さようならホーキング博士 ハイテクテクノロジーが支えた天才物理学者

ホーキング博士とのインタビューテープ 1994年ボストンにて【出典】筆者

KNNポール神田です。

英物理学者のスティーブン・ホーキング博士が死亡した。家族のスポークスマンが(2018年3月)14日、明らかにした。76歳だった。家族によると、英ケンブリッジ大学近くの自宅で、穏やかに息を引き取ったという。ブラックホールや相対性理論に関する画期的な研究で知られ、「ホーキング、宇宙を語る(A Brief History of Time)」など、一般読者向けの科学書はベストセラーとなった。

ホーキング氏の略歴

1942年1月8日に英オックスフォードに生まれる

1959年にオックスフォード大学に入学。専攻は自然科学。その後、ケンブリッジ大学で博士号を取得

1963年までに、運動ニューロン疾患と診断され、余命は2年と宣告される

1974年に、後に「ホーキング放射」と呼ばれるブラックホールからの熱放射を提唱

1988年に「ホーキング、宇宙を語る」が出版され、1000万部を超えるベストセラーになる。

2014年にホーキング氏の半生を描いた映画「博士と彼女のセオリー(The Theory of Everything)」が公開される。ホーキング氏は俳優エディ・レッドメインが演じた。

出典:スティーブン・ホーキング氏が死去、76歳

1994年 MACWORLD BOSTONの基調講演

スティーブン・ホーキング博士の講演と講演後にお話をさせていただく機会が一度だけあった…。

1994年、Apple社のMacintoshのカンファレンス『マックワールド』だった。米国のボストンで開催された。

AppleのカンファレンスにIBM製のマシンを搭載したホーキング博士の車椅子での登壇は異様にも思えたが、ホーキング博士のCD-ROMタイトル『A Brief History of Time: An Interactive Adventure Multimedia CD-ROM(英語)』を紹介しながらレクチャーするというスタイルが取られた。

さっそうと、車椅子を操作し登壇場所までのスロープを駆け上がるホーキング博士。そのスピードに満員の会場は湧いた…。指先だけで車椅子は最高スピードで疾走する。しかし、そこから重い時間が流れる…。

舞台の中央に登ったホーキング博士のボイスシンセサイザーは、何も発生しなかったからだ…。5分経過し、10分経過し、基調講演の会場も流石にざわつき始める…。懸命に手元のスクリーンを見続けるホーキング博士の目と、指先だけを動かすホーキング博士のクローズアップ映像だけが、沈黙の中で永遠に動き続ける…。イベントの主催者は気が気でなかったことだろう。15分ほどしてからようやく…第一声が流れた。

Hello Everyone I am Stephen Hawking…。

会場は、一気に、割れんばかりのスタンディングオベーションで博士の第一声を迎えた。後にも先にも、基調講演で、あれほどの緊張感を味わったことは一度も無い。もしかすると、これはトラブルでなく、それだけ指先入力での会話が大変だということを示す演出だったのかもしれないと感じたほどだ。

基調講演が終わった後で、囲みの会見に参加することができた。

ホーキング博士に質問をすると、しばし、視点をモニターに向けながら、指先で文章を推敲していく。そして最後にシンセサイザーで音声を発生させる。単純な会話でも、親指のジョイスティックを操作し、文章を紡いでいく。

1994年という現在から24年も前の約四半世紀前のテクノロジーでさえ、感動を与えてくれる。この指先入力のテクノロジーが無ければ、当時のホーキング博士は、何も表現活動ができなかったからだ。少なくとも、ホーキング博士はテクノロジーによって論文を発表し続けることができ、我々、健常者が見ている見た目上の車椅子でのハンディキャッパーとは大きく違った、はるか遠くの宇宙のストーリーを指先一つ、最近では頬の動きひとつで語っていたのであった。まさにハイテク搭載の車椅子だったのだ。

2014年にはインテルが『acat(英語サイト)』としてサポートしている。

インテルはホーキング博士のために、効率的に意思伝達ができる新しいシステムを開発した。オープンソースのソフトを利用しているので、同様の障害を持つ多くの人に応用が可能だ。

ACATによってホーキング博士の入力速度は2倍になり、日常的な作業の効率は10倍に向上した。キーボードアプリ「SwiftKey」から取り込まれた技術のおかげで、ホーキング博士が入力しなければならない文字は、全体で20%少なくなった。

出典:ホーキング博士の意思伝達システムは「オープンソース」:四肢麻痺の患者に応用できる仕組み

現在の平昌パラリンピックを観戦していても思うが、健常者以上のパフォーマンスを発揮するハンディキャッパーの多さに感動する。むしろ、これからは「テクノロジカル・アスリート」として、健常者以上の結果を生みだすと思う。ホーキング博士の偉大な功績が、これらのハンディキャッパー用のテクノロジーも進化させ、ASLの患者が文字入力やコミュニケーションを容易にさせた。近い将来、実際にしゃべるよりも、ハンディキャッパーが考えただけで、コミュニケーションできるようなテクノロジーも登場することだろう。

ホーキング博士がACATを操作するしくみ(英語)

Intel Labs collaborated with Dr. Stephen Hawking on .NET-based assistive technology solution

実際にホーキング博士のスピーチは、見ておいたほうが良いだろう…。

講演時とリアルタイムではさすがに、違うが…。

TED2008 でのスピーチ(日本語字幕)

映画で活躍するホーキング博士

ホーキング博士の自伝映画を見ると、ある日突然、体が麻痺するという怖さを追尾体験することができる。

健常者といえども、生涯ずっと健常者とは限らない。ある日突然、自分にも訪れたらどうだろう?対応できるだろうか? そんなことをついつい考えてしまう。

ホーキング博士の映画が2本ある。

映画『博士と彼女のセオリー』

映画『ベネディクト・カンバーバッチ ホーキング』 DVD版

取材テープは後日アップロードしたい…

Hi-8mmビデオテープ
Hi-8mmビデオテープ

1994年のMACWORLDの取材テープは、Hi8mmテープなので、デジタイズしてから公開したいと思う。

テープは残っていれども、再生するデッキやビデオカメラがすでに手元になくなってしまっているからだ。

デジタルメディアがクラウドになる事によって、パッケージのメディアで再生ができなくなるということもなくなった…。miniDV形式のビデオは、随時キャプチャーしまだ公開できるが、Hi-8mmビデオは業者さんのお世話にならないと公開できなくなってしまった。デジタルの黎明期は、フォーマットの争いだし、コンバージョンは今後とも必要な作業なのだろう。当時の取材テープは数千本に及ぶ…。データベースとして利用していたMicrosoftのExcelのデータもすでに、,カンマ区切りのテキストデータで管理している。

テクノロジーの進化は、「コンバージョン手法」もアップデートしておかなければ、置いてけぼりになってしまうようだ。