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高知県で1000ミリ 記録的な大雨が長引く理由

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
3日間の降水量は西日本を中心に500ミリ超(6日午後4時現在,ウェザーマップ)

 高知県で1000ミリ超の記録的な大雨。この一週間、全国で大雨が相次いでいる背景には、平年より勢力が強い太平洋高気圧(亜熱帯高気圧)と偏西風の北上がある。

4年ぶりの1000ミリ大雨

 先月29日、関東甲信地方が梅雨明けし、これまでの天気が一変しました。

 台風7号の接近、そして活発な梅雨前線の影響で、この一週間は全国で大雨が相次ぎました。高知県馬路村魚梁瀬(やなせ)では、この3日間の降水量が1196ミリ(6日午後4時まで)に達しています。

 3日間の降水量が1000ミリを超えたのは2014年8月の台風12号以来、4年ぶりのことです。このときは高知市中心部を流れる鏡川が増水し、濁流が住宅地に流れ込みました。

 1000ミリ大雨は過去、例が少なく、2000年以降では2004年、2005年、2006年、2011年、2014年です。温暖化の進行で、大雨が頻発しやすくなっているとはいえ、東京の年間降水量約1500ミリと比較すると、その凄まじさが想像できます。

 こちらは1976年以降で、1000ミリ大雨を記録した場所を図にしたものです。

全国で3日間の降水量が1000ミリを超えた場所(1976年以降,著者作成)
全国で3日間の降水量が1000ミリを超えた場所(1976年以降,著者作成)

 西は鹿児島県、東は神奈川県と太平洋側で発生していることがわかります。南寄りの非常に湿った風が山地にぶつかり、上昇気流となって発達した雨雲を作るからです。とくに、九州山地、四国山地、紀伊半島は大雨になりやすい場所です。

なぜ、次から次へ大雨が発生するのでしょう?

 その答えは太平洋高気圧(亜熱帯高気圧)と上空の偏西風にあります。こちらは最近一週間(6月27日-7月3日)の上空5000メートル付近の天気図です。

 ちょっと見慣れない天気図ですが、北極を中心にして北半球全体を示した図です。日本列島は図の下側、中央にあります。

北半球における7日平均500hPa高度と平年との差:2018年6月27日-7月3日(気象庁ホームページより)
北半球における7日平均500hPa高度と平年との差:2018年6月27日-7月3日(気象庁ホームページより)

 注目したのは日本の東にある太平洋高気圧です。高気圧の勢力は平年よりも強く、さらに日本列島に近い位置にあります。そして、上空の偏西風は北海道の北を流れ、いつも以上に暖かく湿った空気が日本列島に流れ込みました。

 太平洋高気圧や上空の偏西風はスケールの大きい現象のため、広範囲で同じような天気が長く続く原因になります。この構図が崩れるまで大雨が続くのです。

 天気予報では台風や梅雨前線など、今起こっている現象に注目しがちですが、高い所に上ると遠くが見渡せるように、天気でも上空の天気図を見た方が全体を見通せるのです。

【参考資料】

気象庁ホームページ:毎日の全国観測値ランキング,72時間降水量の日最大値

気象庁ホームページ:大気の循環・雪氷・海況

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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