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「今回の改革は、スラムダンクの山王戦」千葉商科大学が教員の43%を異動させる大規模な組織再編

亀松太郎記者/編集者
大学改組について発表した千葉商科大学の理事や教職員たち(撮影・亀松太郎)

千葉県市川市にある千葉商科大学は8月2日、東京都内で記者会見を開き、2025年から1学部を減らして「4学部6学科」とする組織再編をおこなうと発表した。これに伴い、専任教員153人の43%が他の学部などに移る大規模な人事異動を実施する。同大学は「6000人規模の大学としては、類を見ない規模」としている。

「社会に必要な大学でないと生き残れない」

千葉商科大学は1928年創立の私立大学。社会に役立つ実学教育のため、商経学部やサービス創造学部など5学部7学科を設けている。しかし、若者人口の減少や学生ニーズの多様化といった環境の変化に対応するため、4学部6学科への改組を実施することにした。

具体的には、国際教養学部をなくして、全学部でグローバル教育を展開する。また、商経学部経済学科と政策情報学部をもとに、新たに総合政策学部(構想中)を設置する計画だ。カリキュラムも全般的に見直し、個々の学生の学習ニーズに合わせた多様で柔軟な教育プログラムを提供するという。

改革の理由について、同大学を運営する千葉学園の内田茂男理事長は記者会見で、「18歳人口がこの20年で30%近く減っていく中で、社会に絶対に必要な大学にならなければ生き残れない」と語った。

将来推計によると18歳人口は減少傾向が続き、2050年には81万人にまで減るとみられている(図解作成・亀松太郎)
将来推計によると18歳人口は減少傾向が続き、2050年には81万人にまで減るとみられている(図解作成・亀松太郎)

「片手で握手をして片手で殴り合う」ほどの真剣な議論

今回の学部再編にあたって、千葉商科大学(CUC)では若手・中堅の教職員を集めた「CUC未来会議」を2022年に計11回開催し、将来の大学のあるべき姿を議論した。「大人が本気で、大学や学生や自分たちの未来のことを考える場になった」(今井重男副学長)

「教員や職員、学部や専門分野の枠を超えて、毎週、真剣な議論をした。スリリングな議論もあって、片手で握手をして片手で殴り合うような場面もあった」

そう振り返るのは、未来会議に参加した常見陽平准教授だ。

内田理事長が述べたように、少子化の影響で、大学をめぐる環境は年々厳しくなっている。「大変な環境の中で、負けられない闘いに直面している」。そんな教職員たちの思いを、常見准教授は人気漫画の伝説的な試合になぞらえて、こう表現した。

「今回の改革は、私たちにとって、スラムダンク風にいうと山王戦だ」

千葉商科大学の常見陽平准教授。今回の大学改組は、経営改革本部によるトップダウンの提案と若手・中堅の教職員によるボトムアップの議論がうまく融合しているという。(撮影・亀松太郎)
千葉商科大学の常見陽平准教授。今回の大学改組は、経営改革本部によるトップダウンの提案と若手・中堅の教職員によるボトムアップの議論がうまく融合しているという。(撮影・亀松太郎)

記者/編集者

大卒後、朝日新聞記者になるが、3年で退社。法律事務所リサーチャーやJ-CASTニュース記者などを経て、ニコニコ動画のドワンゴへ。ニコニコニュース編集長としてニュースサイトや報道・言論番組を制作した。その後、弁護士ドットコムニュースの編集長として、時事的な話題を法律的な切り口で紹介するニュースコンテンツを制作。さらに、朝日新聞のウェブメディア「DANRO」の創刊編集長を務めた後、同社からメディアを引き取って再び編集長となる。2019年4月〜23年3月、関西大学の特任教授(ネットジャーナリズム論)を担当。現在はフリーランスの記者/編集者として活動しつつ、「あしたメディア研究会」を運営している。

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