2022年5月、黒潮が大蛇行を始めてから4年10か月となりました。判定に必要な記録が残る1965年以降では最も長く、大蛇行がいつ終わるのか、見通しは立っていません。

信濃川の10万倍の流量

 黒潮は東シナ海から太平洋沿岸に沿って千葉県房総半島沖を流れる世界有数の大海流です。その名のとおり、海の色が黒く見えることに由来します。

 黒潮の幅は約100キロ、運ばれる水の量は毎秒5,000万トンと桁違いに大きく、日本で最も流れる水の量が多い信濃川の平均流量の10万倍にあたるそうです。熱帯の暖かい海水を運んでいることから、日本の気候に影響を与えていると考えられていますが、詳しいことはわかっていません。

 そして、黒潮の流れは速いところで時速7キロに達し、船舶の航行に大きな影響があります。

大蛇行と非大蛇行 2つの特徴的な流れ

 黒潮の存在は江戸時代から知られていましたが、大蛇行が発見されたのは昭和10年(1935年)、日本海軍の演習です。予想外の強い流れで艦船が流されてしまったことから、当時は黒潮の異変と判断したようです。しかし、その後の調査で、黒潮の流れには紀伊半島沖で南に大きく蛇行する場合と四国や本州南岸に沿って直進する場合の2つがあることがわかりました。

黒潮の大蛇行型と非大蛇行型の流路(気象庁ホームページの気象衛星ひまわりによる海面水温画像(2022年6月3日)に筆者が加工した)
黒潮の大蛇行型と非大蛇行型の流路(気象庁ホームページの気象衛星ひまわりによる海面水温画像(2022年6月3日)に筆者が加工した)

 南に大きく蛇行する流れは非常に安定することから、長期にわたり続くことが知られています。今回の大蛇行はこれまでの記録4年8か月(1975年8月~1980年3月)を42年ぶりに更新しました。ちなみに、発見された当時の大蛇行は1934年から1943年まで、実に10年間続いたようです。

台風による高潮被害拡大も

 黒潮の大蛇行が気象に与える影響として注目されるのが東海沖にできる冷たい海水による渦(冷水塊)です。この反時計回りの流れによって伊豆半島沖にある暖水が東海から関東沿岸に流れ込み、潮位が一段と高くなります。

 とくに、台風が接近しているときは影響が大きく、2017年台風21号のときは静岡県の松崎町で住宅4棟が床下浸水、そのほか県内の港湾施設に大きな被害がありました。

黒潮が大蛇行すると東海で潮位が高くなる仕組み(筆者作画)
黒潮が大蛇行すると東海で潮位が高くなる仕組み(筆者作画)

 大蛇行の終わりが見えないなか、今年も台風シーズンが始まります。2019年台風19号(令和元年東日本台風)のときも、静岡県の御前崎や清水港で潮位が記録的に高くなりました。台風が本州に近づくときは潮位の変化や高潮に、より一層の注意が必要です。

【参考資料】

気象庁:黒潮大蛇行の継続期間が過去最長に、2022年5月25日

気象庁ホームページ:黒潮の大蛇行関連ポータルサイト

網野正明、1993:黒潮「大蛇行」発生、気象8月号、日本気象協会