブを一番楽しんでいるのは本人かもしれない  筆者撮影

オリジナリティのない本場の真似事は本物ではない

エリック・クラプトンの「I Shot the Sheriff」を聞いて、ボブ・マーリーの存在を知った人も多いだろう。KAJAはクラプトンのこの曲を聞いてレゲエと再会した。

「昔からレコード屋さんに入り浸ってて、それで薦められたのがボブ・マーリー。(歌詞から)伝えたいメッセージがはっきりしているから、それを大阪に置き換えて自分はレゲエを始めた。ボブ・マーリーもジョン・レノンも行き着く先はワンラブがテーマ。俺は大阪の、いや、日本の若者が悩んでいる問題を主軸にして歌っていこうと思った」

昔の日本のバンドは、政治に抵抗するメッセージ性を持った楽曲も少なくなかった。今ではタブーであるかのように誰も歌わなくなっている。

「政治の話をしただけで、もうそんな固いこといわんとってなるやん。ホンマはちゃうねんけどね。ウクライナとロシアの戦争も真実はどうか分からない。ニュースの裏側を見ないと。ボブ・マーリーは白人と黒人の間で生きていた。ようは自分なりに問題意識を持って欲しいという意味。自分で考えて、自分はこうしたいと思ってさ。周りに流されてばかりでええの?」

魂を揺さぶられる曲の数々  筆者撮影
魂を揺さぶられる曲の数々  筆者撮影

ジャマイカ映画「ロッカーズ」のカメラマンが日本のレゲエと称賛

スイス、ニュージランド、中国といった海外でもツアーをした。KAJAの音楽はメッセージ性が常にある。ガナリ声から放たれた叫びのような歌唱力に、魂を揺さぶられるファンは多い。02、03年に訪れた中国の上海では、国の環境による相違を目の当たりにした。

「観客が大人しく踊らんとジッとして聞いているんですわ。ご飯食べたりしてね。でも、コーディネーターが中国語で『もっと楽しんで良い』と伝えると、途端に踊り出してダイブまでしよった。オンとオフの入り方。自分で何も判断も出来ないなんてホンマに恐ろしいで」

日本と海外の相違性。改めて気付かされたのは、ボブ・マーリーを偲ぶ国際イベントに関西代表で出演したときだ。映画「ロッカーズ」を撮影したジャマイカ人のカメラマンに声を掛けられた。

「ちょうどそのカメラマン、日本に旅行中だったみたいで『ロンドンやパリで出会ったレゲエミュージシャンは、その国のオリジナリティを必ず持っている。なんで日本のレゲエミュージシャンたちはジャマイカとそっくりな音楽を歌って、それが自分たちの音楽と思って演奏をしているのか? 日本のレゲエバンドはジャマイカのモノマネばかりで退屈すぎる。でも、その点、お前たちのバンドは日本らしくアレンジされた本物のレゲエだ。レゲエに定義なんてない』と教えてくれた。確かにボブ・マーリーはロックだからね。日本人ってジャンル分けするのが好きだけど、どうでもええやん。憂歌団だって最初は日本の音楽雑誌がブルースと評価しなかった。それがシカゴでライブを成功させて、ブルースの本場で評価されると日本の雑誌が180度、手のひらを返してブルースといい出した。そんなもんやで」

KAJAのライブは多彩だ。レゲエ、ロック、R&Bなど様々なルーツの音楽が鮮やかに混じる。音楽の世界に境界線はない。そう思えるライブを、きっとKAJAは魅せてくれる。(一部敬称略)

大阪のミュージシャンは情が深い  筆者撮影
大阪のミュージシャンは情が深い  筆者撮影

公式サイト

ライブスケジュール

7/24に「ソーコアファクトリー」で入場料無料のライブを開催

18:00 開場 19:00 開演