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『ともだちラジオ』としての『Clubhouse』招待でなく推薦で入会するしくみだからこそ気をつけたい

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:Clubhouse

KNNポール神田です。

2021年1月26日(火)日本における『Clubhouse』のムーブメントが突如として誕生した。『Clubhouse』とは一体何か?

一言でいうと、フォローとフォロワーによるリアルタイムなボイスチャットアプリだ。

いや、もっとかんたんにいうと『ともだちラジオ』だ。誰もがスキな時に自分のフォロワーに対して、『Clubhouse』内に自分の専用の音声による『ルーム』を作ることができるのだ。しかも、iPhoneたった一台あればよいのだ。

このサービスはどんないきさつでスタートしたのか?

■元Google元Pinterestの連続起業家のポール・ダビソンが2020年に3月に開始したサービス

『Clubhouse(クラブハウス)』を運営する『Alpha Exploration(アルファエクスプロレーション)』共同創業者のPaul Davison(ポール・ダビソン)CEO

出典:Clubhouse
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共同創業者のポール・ダビソン氏とローハン・セス氏の会社『Alpha Exploration』の事業が『Clubhouse』だ。

https://twitter.com/pdavison

https://www.linkedin.com/in/davison/

ポール・ダビソン氏

2002年、米スタンフォード大学を卒業後、コンサルティング会社のベイン&カンパニーにへ、2005年にスタンフォード大学のMBAを取得し、2006年からGoogleへ、Google社内ベンチャーを経て、2011年『Higilight』を起業し、2016年にPinterestへ売却、その後2018年までPinterest勤務 2018年からはCoinListのアドバイザーを兼ねながら、202年2月からは現職 Alpha Exploration Co. の共同創業者兼CEOとなる。

共同創業者にローハン・セス氏

https://twitter.com/rohanseth

いわゆる、シリコンバレーで働き、シリコンバレー流の起業を経験し、売却。さらに、新たな事業を起こすという連続起業家(シリアルアントレプレナー)の典型的なパターンだ。そして、打ち出したサービスが、この音声SNSの『Clubhouse』だ。

連日のように、『Clubhouse』でポール・ダビソンやローハン・セスのルームが開設されている。

出典:Clubhouse
出典:Clubhouse

■『完全招待制の音声チャット』の魅力は?

出典:筆者のClubhouseアカウント
出典:筆者のClubhouseアカウント

ボイスチャットなんて、古くからある。『LINE』でも『facebook』でも…。しかもゲーマーの実況である『ディスコード』も存在する。それらと何が違うのか?

最大の違いは、『メディア』であるか『コミュニティ』であるかだ。従来のポッドキャスト系は『番組』というメタファーをフォローする関係性であり、演者とリスナーの立場が明確だ。また、リアルタイムではなくいつでも好きな時にストリーミングであれ、ダウンロードであれ、時間を非同期で楽しむことができた。

しかし、『Clubhouse』は名前のとおり『クラブハウス』という共通の趣味の人が集まるクラブというメタファーであり、『Clubhouse』のその場に招待された人が、自由に、番組、いや、会話を『生ライブ』で楽しめるという設計になっている。

そして、フォローとして、登録している人にはリアルタイムであれ、スケジュールであれ、通知が届き、気軽に、『ライブ』な音声コミュニティに参加することができる。

そう、重要なのは『生ライブ』であることで、完全に時間軸が同期している珍しいメディアだ。アーカイブが残せない、チャットもできない、いいね!もない、音声でしか表現できないという単一の機能に特化したサービスである。

■『Clubhouse』の圧倒的な音質管理と、セッティング不要の設計思想

実際に試してみて最大の驚きは、音質の最適化だ。高音質を売りにするわけではないが、トークの邪魔になるホワイトノイズのようなものが、完全にノイズキャンセルされている状況にあることに驚いた。

このようなサウンド系のサービスは常に、ヘッドフォンやヘッドセット側のマイクに注意しなければ音がハウリングをしたり、大量に人がいた時はマイクを各自がオフにしないと、ノイズだらけになることを『Zoom会議』で、この1年間、経験してきた。

