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個人の配送情報は、どこまで教えるべきか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
女性に届いたLINEのやり取りを再現したもの(ねとらぼ編集部作成)

KNNポール神田です!

個人情報が、ネットだけではなく宅配の伝票からも漏洩している時代になってしまった…。

クロネコヤマトのドライバーが、受取人の女性に個人的に連絡を取っていたことが発覚し、愛知県警が元ドライバーに対して厳重注意を行っていたことが分かりました。問題が発覚したのはTwitterでの投稿がきっかけ。ある女性に「さっき11時ごろ荷物渡しに行ったヤマトの人です!良かったらLINEしませんか?」とショートメールが届いたのだといいます。訝(いぶか)しんだ女性があえてLINEで「どこで電話番号知ったのですか?」と尋ねると、「伝票に書いてあるんだよw」とドライバーは悪びれる様子もなく返信。私的な目的で個人情報を使用したのではないか、という追及には「そーなるね すいません」と顔文字混じりに返答していました。

出典:クロネコヤマトの委託配送員が伝票の個人情報盗み見て女性に連絡 愛知県警が元ドライバーを厳重注意

…なんというか、言語道断なハナシなんだが、円滑な配送を考えると個人の電話番号は必須である。しかし、その電話番号でLINEを検索できる設定にしていると、容易にLINEでメッセージがやってくるのだ(※LINEの設定で解除できる※「友だち自動追加」「友だちへの追加を許可」をオフ)。配送の合理化とSNSでのセキュリティ問題はトレードオフの関係で悪化していくばかりだ。また、昨今のamazonなどの定額性の宅配料金無料でヤマトなどの物流の人材不足が慢性化し、配送スタッフのモラル低下も安易に想像しやすい。リアルな個人宅で、荷物を届け、面談でハンコをもらい業務が完結するという現場では、それがきっかけで「恋愛」に発展という話もなくはない話だ。しかし、配送ドライバーが業務上知り得た情報を自由に活用してよいわけでは決してない。このあたりのモラルやマナーが近年、麻痺しているのかもしれない。いやSNSのサービスが普及し、敷居が低くなっただけなのかもしれない。

宅配ドライバー、モラルの責任は宅配会社にある!

人材不足、賃金上昇、モラル低下、教育不足、その責任は、あくまでも宅配会社にあるはずだ。営業上の売上確保のために激務になりドライバーの人材不足を生んだのは、その利益構造を作った会社側の責任でしかない。amazonも運賃上昇を考えれば他の手段を講じなければならなくなり、自前で配送網をつくったり値上げも考えられる。もしくは、UBER EATSのようなデリバリーシステムで、近所のヤマトの配送事務所に自分の荷物を取りにいったついでに、自分の近辺の住所の宅配を兼ねるような仕組みをもっと考えるべきだろう。既存の社会インフラを考えると…昼間には、まったく活用されていないような新聞宅配所の場所を宅配拠点の中継地点とする方法もありだろう。朝刊を8時までに配達終了してから夕刊の届く15時まで、地域の物流拠点が7時間もガラガラで空いている。新聞購読者が激減し、ネットチラシなどが増え、おりこみチラシ激減なので、amazonなどの物流拠点に最適化が図れるのだ。新聞宅配所がまだ顕在している間にイノベーションを起こさなければ間に合わないだろう。また、確実に在宅していれば割引できるような『在宅保障割引』などの仕組みも構築できるだろう。

住所マイナンバーの発想はないのか?

いまだに不便でしかない総務省の『マイナンバー』。むしろマイナンバーと連携しなくてよいので、13桁の代理ナンバーで自分の住所や氏名を名乗らなくてすむような、「アノニマス(匿名)な住所マイナンバー」が欲しいものだ!出来る限り、自分の情報を第三者に提供せずにとも荷物が届く手段はあるのだ。かつて米Google社のCheckoutを利用すると住所を教えなくてもモノが届いた。2001年に経営破たんしたWebvanでは近所に配送が来る時にオーダーすると送料が安くなる「ご近所配送予約」なる仕組みもあった。もちろん、最終的なモラルは接客するドライバーにあることには変わりはないが…。トラブル防止には、契約時のペナルティを明確に認識させるしかないだろう。しかしそれらは教育費に反映されるが、機会費用(オポチュニティーコスト)と考えるべきだ。埋没費用(サンクコスト)ではない。

匿名配送サービスは続々とはじまっている

一方、オークションなどのC2Cの売買では、匿名による配送サービスが続々とスタートしている。

メルカリ らくらくメルカリ便

https://guide.mercariapp.com/jp/shipping/rakuraku.html

ヤフオク はこBoon mini※コンビニ店留め

https://mini.takuhai.jp/

しかし、配送における個人情報の問題は、システムの問題だけでなく、ほんと0.01%のヒューマンエラーによって、宅配プライバシーへの不信感は増大される。女性ドライバーに配送してほしいなどのニーズも今後は考えられる。配送コストを反映したとしてもプライバシーは守りたいと考える人は決して少なくない。プレミアムな配送システムだって必要だ。多様な社会ニーズと社会インフラとしての宅配システム、業界や法制度を横断して議論するプロジェクトチームが必要な時期に至っていると考えている。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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