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電子たばこで痙攣? 米で127件もの痙攣報告

片瀬ケイ在米ジャーナリスト、翻訳者、がんサバイバー
米国で若者に人気ダントツのJUUL。USBメモリー・スティックみたい。(写真:ロイター/アフロ)

若者の間で増える電子たばこ使用

 米国の食品医薬品局(FDA)は、電子たばこの利用者から痙攣を起こしたという127件の有害事象報告を受けたと発表した。電子たばこは、内蔵タンクまたはカートリッジに入った液体(リキッド)を電気で加熱し、発生する蒸気を吸う仕組み。米国ではベイパー(Vapor)とも呼ばれている。

 米国における18歳以上の喫煙率は2005年の20.9%から、2017年には14%まで低下した。その一方で、特に若者や子供の間で電子たばこの人気が急上昇。2018年には360万人の中高生が、過去30日間に電子たばこを利用したという。これは中学生の4.9%、高校生の20.8%にあたる。

中高生はJUULing

 米国で最も人気のある電子たばこはJUULだ。シンプルなUSBメモリー・スティックのような形状でバッテリー内蔵。ラップトップ・コンピューターのUSBポートで充電できる。

 ストロベリー・ミルク、スイカ、カプチーノ、マンゴー、クリームなど、若者が試してみたくなるような味が沢山ある。電子たばこを吸うことをVapingと呼ぶが、中高生は圧倒的にJUULingである。

 ただしJUULは日本の電子たばことは違い、どんなに無害そうな名前であっても、すべてニコチンを含んでいる。しかも1個のJUULポッド(リキッド)には、普通のタバコ20本分のニコチンが含まれるという危険なシロモノだ。

ニコチン中毒で痙攣か?

 FDAでは今年4月までに、電子たばこ利用者から痙攣を起こしたという35件の報告を受けてモニターを続けてきた。今日までに、同じような報告が新たに92件寄せられ、合計で127件になったという。これは消費者からの自主的な有害事象報告なため、さらに多くの人が痙攣を経験している可能性もある。

 FDAの発表によれば、痙攣を経験した電子たばこ利用者のほとんどは若者か子供で、初めて電子たばこを利用した人もいれば、常用している人もいた。また痙攣が起きたタイミングも、電子たばこを吸ってすぐの人もいれば、翌日という人もいた。

 電子たばこと痙攣の関連はまだ特定できないものの、痙攣はニコチン中毒の副作用の一つであり、電子タバコで使うリキッドを誤飲、あるいは意図的に飲んだ時に起こるという報告がある。

本当にコワイ電子たばこの被害

 ニコチンは子供や若者にとって大敵だ。脳は25歳くらいまで発達を続けるが、ニコチンは脳の発達を妨げ、また脳内の学習や気分、衝動を司る部分に悪影響を与える。また依存性が高く、若い時からニコチンを使うことで、将来的に他の薬物に依存しやすくなるリスクもあると、FDAは指摘している。

 米国にもニコチンを使わない電子たばこもあるが、それでも「無害の蒸気」を吸っているわけではない。電子たばこで吸い込む蒸気には、吸い込むと肺の奥深くまで入り込んでしまう可能性のある微小粒子や、香料には気管支や肺の悪影響を与えるジアセチルなどの化学物質、発がん物質、ニッケルや鉛などの重金属が含まれている。

 さらに電子たばこの機器自体もバッテリーが発火したり、使用中に機器が爆発して17歳の少年のあごの骨が砕ける事故や、爆発が原因で死亡者がでる事故などが発生している。

遅すぎ?若者の電子たばこ規制

 FDAは若者の電子たばこ使用禁止や喫煙予防に取り組んでいる(注1)。昨年11月には、味付き電子たばこ製品を18歳未満の消費者に販売することを禁止し、販売店には年齢確認をする責任を負わせた。

 またニューヨーク州、コネチカット州、テキサス州など17州と首都ワシントンでは、州法によって、たばこおよび電子たばこ製品の購入可能年齢を、18歳から21歳に引き上げている。

 さらに今年7月には、JUULを製造するJUUL Labs本社があるカリフォルニア州サンフランシスコ市が、2020年より同市内で電子たばこ販売を禁じる市条例を制定した。

 JUULを吸っている中高生の多くは、ニコチンが含まれているという認識がない場合が多い。FDAは先月、ソーシャル・メディア動画で人気の英国のマジシャン、ジュリアス・デインさんを起用して「電子たばこは、たばこと同じだ」と伝えるPRを開始した。メッセージが、若者に届いてくれるといいのだが。

(注1)若者の電子たばこ使用禁止の取り締まり、青少年喫煙防止計画に対するFDA声明

在米ジャーナリスト、翻訳者、がんサバイバー

 東京生まれ。日本での記者職を経て、1995年より米国在住。米国の政治社会、医療事情などを日本のメディアに寄稿している。2008年、43歳で卵巣がんの診断を受け、米国での手術、化学療法を経てがんサバイバーに。のちの遺伝子検査で、大腸がんや婦人科がん等の発症リスクが高くなるリンチ症候群であることが判明。翻訳書に『ファック・キャンサー』(筑摩書房)、共著に『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)、『夫婦別姓』(ちくま新書)、共訳書に『RPMで自閉症を理解する』(エスコアール)がある。なお、私は医療従事者ではありません。病気の診断、治療については必ず医師にご相談下さい。

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