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【アイスホッケー】ロシア人最高の選手のお手本はクリスティアーノ・ロナウド! でもプレーじゃなくて…

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
ロシア人最高の選手に輝いた男が、お手本にするクリスティアーノ・ロナウド(写真:ロイター/アフロ)

 ダラスで行われた「ドラフト」を終えたNHLをはじめ、各国のアイスホッケー界は、(南半球などの一部を除いて)今月末をもってシーズン終了。

 来月1日から新たなシーズンに入ります。

▼ロシア人最高の選手が決定!

 シーズン終了を前に、ロシアのスポーツメディアが、毎年恒例となっているロシア人選手トップ50を発表しました。

 今季最高の選手に輝いたのは、NHLのチャンピオンになった ワシントン キャピタルズで、トップCF(センターフォワード)の役割を担った エフゲニ・クズネツォフ(FW・26歳)!

ロシア人最高選手に輝いたワシントンキャピタルズのエフゲニ・クズネツォフ(Courtesy:@PR_NHL)
ロシア人最高選手に輝いたワシントンキャピタルズのエフゲニ・クズネツォフ(Courtesy:@PR_NHL)

▼NHLとオリンピックのMVPを抑えて受賞

 クズネツォフはチャンピオンを決める「スタンレーカップ ファイナル」での活躍が際立ちました。

【筆者より】NHLのプレーオフは16チームで争われ、7回戦制4勝勝ち抜け方式のラウンドを4つ戦って優勝チームを決定。スタンレーカップ ファイナルは、東西両カンファレンスを勝ち上がって来たチーム同士による優勝決定シリーズ。

 コンスマイス トロフィー(プレーオフMVP)のメディア投票では、同じロシア人FWでキャプテンのアレックス・オベチキン(FW・32歳)に、わずかに及ばず次点。

 しかし、祖国のスポーツメディアからは高い評価を得て、前述のオベチキンや、ピョンチャン(平昌) オリンピックのMVPに選ばれた イリヤ・コバルチャク(FW・35歳/スカ サンクトペテルブルグ)らを抑えて、ロシア人最高選手の名誉を手にしました。

▼群を抜くスキルの高さが魅力

 クズネツォフの最大の魅力は、群を抜くスキルの高さ!

 CFを担うことから、得点を演出する精度の高いアシストパスはもちろん、卓越した個人技とスピードを活かして、一人で相手ゴールに攻め込んだり、時にはアッと驚くトリッキーなシュートを放つなど、相手チームの脅威に!(背番号92の選手)

 2010年のドラフトで1巡目(全体26番目)指名されたのも、納得の(というより、もっと前の指名でも不思議ではない!?)評価と言えるでしょう。

▼ゴールを決めたあとのパフォーマンスが人気に

 さらに加えて、クズネツォフの魅力は、ゴールを決めたあとのパフォーマンス。

 くしくも今月14日(現地時間)から、サッカーのワールドカップが行われていますが、一昨季に12年ぶり(3回目)となるアイスホッケーのワールドカップが開催された際、クズネツォフはロシア代表のメンバーとして出場。

 試合でゴールを決めたあとに、このような↓パフォーマンスを披露したのです!

▼お手本はロナウドだけど・・・

 初めて披露したパフォーマンスについて、試合後にメディアから問われたクズネツォフは、「(サッカーワールドカップ ポルトガル代表のクリスティアーノ・)ロナウドの真似をしてみたんだ」と、おどけた表情で種明かし。

 しかし、クズネツォフの話にはオチがあり、「でも、実際に(ロナウドの)プレーを見たのではなくて、ボクはゲーマー(ゲーム好き)だから、テレビゲームに出てくるロナウドのパフォーマンスをお手本にして、真似してみようと思ったんだよ」と、苦笑いしながら真相を打ち明けました。

▼アイスホッケーへの想いは人一倍!

 このようなエピソードを紹介すると、愉快な男だと思われるかもしれませんが、異なる一面も持ち合わせています。

 小さい頃に兄が亡くなってから、「いつアイスホッケーができなくなってしまうか誰にも分からない。だから真剣に練習やプレーに取り組まないといけない」と口にし続けているとおり、アイスホッケーへの想いは人一倍!

 さらに、19歳になる前日にワシントンからドラフト1巡目指名を受けると、まず真っ先に英語をマスターしないとダメだと、ドラフトの翌年に結婚した奥さまを相手に、必死になって英語の習得に努めるなど、アイスホッケーに対しては真摯な態度で向かい続けています。

▼真面目すぎないMVP

 とはいえ、真面目すぎないのも、クズネツォフの良いところ(!?)

 タンパベイ ライトニングとのカンファレンス ファイナルで、王手を掛けられた上に敵地での試合を迎える前、「何かを変えなければならないとしたら、最も大事なことは何だと思う?」との質問に、クズネツォフは、こう答えてメディアの笑いを誘いました。

「(試合中に噛んでいる)ガムを、ミントから風船ガムにすることかな」

 負ければシーズン終了になる大事な試合の前に、こんなジョークが飛び出すのが、クズネツォフの魅力。

 氷上でも ”遊び心” が垣間見られ、スタンドのファンをワクワクさせてくれるプレーヤーで、こんな表情を作って自らのゴールを祝うシーンも。

これがクズネツォフの「どや顔」!? (Courtesy@ThatSophiaD)
これがクズネツォフの「どや顔」!? (Courtesy@ThatSophiaD)

 「来年の話をすると鬼が笑う」という言葉がありますが、10月3日に開幕する来季のNHLで、あなたもワクワクさせてくれるプレーヤーを探してみては、いかがでしょうか?

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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