しかし、『Clubhouse』の場合は、そんな面倒な設定が一切不要で最適化されるようになっている。実際に、iPhoneでライトニングイヤフォンや、AirPodsを使っていたが、それらを使用せずに、iPhoneの音声をスピーカーにして、そのままの状態で話すだけで、ノイズレスで会話ができるのに驚愕だった。

つまり、イヤフォンやマイクを意識しないで、ただ、iPhoneだけを使えばよいのだ。

『Clubhouse』に、Android版がないのは、マイクやスピーカーのパーツが限定されているiPhoneだからこそのノイズをオフにするチューニングがなされているところだろう。

日本語化がなされていないが、ボタンなどの数は少ない…。触っているうちに、直感的に習得できるようなものだ。誰もがまだ、初心者なので、多少の失礼も許されるうちにいろいろ機能を試してみたくなる。

Spotifyなどの音楽アプリを立ち上げて音楽のBGMにしながら、『Clubhouse』のトークを聞きながすこともできるので、普段の音楽視聴の間に『耳』を『聖徳太子化』することができるのだ。『視覚』は多重化できるけれども、『聴覚』の多重化ができるのも驚きだった。双方のボリュームの調整はできない…。

■『FOMOマーケティング』ではなく、『ノミネート文化』

『FOMO(fear of missing out:取り残されることへの恐れ)』は、SNSサービスでは、よくあることだ。まわりの人が続々と新たなサービスを使い始めるが、自分はまだ使えない…。FOMAマーケティングはサービスの負荷分散のためにも過去につかわれてきた。

かつては、SNSの『Friendster』『Orkut』そして日本の『mixi』など、また、『Gmail』も最初は招待制でのスタートだった…。話題になればなるほど、まだそのサービスに招待されていない人は『FOMO状態』となってしまう…。

そして、この『Clubhouse』は、自分の招待枠がたったの2名しかないのである。

これは見事な『FOMOマーケティング』であり、飢餓状態で、需要よりも供給がすくなく、1対2の再生率で浸透していくように思われた…が、『クラブハウス文化』を考えれば、招待というよりも、ノミネート(推薦)文化のほうが重要なようだ。誰が推薦してこの会員をクラブハウスに招き入れたのかが重要なのだ。

リアルな『クラブハウス』の会員のトラブルは、その会員を推薦したメンバーが負うこととになるからだ…。

■アーリーアダプターを中心に熱狂的な支持を得ているのが現在の状態

この突如として、現れた日本のアーリーアダプターを中心に盛り上がりは、完全招待制という十数年前のSNSのメタファーが懐かしさを醸し出しているのかもしれない。

また、たったの2名しか招待できないという『Clubhouse』のしくみと、すでにオワコン化しているiPhoneの電話帳から、相互登録している人であれば、SMS経由で招待できるというしくみとなっている。

ただ、筆者のように10数年来つかっていない電話帳から一斉に招待したところ、電話帳の中に登録していた宅配便の方のSMSにまで届いてしまったなどの経緯があるので招待する人、される人はその人を『ノミネート(推薦)』した履歴がずっと残るので、気をつけたいものだ。

そう、早く招待してほしいと思いながらも、『誰から推薦された』のかがずっと、自分のマイページに残るので、招待してくれる人も本当は選んだほうが良いのだ。

そう、子供は親を選べるので、焦ってよく知らない親からは生まれないほうが良いと思う…。

自分のマイページに推薦人はずっと刻まれるので、心して推薦してくれる人も焦らず、選んでいただきたい。

出典:Clubhouse
出典:Clubhouse

https://www.joinclubhouse.com/welcoming-more-voices

創業者たちの想いがブログに綴られている…。

新たな出資をえて、次のステージへ向かおうとしていることがよくわかる…。

私たち2人は2011年に共通の友人を介して出会い、ソーシャル製品への共通の愛で結ばれました。当時、ローハンは街中で友達がお互いを見つけるのを助ける方法に取り組んでいて、ポールはHighlightというアプリを作っていました。それから10年間、私たちは2人とも新しいアプリを試したり、失敗したり、また始めたりしながら、ソーシャルプロダクトに取り組み続けました。(中略)

