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change.orgで『署名』する前にすべきことTBSのポールマッカートニー仮病報道抗議

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:change.org

KNNポール神田です。

【追記】問題となったポールマッカートニーが六本木で飲み歩いたとするイラスト

問題となったポールマッカートニーが六本木で飲み歩いたとするイラスト 出典:TBS『新・情報7DAYS』
問題となったポールマッカートニーが六本木で飲み歩いたとするイラスト 出典:TBS『新・情報7DAYS』

TBS側は ウェブサイトでこのキャンペーンの署名を受け謝罪した。同番組でのテレビでの謝罪はなかった。

TBSはウェブサイトの番組サイトで謝罪 出典:TBS
TBSはウェブサイトの番組サイトで謝罪 出典:TBS

ビートたけしが世界の面白い話題を紹介するTBS系情報番組『新・情報7daysニュースキャスター』のコーナー、「たけしの刮目ニュース」。11日の放送では、世界のドタキャン騒動が取り上げられた。

その中で、ポール・マッカートニーが2014年に来日した際、公演をキャンセルした話題を紹介。しかし、「内容が視聴者に誤解を与えるものだった」として、TBSは番組HPで謝罪した。 2018年11月18日

出典:『ニューキャス』たけしコーナーが誤解呼ぶ? ポール・マッカートニーファンが署名集める

TBS系『新・情報7DAYS ニュースキャスター』では11月10日の放送で、MCのビートたけしがタイムリーな話題としてポール・マッカートニーを取り上げている。

たけしが面白おかしくトークするコーナー『ビートたけしの刮目NEWS』にて「ポールはドタキャンの常習者で、これまで日本公演50回のうち15公演が中止、2公演が延期になっている」と紹介した。

さらに2014年の『ポール・マッカートニー アウト・ゼアー ジャパン・ツアー 2014』で「ウイルス性炎症」によるポールの体調不良が回復せず全公演が中止となった件について、実は「六本木で飲み歩いている目撃情報があり、仮病ではないか」との趣旨を話していた。(中略)「何をバカな嘘を!!」と憤る湯川れい子。2014年の当時を振り返り「ポールは日本に着いた夜から体調を崩して、入院でもしたら付いてきている外国メディアから情報が漏れて、次のコンサート地に様々な迷惑がかかるから…ということで、私たちも死ぬほど大変だったんですよ」と明かしている。

出典:ポール・マッカートニー、2014年の来日公演中止は“仮病”報道に湯川れい子「何をバカな嘘を!!」

湯川れいこ氏の抗議のtwitterはこちらだ…。

そして、湯川れいこ氏は、署名サイトのchange.org上のTBSの抗議キャンペーンに対して、twitterでこう発言した…。

「こんなキャンペーンが始まっています。決していい加減な団体では無いと考えて、私も署名しました。ぜひ、ご自身の目で確認して、賛同する場合は署名して下さい」

2014年のポールマッカートニーさんの国立競技場公演中止は仮病であると誤解を招くような報道について、TBSは訂正して謝罪してほしい

https://www.change.org/p/tbs%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93-2014%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E7%AB%B6%E6%8A%80%E5%A0%B4%E5%85%AC%E6%BC%94%E4%B8%AD%E6%AD%A2%E3%81%AF%E4%BB%AE%E7%97%85%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%A8%E8%AA%A4%E8%A7%A3%E3%82%92%E6%8B%9B%E3%81%8F%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6-tbs%E3%81%AF%E8%A8%82%E6%AD%A3%E3%81%97%E3%81%A6%E8%AC%9D%E7%BD%AA%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%BB%E3%81%97%E3%81%84-1cdaf089-879f-4115-9df6-3a0acddb94e5

ここまではTBSの報道バラエティに対する抗議の署名運動であり、『change.org』は米国の企業が運営するサイトであり、署名を集める機能を無償で提供している。そして、chage.orgのビジネスモデルについては少し理解が必要である。

『署名』とは、個人が意思を『公』にしていることが一番重要なこと

change.org は一般企業が無償で『署名収集』機能を提供するサイトであり、会員の会費や企業の出資や寄付、広告キャンペーンなどによって運営が賄われている。当然、利益がないと無償で提供できるわけがない。

それと同時に、署名することイコール、公に自分の意思を表示することを意味していることを理解すべきだ。

従来の紙による署名キャンペーンと同様に、オンラインの署名キャンペーンも、ある問題について支持を表明する公の表現であると私たちは考えます。そのためユーザーの名前、おおよその地理情報(市町村、都道府県、国)、およびChange.orgのユーザープロフィールへのリンクは、ユーザーが賛同するキャンペーンのランディングページに、またプラットフォームの関連分野に表示されることがあります。この情報は、メディア、検索エンジン、および記録用にインターネット活動を提供する他の組織を含めて、どの訪問者にも表示されます。署名キャンペーンへの賛同を公にしたくない場合は、賛同しないことをお勧めします

