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映画版『#Winny』がAmazonPrimeで公開中。 金子勇氏から奪われた人生7年間の価値

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:映画『Winny』

KNNポール神田です。

2023年3月に公開された映画『Winny』がAmazon Primeでも公開された。
プログラム開発者が、逮捕されるという日本で初の裁判ケースがよくわかる。
著作権侵害の幇助の罪状で、原告がなぜか警察という異例の裁判だった。

AmazonPrime会員であればすぐに視聴できる。
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CH9Z2VHL

2002年、開発者・金子勇(東出昌大)は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「2ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。次々に違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。
https://winny-movie.com/https://winny-movie.com/

■ファイル共有ソフト『Winny(ウイニー)』の脅威


1999年5月
ショーン・ファニングと、ショーン・パーカーによる『Napster』のサービス公開が始まった。『P2P(Peer to Peer)型』と呼ばれる分散型コンピューティングの幕開けだった。『MP3』によってファイル化された音楽が、ファイル共有されることによって、爆発的な広がりを見せた。

1999年7月、イアン・クラークによるP2Pの画期的な論文『Freenet』を読んだ金子勇氏は、ファイル共有ソフト『WinMX』の次世代版の開発に取り組むこととなる。

そして、音楽業界は『ファイル共有ソフト』で、歴史上最大の脅威を迎えることとなった。そして、Appleは『iTunes』で音楽CDを取り込むだけでなく携帯音楽プレーヤー『iPod』で見事に音楽業界に食い込んだ。

2001年10月、Appleから『iPod』が発売となる。『MP3』ファイルをサポートしながらも、著作権保護のある『AAC』ファイルを標準としたのだ。

2002年5月、『金子 勇(かねこいさむ)』 氏によって『2ちゃんねる』に配布された無料の日本産のソフトウェアが『Winny(ウィニー)』である。暗号化と匿名性により、日本での利用者も爆発的に増えた。そして、先行していた『Napster』は、違法音楽の温床として、2003年6月に会社は清算に追い込まれていく…。

2003年4月、Appleは1曲99セントというデジタル著作権管理機能を持つ『iTunes Music Store』をリリースし、音楽業界を見事に味方につけた。

一方、金子氏は、
2004年5月京都府警により著作権法違反幇助により逮捕される。
2ちゃんねる』などで『ウィニー弁護団』が組織化され、裁判費用が1,600万円集められた。
2006年12月、罰金150万円の有罪判決。即日、控訴後、
2009年10月大阪高裁での控訴審で、逆転無罪判決となり、大阪高等検察庁は判決を不服として最高裁判所に上告。
2011年12月、最高裁は検察側の上告を棄却。無罪が確定した。この映画はそれらの裁判の行方を再現している。そして、この映画の最大の特徴は『警察の裏金づくり』をあばいた 仙波 敏郎(せんば としろう)氏についても言及しているところが特徴だ。

そして、金子氏の登場のラストのインタビューにいたるまで、当時の日本のインターネット最大の話題をリアルに再現している。

2011年12月20日 最高裁裁判判決後の緊急会見


勝訴の1年半後

2013年7月6日18時55分頃、急性心筋梗塞のため亡くなる。享年43歳。

少年の頃の金子氏が、本屋で覚えたコードを、NECのPC8000シリーズで再現するなど、懐かしい当時のパソコンの黎明期を描いている。
時代はNETFLIXの『全裸監督』のレンタルビデオ時代とかぶる時代だが真逆の日本のテーマだ。
『Winny』は当時の日本のマイコンブームをも描いた珍しい作品でもある。
また、P2Pの特集の多かった『ネットランナー』などを模した雑誌なども登場している。

■Facebookの初代CEOと『ソーシャル・ネットワーク』


『Napster』の『ショーン・パーカー』は、
2004年、Facebookの初代CEOとなるシーンはデビッド・フィンチャー監督の『ソーシャルネットワーク』にも詳細に描かれている。2004年は、金子氏の逮捕の年だ。

もしも、金子氏が裁判に足掛け7年間も煩わされることがなければ、もっといろんな革新的なサービスが誕生していたに違いないと筆者は思う。

FriendSter』は、2002年に開始、『Myspace』は2003年。そして、日本のソーシャルネットワークの『GREE』は、2004年2月、『mixi』は、2004年3月のサービス開始だ。そう、新たな『SNS』サービスが続々と誕生していたのだ。そして、2005年12月には『YouTube』が誕生する。
いずれも、金子氏が係争中に発生したネット上の大ブームだ。

もしも、金子氏が裁判に足掛け7年間も煩わされることがなければ、もっといろんな革新的なサービスが誕生していたに違いないと筆者は思う。


■金子氏が係争中におきた機会損失としての『Bitcoin』


サトシナカモトが生んだ『ブロックチェーン』技術による『Bitcoin』は、2008年に誕生した。金子氏の2004年の逮捕劇から4年後である。

P2P型の台帳で管理された『Bitcoin』などは、係争中でなければ、金子氏は、最も興味を引いた分野ではないだろうか?

あらためて、この映画『Winny』を見ると、最終的な『無罪』を勝ち取るまでの年月の『機会損失』は単なる『無罪』という『ゼロ』にしかならなかった時間は、あまりにもひどすぎる結末だったと思う。そして、今は亡き、金子氏の失った人生の時間を心から詫びてほしいと願う。

テクノロジーの持つ光と影の部分を、考えると、開発者とユーザーと法律の3者の問題は過去の話ではなく、現在のAI革命が抱え持つ課題とまったく近似している。
第二の『Winny事件』が生まれないような、法とユーザーの活用方法を模索してほしい。


■映画を見られた後に…

ウイニー弁護団の 壇俊光弁護士のブログ

アターニーアットロー
http://danblog.cocolog-nifty.com/attorneyatlaw/


壇俊光弁護士 登壇の動画

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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