私たちの目標は、投稿するのではなく、他の人と集まって話をすることができる、より人間味のあるソーシャル体験を構築することでした。私たちのゴールは、セッションの最後にアプリを閉じた時に、開いた時よりも良い気分でアプリを閉じられるようなものを作ることでした。

先週(2021年1月23日)は、世界中の200万人がつながりを求めてクラブハウスに集まりました。私たちが今まで参加した中で最もエキサイティングなことです。

私たちが最も大切にしていることは、声が人々を結びつけることができるということです。世界のどこに住んでいても、どのようなネットワークにアクセスしていても、クラブハウスでは、自分とは全く異なる経験をしてきた人たちと同じ部屋にいることができます。

私たちは今、クラブハウスを全世界に開放することに焦点を当てています。2021年に向けての目標を念頭に置き、シリーズAをリードしたa16zのAndrew Chen氏が新たな資金調達ラウンドを確保しました。現在、大小合わせて180人以上の投資家がクラブハウスに出資しており、人種、性別、専門分野は多岐にわたり、初期のコミュニティのメンバーも多く含まれています。私たちは、資金調達自体がマイルストーンであると感じたことはありませんが、これらの資金をどのように利用して製品をより良いものにし、Clubhouseのクリエイターが繁栄するのを支援するかを共有したいと考えています。|

■Androidのアプリ開発

私たちは初期の頃から、すべての人のためにクラブハウスを作りたいと考えてきました。その思いを胸に、Androidアプリの開発に着手し、アクセシビリティやローカリゼーション機能を追加し、世界中の人々が自分たちに合った方法でClubhouseを体験できるようにしていきたいと思っています。

■サーバの維持

ここ数ヶ月の間に予想以上に成長したため、多くの人がサーバーに障害が発生した際に赤いエラーメッセージを表示してしまいました。今回の資金調達の大部分は、技術とインフラに充てられ、クラブハウスの体験を誰もが利用できるようにするためのものです。

■不正利用の検知へ投資

私たちの成長に合わせてトラスト&セーフティとサポートチームの規模を拡大し、不正利用を検知して防止するための高度なツールへの投資を継続し、モデレーターが利用できる機能やトレーニングリソースを増やしていくことを意味しています。また、サポートチームを積極的に拡大し、すべてのクラブが即日承認を得られるようにしていきます。

■ランキングと発見の改善

今回の新たな資金調達により、私たちはディスカバリーに多額の投資を行い、あなたの興味にぴったり合った人、クラブ、部屋を紹介することができるようにし、あなたが探してみようとは思わなかった新しい部屋を発見できるようにします。

■クリエイターへの投資

クリエイターはクラブハウスの生命線です。今後数ヶ月の間に、チップやチケット、サブスクリプションなどの機能を使って、クリエイターが直接報酬を受け取ることができるようにするための最初のテストを開始する予定です。また、新たな資金調達ラウンドの一部は、クラブハウスの新進クリエイターを支援するためのクリエーター助成金プログラムの実施に充てられる予定です。

■既存ユーザーからの招待で参加可能に

私たちは、クラブハウスをできる限り早く拡張し、すぐに誰でも利用できるようにするために努力しています。その間、既存のユーザーからの招待でどなたでも参加できますし、ウェイティングリストにサインアップしていただければ、すぐにお迎えできます。また、あらゆる分野で採用活動を行っていますので、私たちのミッションにワクワクしている方は、ぜひお話をお聞かせください。

またよろしくお願いします。皆さんのためにこの製品を作ることができたことは、私たちにとってとても大きな意味があり、この次の章に向けてとてもワクワクしています。

- ポール、ローハン、クラブハウスチーム

January 24, 2021

https://www.joinclubhouse.com/welcoming-more-voices

■初心者用の質問ルーム 毎日18時30分よりはじめます!

※2021年1月中

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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