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最強寒波が多いわけ

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
日本列島に再び、強い寒気が流れ込む(2月4日立春,ウェザーマップ)

 この冬は「最強寒波」が多い。極うずが分裂し、平年を下回る強さの寒気が次々と流れ込んだ。ただ、この冬が特別ともいえず、「最強寒波」があいまいに使われている側面もあるようだ。

上空約1,500メートルの気温が低い

 冬だから寒いのが当たり前だけれども、この冬は「最強寒波」でもちきりです。天気ニュース原稿で何回使ったのか、思い出せないほど。

 寒気の強さ(平年との差)を主な気象台でみてみました。代表的な寒気である上空約5,000メートルと上空約1,500メートルです。わかりやすいように、平年よりも0.5℃以上低い場合を青色で、平年よりも0.5℃以上高い場合を赤色で示しました。

上空約5,000メートルと上空約1,500メートル気温,平年との差(著者作成)
上空約5,000メートルと上空約1,500メートル気温,平年との差(著者作成)

 12月の気温は各地、平年より低く、とくに上空約5,000メートルの気温は北日本で平年を大きく下回りました。一方、1月は輪島と福岡で上空約1,500メートルの気温が低いことが目立ちます。この冬の特徴として、東・西日本で上空約1,500メートルの気温が低いことが挙げられます。

なぜ、「最強寒波」が多いと思うのでしょう?

 こちらは輪島(石川)の上空約1,500メートルの気温をグラフにしたものです。寒気の規模を示すために平年との差で表してみました。

 すると、昨年12月から間隔をあけずに寒気が流れ込んでいる様子がわかります。ひとつひとつの寒気の強さよりも、頻度が高いことが理由のひとつかもしれません。

輪島(石川)の上空約1,500メートル気温 平年との差(著者作成)
輪島(石川)の上空約1,500メートル気温 平年との差(著者作成)

 また、例年、寒気の底は1月下旬です(※)。平年の値も1月下旬に向けて下がっていくため、前回と同じ平年との差でも今回の方が強くなります。だから「最強寒波」が多くなったのでしょう。たぶん一番の理由は何を基準に最強なのか、あいまいに使われているからだと思います。

極うずが分裂

 寒さが持続している理由のひとつに、極うずの分裂があります。極うずとは北極と南極の上空にできる大規模な気流の渦のことです。1月はこの極うずが分裂したことにより、強い寒気が極東から日本付近に流れ込みました。極うずは北半球を取り巻く偏西風の流れに影響し、極うずが不安定になると、大規模な寒気が中緯度に南下しやすくなることが知られています。

 北極が暖かくなると日本が寒くなる?極うずが不安定になる原因はまだよくわかっていませんが、ひとつに北極の温暖化を挙げる研究があります。

【参考資料】

NOAA:Wobbly polar vortex triggers extreme cold air outbreak,January 8 2014

気象庁:2018年1月の天候,2018年2月1日

気象庁:平成30年1月下旬の寒波について シベリア東部に蓄積した非常に強い寒気が日本付近に流れ込みました 2018年2月1日

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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