KNNポール神田です。

上沼恵美子(かみぬま えみこ)さんがテレビのレギュラー番組の終焉をきっかけにYouTubeに活躍の舞台を移しているようだ。

□歯に衣(きぬ)着せぬ物言いでお茶の間を楽しませてきたタレントで、“関西の女帝”とも呼ばれる上沼恵美子さんは昨年(2021年)12月、ユーチューブで「上沼恵美子ちゃんねる」を始めた。テレビのレギュラー番組が相次いで終了し、活躍の場をネットの世界に移しつつある。

□「テレビ離れは明らか。局は後手に回って視聴者に媚(こ)びてる。コンプライアンスとか言って禁句だらけで。バラエティーって、おもちゃ箱をひっくり返したようなはじけた楽しさが必要で、無機質な積み木のような番組だけじゃつまらない。視聴率という“成績表”を毎週もらうのにも、くたびれました」。

□ピーク時は関西を中心に10本以上のテレビ・ラジオのレギュラーを抱えていた。だが、2020年に関西テレビ(大阪市)のトーク番組「快傑(かいけつ)えみちゃんねる」が終了。27年続いた朝日放送テレビ(同市)の料理番組「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」も今春で終わり

https://news.yahoo.co.jp/articles/3c78498e349d4910700d472e870ee3360f60f905

関西以外では、上沼恵美子氏を一番見る機会は、『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』ではないだろうか?

https://www.asahi.co.jp/oshaberi/

この番組も2022年4月1日で終了予定だ。1995年のスタートだから27年間の長寿番組の終焉となる。

テーマソングは渡辺邦孝氏作の『元町チャチャ』。あのアコーディオンが聞けなくなる。こんな歌バージョンの『おしゃべりチャチャ』があったとは!

■YouTubeの『上沼恵美子ちゃんねる』が開始!

出典:上沼恵美子ちゃんねる
出典:上沼恵美子ちゃんねる

https://www.youtube.com/channel/UCxuuuG_hArKRyRWQaBhznPA

上沼恵美子のYouTubeチャンネルは、2021年12月からスタート。登録人数は不明だが、初回は121万回再生と好調なスタートといえるだろう。

なんといっても、関西以外では料理番組のMCなので独特の毒舌の味のあるあのしゃべりを聞く機会が少ない。筆者も関西出身なので、関西の番組が視聴できなくおもっていたので、さっそくYouTubeも登録してみた。

ネタはまだまだ手探り状態かもしれないが、今後は企業コラボなどが展開されると、化学変化が起きそうな気がする。

何よりも圧倒的なまでの上沼恵美子の語りのスキルだ。

長い芸能界でのキャリアを元に、コンプライアンスを多少毀損しても毒舌で切り込んでいってほしいものだ。

■ベテランYouTuberが織りなすテレビ業界への影響力

関西での絶大なるテレビの女王がYouTubeへと舞台を変えたことにより、単にテレビを見ない人をターゲットにするだけでなく、テレビを見ている人もYouTubeへと引き込む影響をみせそうだ。特に高齢者層だ。

ヒカキンやはじめしゃちょーのようなテンポのある番組ではなく、時間のある高齢者が見るゆったりとした番組が増えてくると、テレビと真正面からカニバルこととなる。

そう、なんといっても上沼恵美子は、高齢者からの人気も高く。現在の、中高生や若年層が中心だったYouTube視聴層から、、今後は、視聴者の年齢層にあわせたコンテンツ群が提案されるようになってきている。

勉強、教育から、投資、ビジネス、マネー、スキル向上、断捨離から終活、遺産相続にわたるまでYouTubeのコンテンツのジャンルは超ロングテールなのだ。テレビではカバーできるはずがない。

当然、広告表示もその属性にあわせて表示される。そう、テレビ業界が、逆立ちしてもできないことは、YouTubeは、視聴者の属性にあったCMを流すことができることだ。逆にテレビは、番組の内容や、曜日時間帯で視聴者の属性を推定し、それに合わせてCMを流すということであったからだ。

しかし、誰もが、四六時中スマートフォンを保持して、テレビを点けていながらも、スマートフォンを見ているようになると、CMの視聴率は獲得できても、かつてのような売上との関連性が希薄化してくるのは当然だろう。そこも、YouTubeでのエンゲージメント数が確保されるとますますマスメディアの歩が悪くなる。

むしろインターネットであれば、テレビでの上沼恵美子さんの放送の時間帯および内容にあわせた広告主である必要もまったくなくなる。さらに、広告企画で直接、上沼恵美子さんのチャンネルでコラボするなどのやり方はいくらでもできるようになることだ。

さらに、テレビスポンサーは、広告代金が負担する番組制作費以外に、放送局の利益の大半となる電波料などがある。一説には電波料の原価は携帯会社の10分の1とも言われるが、ネットの世界には電波料などの概念は不要だ。

