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#インスタおばさん がInstagramの主流である理由

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です。

女性の50代以上が怒濤の伸びで、40代を抜いて30代に迫りつつある。おそらく今頃は抜いているだろう。29歳以下は伸びが止まり、飽和に達している。

29歳以下 360万人

40〜50代以上 408万人

と、すでに若い女子よりおばさんのほうが多い!!

出典:【驚愕】InstagramはおばさまのSNSになっていた。

40代203万人 50代205万人 合計408万人 出典:永江一石のITマーケティング日記
40代203万人 50代205万人 合計408万人 出典:永江一石のITマーケティング日記

いつもユニークな視点の永江一石さんのブログからだ。

データは2017年だから、現在の日本のInstagramにおいてもっと40〜50代以上の女性はもっと増しているはずだ。40〜50代以上の女性が408万人(2017年8月)が、同様に伸びているとすると、2018年度は600〜800万人とかの数値となり、29歳以下のほぼダブルスコアになっている可能性もありそうだ…。

巷のレストランでも、スマートフォンを片手に何度も自撮りの撮影に励む、その年代の『お姉さん』たちを見かけることが非常に多くなったと思う。それは日本の人口構成比の縮図でもあるから違う。また、Instagramの『おばさん』は、いままでの『おばさん』や『おばはん』のイメージとは違い、30代がそのまま、お金を持った富裕層になったイメージなのだ。

#美魔女』属性もそこに当たる。アンチエイジングに海外旅行、ブランドショッピングとグルメと自分磨きの消費に意欲的だ。もちろん、広告もそこを狙いはじめる。『#奨学金』を抱えた29歳以下のインスタグラマーとは視界が変わってきている。

40代以上の男性『おっさんグラマー』も377万人と29歳以下の『若い女性インスタグラマー』よりも多い

もちろん、女性に限らず、40代以上の男性『おっさん』のインスタグラマーにも注目したい。

40代172万人、50代205万人で合計377万人と、この『おっさんグラマー』の属性も女性の29歳以下のインスタグラマー360万人'を完全に凌駕している。しかも、このデータから、もうすぐ1年経過しようとしている、日本のInstagramの高齢化は、さらに進んでいることだろう。

日本と米国のInstagramのユーザー属性はまったく別物

ガイアックスソーシャルメディアラボのデータでも日本のInstagramのユーザー属性は『20代の若い女性メディア』という先入観はもう捨てたほうが良いのかもしれないことを物語る。日本のInstagram月間アクティブユーザー数(MAU)は2,000万人だ。(2017年10月)

国内Instagramの性・年齢別ユーザー数 出典:ガイアックス
国内Instagramの性・年齢別ユーザー数 出典:ガイアックス

一番注意したいのが、米国においては、男女ともにInstagramが圧倒的に20〜30代のメディアだということだ。この日本と米国の差の傾向は意識しておかなければならない。

圧倒的に20〜30代がメインの米国のInstagram 出典:ガイアックス
圧倒的に20〜30代がメインの米国のInstagram 出典:ガイアックス

全世界でのInstagramユーザーは、月間アクティブユーザー数(MAU)が10億人を超えた(2018年6月20日発表)

10億MAUを超えたInstagram 出展:Techcrunch
10億MAUを超えたInstagram 出展:Techcrunch

日本のInstagramユーザーは、月間2,000万人(2017年)だが、中高年の『インスタ映え』がさらに進んでいると考えられる。米国の20〜30代のマーケティングが、日本では中高年にまで浸透していると考えることもできるが、明確なInstagramの特徴は、文字を中心としたメディアではなく、ヴィジュアルを中心としたSNSであるところだ。

ハッシュタグ で検索することにより、ズラリと他人のアップした画像と出会える。ブログやFacebookやTwitterのように文章をいちいち打つ必要がない。スマートフォンで撮影し、少し画像を加工し、#ハッシュタグ を入れるだけで終了だ。#ハッシュタグ によるInstagram検索は 、Google検索とは違い、一瞬にして、右脳で感じることができる写真が並ぶ。

この手軽さは、高齢者のはじめてのスマートフォンユーザーでも簡単にハマれる。自然の景色や日常の散歩の風景も絵になる。炎上することもなく、知人とつながらなくても良い。今後、Instagramの成長は日本の高齢化と共にシンクロしていきそうだ。

しかし、お手軽な #ハッシュタグ に高齢者の属性が混ざると当然、おしゃれな、キラキラハッシュタグではなくなる。 ランチタイムにおしゃれなところを探そうとしても、社員食堂の食事を#大手町ランチであげてくるおっさんグラマーがいるからだ(笑)ハッシュタグもフォローできるので、ノイズが増えてきたと感じることだろう。

それと同時に、#インスタおばさん#インスタおじさんを揶揄する表現も多いが、彼らはそれをわざと自嘲気味にそのハッシュタグを自ら進んで使うから揶揄したところでまったく意味がない。

10代、20代しか入れない、もしくは30歳になったら卒業というような、年代カテゴリー別のSNSのニーズはきっとあると思う。むしろ、Instagramがその機能を搭載することは自己否定するようなものだからだ。基本的にInstagramは自分の理想の写真で、まったく他人と『理想』のみでつながれるSNSだ。どれだけファンタジーでも、フェイクでも、誰もが理想の自分を演出すればよいのだ。そこに実際の年代や性別、職業や肩書き、知人、などの『本当のリアル』を持ち込むと、 Instagramのめざす『インスタリアル』とは別物になってしまう。

そう、Instagramはリアルな自分ではなく、少し、背伸びした自分を世界に向けて発信すればよいのである。

筆者のインスタグラム には、#おじさん のハッシュタグはない(笑)

https://www.instagram.com/knnkanda/

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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