中国のGDPの2.5%日本の4.7%を占めるアリババ
KNNポール神田です!
2014年9月19日金、ジャック・マー率いるアリババ・グループ(阿里巴巴集団)1999年創業が、米ニューヨーク証券取引所でIPOを果たした。※iPhone6/6Plusの発売日と同日だ。
IPO史上最大の218億ドル(2.18兆円)の資金調達が行われた。
公開価格68ドル 初日93.89ドル 138%
時価総額(株価×発行株数)で2314億ドル(23兆1,400億円@100円換算)の保有資産価値が生まれた。
http://finance.yahoo.com/q?s=BABAMarket Cap
この上場によって、株の保有者の資産価値は大きく変わった。
時価総額換算で 2314億ドル(23兆1,400億円)
- 34.4% ソフトバンク 7兆7,287億円
- 22.6% 米ヤフー 5兆2,296億円
- 8.9% ジャック・マー(創業者&会長)2兆0,594億円
- 3.6% ジェセフ・ツァイ(副社長)8,30億円
- 30.5% その他 7兆0,577億円
14年前の2000年、2,000万ドル(20億円)をアリババに投資したソフトバンクの孫正義氏(しかも話はたったの5分だ)は、1万1,570倍もの投資効果を得た。10倍程度の投資は数多くあるが、1万倍という投資はソフトバンクとしても快挙といえる。しかもその株を米yahooの時のように売却することなく(その売却益などをレバレッジにしてボーダフォンジャパンを買収し通信キャリアに参入)長期保有し、ソフトバンクグループとしてのシナジーを作る考えだ。
約8兆円に及ぶ含み益は、ソフトバンクの財務の信頼を世界に高めたといえる。
いや、実質的には最大のマジョリティとしての株保有なので、アリババ・グループ=ソフトバンクという見方をしてもいいのかもしれない。アリババのジャック・マーは2007年よりソフトバンク取締役でもあるからだ。
ソフトバンクグループの潜在リスクを変えたアリババ
ソフトバンクが、世界市場を見ていることは誰の目にもあきらかだ。米国3位のスプリントの買収、そして米国4位の携帯会社、Tモバイル買収をFCC(米連邦通信委員会)の許可がおりず断念に至るまで。米国携帯キャリアのAT&T、ベライゾンへの対抗策は、現在、白紙に戻った状態だ。しかし、国内の携帯市場においても、音声通信よりもデータ通信が主となり、限られた電波帯域での、大量のデータ通信時代へと変化した。音声話し放題のプランで喜ぶ人はもはや多くない。また、膨大なアンテナの設備投資が必要なだけでなく、iPhoneなどの独占販売もなくなった。さらに、2015年からの総務省主導によるSIMロック解除も、携帯のハードと通信キャリアの選択は自由となり、魅力ある端末での2年縛りでのビジネスモデルには暗雲が立ち込める。あとは、電気通信における土管屋に徹するしかない。
実際にiPhone5Sから5Sへ乗り換えるだけで、毎日1万円弱のセドリができてしまうというMNPの獲得キャンペーンコストもバカにならない。
そんな状況において、ソフトバンクが、34.4% (7兆7,287億円)を所有するアリババ・グループは、成長いちじるしい中国から世界へ向けてECの世界で大きく羽ばたいた。ソフトバンクが得意なインターネットビジネスにおけるタイムマシン戦略の「アメリカ→日本」が、「日本→中国」モデルがアリババの成長の起爆剤となりえる。つまり、ソフトバンクにとって、アリババは第2のヤフーなのだ。
アリババは、ポルトガルのGDPを抜いた!
時価総額はある意味、市場が決める企業の単なる価値ではあるが、アリババの2314億ドル(23兆1,400億円)という価値を比較してみるとその規模の大きさが理解できる。そして、その価値のレバレッジで何が起こせるからだ。
ポルトガル(GDP48位)の2013年におけるGDP(約2200億ドル、約22兆円)を抜いているのである。
むしろ、脅威的なのが、
- 中国のGDP9.24兆ドル(924兆円)2013年度の2.49%を占める
- 日本のGDP4,9兆ドル(490兆円)2013年度で考えると4.69%を占める
- アメリカのGDP16.8兆ドル(1,680兆円)でも、1.36%を占める
ということだ。
中国のGDP成長率のは、日本から垂涎の市場だ。潤沢すぎる人口がなしえる市場だ。アリババユーザーは3億200万人いるが、中国人口の13億人のうち、あと眠れる10億人がいるのだ。流通網が発達すれば、日本の宅配便のようなサービスが中国全土で世界の商品を扱うとなると、それらの人が、きっと起きだすことだろう。
アリババの価値を日本の市場規模で考えると、2013年の外食産業全体が、23兆9046億円なので、それに近い。世界的なアリババの価値がとてつもないことがわかる。
年率32%の成長率で80%シェア アリババが次に展開すること?
中国のBtoB向け市場で圧倒的な、シェアを誇るアリババ・グループ。コンサルティング会社ユーロモニターのデータによると、アリババは、企業と消費者間のオンライン取引サイト「天猫(Tモール)」の売上高で市場全体の約50%、消費者同士が取引するサイト「淘宝網(タオバオ)」の売上高では市場全体の約80%を占める。
中国のオンライン小売市場は2015年まで米国の2倍以上となる年率32%のペースで拡大すると予想している。
さらにアリババは、アリペイ「支付宝(Alipay)」というタオバオでのエスクローを兼ねたオンライン決済に利子を漬けるサービスを2013年に展開し、10兆円規模の「預金」も集めた。
さらに、ジャック・マーとアリババは、中国智能物流骨幹網(CSN)を作り「発注から24時間以内に中国国内の消費者のもとに1日あたり1億個以上の荷物を配送できる体制を整える」という。まるで、日本のヤマトの宅急便のタイムマシン戦略だ。
中国の全消費に対するECの占める割合は、わずか8%だ。92%の市場が口を空けて眠っているのだ。
アリババの抱える地政学的リスク
学生時代に20万人の学生運動を率いたジャック・マー。
中国ビジネスでは、常に共産主義における地政学的リスクを念頭においておく必要がある。
習近平国家主席や江沢民・元主席ら中国共産党最高指導部の親族など太子党(高級幹部子弟)の存在が気になる。
むしろ、中国における太子党のエクイティファンドなどの隆盛が、国家(中央集権)と企業(市場原理)の関係に大きな齟齬を生む可能生はでてくる。成長する中国と、貧富の差。
マルクス・レーニン主義の共産党の思想との乖離も見られることだろう。共産主義と市場主義の乖離だ。
もしかすると、資本主義社会から見たアリババと、共産側主義側から見たアリババは意外と違うのかもしれない。しかし、IPOした以上それらのことはSECへの報告書で90日ごとに明らかになる。中国のマーケットが世界に見られる現象を中国がよしとするかどうかは、今後の展開次第だ。
アリババは、本当に、中国に対して、「開けゴマ!」を唱えてしまったのかもしれない。それが、革命家のジャック・マーの本当の狙いだとボクは思う。