そして、まったく、テレビの世界に義理立てする必要がなくなってきた時代が本格化してきたととらえるべきであろう。

それは、インターネット広告のほうがマス媒体広告よりも市場が大きくなったからだ。

テレビのベテランがYouTubeに活躍の場を変えはじめることによって、激動の高齢者、中高年にも、遅れたブームがやってくる。

実況達人の古舘伊知郎氏もYouTubeの世界では10万人を超えた喜びを伝えている。

古舘伊知郎チャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCjXDbgbzk9BnpxDnRCempfg

■マスコミ四媒体の広告費VSインターネット広告の構造

出典:電通報 
出典:電通報 

2021年、マス4媒体の広告費がインターネット広告費に抜かれたことで、テレビ番組などが今後大きく変わっていくことは理解しやすい。マスメディアの力学が大きな変化をみせる分岐点の年でもある。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20220225-00283800

テレビの広告費が伸びなくなり、テレビ局そのものが人件費の削減をおこないだしたり、番組の制作費のコストカットはさらに激化する。

中でも、大御所タレントなどの出演する、もはや今更ギャラを下げられない番組は仕切り直しやリニューアル、終了などが迫られる。

しかし、番組の制作コストの切り詰めは番組の質にも影響してくる。

たとえば、テレビ東京系列の企画番組は当初からタレントを使わず、ディレクターとカメラマンさえいれば、取材できるスタイルを確立にしてきた。空港で外国人をみつけて、取材する『Youは何しに日本へ』や、終電後にタクシー代を負担する代わりに『家、ついて行ってイイですか?』のドキュメンタリースタイルにいたるまで予算がかけられない前提で面白い番組を作ってきた。

しかし、キー局でも、制作会社の企画を選択すればよかった時代から内製化で利益を確保できる番組へと変化してきた。

とはいえ、いきなり低予算のヒットする企画番組を登場させるには至難の技だ。さらに現在はコンプライアンスに厳しい時代。面白いことイコール、コンプライアンスに抵触するリスクも高まるのでつまらない安全な企画に落ち着く…。

そして、今までは、タレント事務所もレギュラー番組があれば、番組出演料そのものよりも、利益率の高いCMなどでの起用が期待できたが、インターネット広告費にマスコミ四媒体が抜かれることによっても、CMでの起用が期待できなくなった。

そう、テレビでレギュラーを持ち、CMで稼ぐというビジネスモデルが崩壊してきているのだ。

このようなテレビ業界を取り囲むファンダメンタルズを考えれば考えるほど、ネット業界の広告の世界の中で『アイボール』を集めたほうが効率が良いと判断することができる。

中でも、GoogleのYouTubeは、広告収益の殆どをYouTuberに分配することによって、YouTuberという職業を誕生させることができた。

■YouTube経済効果は日本で2,390億円、7.5万人のフルタイム雇用

なんといっても、YouTubeは、収益の65%を配信者に還元するという収益度外視でのメディア開発をおこなってきている。

いつまでこの状況が続くかはわからないが、まずはマスコミ媒体の主流のIPがネット側に流れ込むまでこの動きが続けば、広告を主たる収益の原資としたマスコミ媒体は、近年、経営の重症患者となるのは明白だ。

□米国では2020年に205億ドル(約2兆3千億円)の経済効果を生み、39万4千人の雇用をもたらした。※平均583万円

https://www.sankeibiz.jp/business/news/211111/bsd2111111903003-n1.htm

□米グーグル傘下の米ユーチューブは(2021年11月)10日、同社が運営する動画共有サービスの日本における経済効果が2020年に2,390億円に達したと発表した。

□英コンサルティング会社のオックスフォード・エコノミクスが日本で5000人以上の利用者や動画を提供するクリエーターなどを対象とした聞き取り調査を実施。

□日本では登録者が10万人を上回るユーチューブのチャンネルが5,500以上となり、1年間で45%増えた。利用拡大を背景に、7万6000人近い雇用を生み出した。(一人平均※平均314万円)

□人口が日本の約2.5倍の米国では19年の経済効果が160億ドル(約1兆8000億円)に達したと試算

□ユーチューブは2020年までの3年間に総額約460億ドルの広告収入をあげており、このうち約65%が動画の提供元に回った計算になる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN112LT0R11C21A1000000/

また、この65%をコンテンツ製作者に配分するというモデルは、他の企業が真似たくても真似ができないのは、Googleが世界の広告市場を締めているからだ。

そして、YouTubeの売上は、Googelの10%ほどだ。Googleの絶大なる加護の中、YouTubeなどの動画メディアへの積極的な投資が収益を度外視しておこなわれている。

その影で、マスコミ四媒体、プロモーションメディア広告費などが蝕まれていっている。