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カジノ解禁は打ち出の小槌になるのか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

いよいよ、日本でもカジノが解禁に向けて大詰め段階に入ってきている。

カジノ、加速する解禁への動き 莫大な経済効果期待と、注視すべき重要項目を検証

世界最大のカジノは、マカオのカジノである。その数、約33軒で、売上は、235億ドル(2010年)約2兆3500億円。

マカオのカジノは、ラスベガスのカジノ58億ドル(2010年)約5800億円の約5倍の市場ボリュームを誇る。

一方、我が日本国内のパチンコ市場(12,000店舗)は、約20兆円市場(2012年18兆8960億円)で、マカオの約10倍、なんとラスベガスの50倍の市場を持っている。

かつて1995年のピークには18,000店舗で約30兆円あった産業だ。なお、日本人は、20年間で540兆円もパチンコに費やしてきていたといわれる。

それは、2011年度の国家予算(92兆円)の約6倍、名目GDP(479兆円)を凌駕するという。「パチンコに日本人は20年で540兆円使った

そして、さらに驚愕なのは、パチンコは、日本の余暇市場全体(レジャー白書2012年)の29%(64兆9500億円)を占めていることだ。

国民のレジャーの3割もある市場に、さらにカジノが本当に必要なのだろうか?

ただ、カジノの場合の売上は、粗利であり、パチンコのそれは、貸玉料金売上の計算なので、約85%(粗利を約15%)で補正すると、パチンコの粗利は約2兆8344億円(約3兆円)ということになる。

つまり、マカオのカジノ33軒で、日本のパチンコ16,000店舗分とほぼ同等に稼いでいることとなる。

それを考えると、マカオのカジノクラスであれば、一軒で、日本のパチンコホールの約500ホール分のシノギが上がる計算となる。

当然、カジノとなれば、日本のパチンコ台やパチスロ台とはちがった、ルーレットやカード、スロットマシン、バカラなどが登場することだろう。

また、それに合わせた、オトナのためのエンターテインメントという要素、ショウ等の展開などが考えられる。

新たな劇場を伴うようなホテル&カジノの建設も必要となることだろう。

本格的なカジノの参入は、日本の新たなコンテンツ産業やエンタメ産業の育成という側面に大きく影響を与えるのかも知れない。

しかし、その半面、期待どおりの売上=税収が得られるかどうかはとても未知数だ。パチンコでさえ、この20年で10兆円も売上を落としている産業である。コンプガチャと呼ばれたケータイゲームもピークに達しており、新たなビジネスモデルで折り返しているほどである。

カジノで上がる収益に、税収を依存するだけではなく、カジノそのものを可能な限り、健全な市場にする努力が必要である。当然、カジノ依存者、中毒者を生み出さないような仕掛けを考えなければならない。

そのためには、どんな手法があるのだろうか?

ある意味、パチンコや他の公営ギャンブルを日常として捉えると、カジノには、非日常的な空間にするほうが良いと考える。

カジノでは、正装、お洒落をしていくようなドレスコードを保つなど、非日常空間を楽しめる場にしてはどうだろうか?

最低の掛け金も高めに設定することによって、生活弱者が最初の段階で参入する障壁を作り、負担をかけさせない縛りをつくることも必要だろう。

日本でドレスコードがあるのは、冠婚葬祭だけだが、それ以外にショウを見たり、ギャンブルをしたり、社交化することが、非日常な場として定着すると、社会的に射幸心だけを煽らない、はじめての本格的なオトナの遊びの場となるのかもしれない。

その前に、政治家の先生たちが、法案だけ作るのではなく、自分たちも通いたくなるようなカジノにしなければならないだろう。

賭け事をしない人が、賭け事をする人だけに、税金を負担させようという魂胆だけでは、何かを得ることは相当難しいだろう。

民間人の感覚ならば、自分が行かない店を作ることは絶対にしないからだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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