自分の名前やコメントを公開しないことを選択した場合も、ユーザーの氏名と都市名および/または郵便番号、賛同した日付は、ユーザーが賛同した署名キャンペーンの発信者にシェアされます。これは署名キャンペーンの発信者にとって、影響を与えようと活動しているデシジョンメーカーに対し彼らの賛同が正当なものであることを証明する上で、非常に重要です。キャンペーンの発信者とこの情報を共有したくない場合は、キャンペーンに賛同しないでください。

出典:プライバシーポリシー

『署名』をすることは、公にステートメントを誰が指示しているのかが重要であり、『アノニマス(不特定な匿名)』では署名したことにならないのだ。そして『署名』した人の『名前』こそが重要であり、名前の個人を担保する住所やメールアドレスが必要となる。そして、それを公にすることで署名の意味(特定できる多数の人の名が連なっている)が成立する。そして、それをひきかえにある程度のプライバシーが犠牲になることも覚悟して『署名』をする必要がある。主義主張や思想と名前などがヒモ付けられ、検索される可能性などを含めてだ。紙の署名との明確な違いは、検索されやすい事や、クッキー(表示履歴)を利用されるなどが挙げられる。紙の署名でもチカラ技で住所と氏名をリスト化しようとすれば可能だ。

署名を集めるサイト change.org のビジネスモデルを理解しておきたい

まず第一に、Change.orgは個人情報、メールアドレスをユーザーに無断で第三者に販売したことはありません。

ユーザーが選ぶ場合のみ、またユーザーが具体的に同意する場合にのみ、弊社は、ユーザーの電子メールアドレス、郵送先住所およびユーザーが署名したキャンペーンを含めたユーザー情報を広告主と共有することがあります。 また、ユーザーが別途同意した場合にのみ、その電話番号を共有する場合があります。 その後、広告主はこの情報を使用して、ユーザーに連絡を取ったりユーザーの関心に沿う販売促進資料をユーザーに送信することがあります。 弊社では、ユーザーが弊社の広告主から受信するメッセージのコンテンツまたは頻度は管理しません

2016年までは、スポンサーキャンペーンというビジネスモデルをとっていました。

出典:Change.orgのビジネスモデルについて

change.orgのサイトのビジネスモデルの説明にあるように、『Change.orgは個人情報、メールアドレスをユーザーに無断で第三者に販売したことはありません。』とある。しかし、ここで使われている『無断』の言葉に注目してほしい。

『無断』といいながら、最初から許可したことになっていないか?

出典:change.org
出典:change.org

今回のポールマッカートニーの仮病に対しての抗議の署名ページであるが、筆者が、青で囲った部分がすでにチェックボックスは、すでに『オプトイン』していることになっているのだ。これは『無断ではないこと』を意味をしている。

しかも、文言に『私の名前と電子メールアドレスをポールファン有志と共有することに同意します』とある。それって署名に本当に必要なことだろうか?『ポールファン有志』という言葉づかいも気になる…。

【追記】change.orgに確認させていただいたところ、『ポールファン有志』という文言は、署名を募るユーザーが設定した名称の文言が使われているということ。

さらに『自分の賛同者名及びコメントをキャンペーンページで公開』にも許可したことになっているのだ。

そう、あくまでもこの部分は純粋な意味での『署名』ではなく、change.orgのマーケティング的側面での利用を許諾し、『無断』でないことを証明する画面になっている。なので、純粋に『署名』だけしたいのであれば、ここのチェックボックスははずしておく必要があるだろう。

むしろ、このようにデフォルトでオプトインにチエックしている時点で、さもしいと思わないのだろうか?オプトインは了承を得てからチェックするものだ。ここは署名サイトであって、アダルトサイトではないんだから!

【追記】change.orgに確認させていただいたところ、このオプトインのチェックボックスは、チエックされていない状況が望ましい事をUS側にリクエストしているという。残念ながら現在、チェックボックスのチェックがデフォルトでは、まだ外されてはいない。

出典:change.org
出典:change.org

さらに『署名』をすると、キャンペーンを広げるためにコーヒー一杯分の300円を出資をしろという…。すでに出資した人の名前が『無断』でなく利用されていることもわかる。change.orgのビジネスモデルだから仕方がないが、署名キャンペーンの成功のために、優先的に見えるように広告に協力しろと言っているにすぎないのだ。

『署名』を集めやすくし、社会に声を上げやすくするというchange.orgの機能はとても素晴らしいと絶賛したいが、その運営を賄うためのオプトインや、『ポールファンの有志』の言葉の選び方には、問題があると思う。

社会貢献につながるために、あえて、自分の名前をパブリックにすることによって得られる『署名運動』なのだから、オプトイン機能は名前をパブリックにする人の意思で選ばせるべきである。

2018年11月17日のTBS系『新・情報7DAYS ニュースキャスター』で、このネット署名運動の事や、噂レベルの報道を訂正するかを見守りたい。それとともに、change.org のチェックボックスのデフォルトではオフ化を望む。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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