世界の雷、日本の雷
世界気象機関は先月、初の雷世界一を認定した。稲妻の長さは米オクラホマ州の321キロ、稲妻の持続時間はフランス南部の7.74秒。
一方、日本で最も多く雷が観測されるのは金沢で年42日、東京の3倍にあたり、日本の雷は夏型、秋型、冬型の3つに分けられる。
史上初、雷の世界一
世界気象機関(WMO)の専門委員会は先月16日、雷の世界一を発表しました。
世界最長の稲妻は2007年6月20日、米オクラホマ州で発生した長さ321キロです。通常、ひとつの雷雲は高さ15キロくらい、幅数10キロ程度で、雷が雲の上部から地上まで落ちたとしても、せいぜい10キロくらいでしょう。米オクラホマ州の雷はとてつもないサイズだったことが分かります。
もうひとつは稲妻の持続時間の世界一で2012年8月30日、フランス南部プロヴァンスーアルプーコートダジュールで観測された7.74秒です。
これまで気温、風速、降水量などの世界記録はありましたが、雷はなく今回が初めてです。日本では雷の評価や認定はされておらず、非常に珍しいといえるでしょう。
高い塔や建物に落ちる雷の観測は多くの国で古くから行われていて、ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディング、最近では東京スカイツリーがあります。近年、雷の観測技術が向上したため、世界規模での観測の評価ができるようになりました。
雷は夏に多い?冬に多い?
世界では、毎日5万個の雷雨が発生し、一秒間に少なくとも100個の雷放電が起こっていると見積もられています。雷雨の世界三大地域は東南アジア、中央アフリカ、アマゾン河流域です。
日本では地域によって雷の季節が違います。夏の代表は関東北部で、強い日差しにより地上付近の空気が加熱され、上昇して大きな積乱雲をつくります。
一方、冬の代表は北陸です。金沢は日本で最も多く雷が観測され、年間約42日、東京の3倍です。雪に伴って雷が発生します。
でも、同じ日本海側でも秋田は違います。秋田は冬に多いのではなく、11月に最も多いのです。大陸からの寒気が水温の高い日本海でたっぷりと水蒸気を補給して、雪雲が発達するためです。
雷といえば、夏をイメージする人が多いかもしれませんが、雷パターンは夏型、冬型、秋型の3つがあります。
金沢の雷が増えている
このグラフは金沢の雷日数と降雪量をみたものです。
雷日数は一年間に0.4日の割合で増えています。一方、降雪量は1985年頃を境に減少に転じ、以前の半分になりました。つまり、雷は増えて、雪は減っているのです。
これを解くカギは日本海にあります。北陸沖の水温はこの100年で1.26度高くなりました。これは世界平均と比べて高い割合です。海が暖かくなった影響で、雲が発達し、雷が多く発生するようになった一方で、雨から雪に変わりにくくなったのです。
冬の雷を「雪起こし」といいます。温暖化の進行で言葉も消えていくのかもしれません。
【参考資料】
世界気象機関(WMO):WMO rules on longest distance and longest duration lightning flashes,16 September 2016
倉嶋厚,1999:冬の雷,ちょっと使えるお天気知識,小学館文庫
竹内利雄,1987:雷の地域特性,雷放電現象,名古屋大学出版会,29-39.
竹内利雄,1987:第3章雷放電観測法,雷放電現象,名古屋大学出版会,43-51.