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【NHL】今夜ファイナル開幕!全体1位指名のエリートvs一度きりのチャンスをつかみ取った93番目の男

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
フルーリー(左)とホルトビー(Courtesy:@StarsNationDAL)

 NHLのチャンピオンを決める「スタンレーカップ・ファイナル(SCF)」が、今夜(現地時間)から始まります。

 東西のカンファレンスを制したチームによる今季の ”頂上決戦” の顔合わせは、

ベガス ゴールデンナイツ(ウエスタン) vs ワシントン キャピタルズ(イースタン)

 これまでに行われた3つのラウンドと同様に、SCFもベスト・オブ・セブン(7回戦制4勝先勝方式)で争われます。

▼ラスベガスでの試合が行方を占う!?

 今季のSCFは、レギュラーシーズンのポイント(勝点)で上回るベガスが、第1戦と第2戦に加え、もつれた際は第5戦と第7戦を、ホームアリーナで戦うことができることから、ラスベガスのT-モバイルアリーナでスタートします。

 最大4試合をホームアリーナで戦えるベガスは、プレーオフに入ってからのホームゲームで「6勝1敗」(ロードでは6勝2敗)

 レギュラーシーズンの「29勝12敗(2敗は延長戦以降の敗戦)」を上回り、プレーオフに進んだ16チームの中で、最も高いホームゲームでの勝率を残したことが、チーム創設初年度での快進撃につながったと言えます。

 対するワシントンは、今季のプレーオフで、ロードゲームに強く「8勝2敗」(ホームでは4勝5敗)

 カンファレンス ファイナル(=3rdラウンド)でも、タンパベイ ライトニングに王手を掛けられながら、第6戦で勝利して敵地に乗り込み、第7戦も勝利! 

 ロードゲームでの強さを原動力に、20季ぶりのSCF進出を決めたとあって、今季の頂上決戦は、

「ラスベガスでの試合の勝敗が、スタンレーカップの行方を占う」

ことになるかもしれません。

▼高いオフェンス力を誇る選手がズラリ

 さらに、両チームのFWの顔ぶれを見ると、、、

 ワシントンには、歴代最多タイとなる7度目のモーリスリシャード トロフィー(最多得点賞)に輝いた アレックス・オベチキン(32歳)を筆頭に、同じくロシア出身の エフゲニ・クズネツォフ(26歳)と、故障が癒えて戦列に戻ってきた ニクラス・バックストローム(30歳)という、高いオフェンス力を誇る選手がズラリ!

 

 一方のベガスにも、移籍を機に開花した ウィリアム・カールソン(25歳)や、プレーメイクにも長けた ジョナサン・マシソゥ(27歳)に、記念すべきベガスの公式戦初得点を記録した ジェイムス・ニール(30歳)など、こちらも高いオフェンス力を誇る選手が揃っています。

 

 それだけに今季のSCFは、最後の砦を託される

「両チームの守護神が勝敗のカギを握る」

と言えそうです! 

▼ベガスの守護神・フルーリー

 ベガスの守護神を担うのは、マークアンドレ・フルーリー(33歳)

マークアンドレ・フルーリー(Courtesy:@GoldenKnights)
マークアンドレ・フルーリー(Courtesy:@GoldenKnights)

 上の写真をご覧になって、思い出された方もいらっしゃるでしょうが、ベガスが新たにNHLへ参戦するのに際し、昨年6月に行われた「エクスパンション ドラフト」で指名されたGKです。

▼全体1位指名のエリートGK

 カナダのジュニア(U20)代表の正GKを務めるなどして注目を集めていたフルーリーは、2003年のドラフトで、史上二人目となるGKの全体1位指名を受け、ピッツバーグ ペンギンズと契約。

 当時のピッツバーグは低迷が続いていたのが幸いし、フルーリーは18歳ながらメインGKに抜擢され、開幕戦からゴールを守り続けました。

 その後、プレーのレベルや体力不足を考慮され、マイナーリーグ(AHL=NHLの一つ下のリーグに相当)に降格した時期もありましたが、(NHLの労使交渉が決裂しシーズンキャンセルとなった年を挟んで)3季目からはピッツバーグのメインGKに定着した「エリートGK」です。

▼”スタンレーカップセーブ”で17季ぶりの優勝!

 そんなフルーリーの名を知らしめたのは、2009年のSCF。

 前年のSCFで敗れたデトロイト レッドウィングスとのリターンマッチは、勝ったチームが王座に輝く第7戦までもつれ、ピッツバーグが1点をリードして迎えた試合終了直前!

 フルーリーが文字どおりの”スタンレーカップセーブ”を披露(白#29)。ピッツバーグを17季ぶりの優勝へ導いたのです!!

 その後、10歳年下のGKマット・マリーの台頭と、サラリーキャップ(チーム総年俸上限)との兼ね合いから、ピッツバーグは戦力外にしましたが、フルーリーは新天地のチームメイトからも一目を置かれる存在です。

▼叩き上げの守護神

 エリートGKのフルーリーと対照的に、ワシントンのゴールを守る ブレイデン・ホルトビー(28歳)は、「叩き上げの守護神」と呼ぶのがピッタリなキャリアの持ち主。

 フルーリーと違って、ドラフト指名は全体93位(2008年4巡目)だったことが示すように、ジュニア時代もU18代表に一度。それも控えのGKとして選ばれただけ。

 プロデビューを飾った年には、フルーリーが経験することのなかったECHL(=NHLの二つ下のリーグに相当)でもプレーをしていました。

▼急きょ出場機会が巡って来た

 その後、キャリアを積み重ね、ようやくワシントンのバックアップ(ベンチ入り可能な控えGK)のポジションまで上がってきた2012年の春。ホルトビーの前に千載一遇のチャンスが訪れます。

 メインGKを務めていたマイケル・ノイバー(現フィラデルフィア フライヤーズ・30歳)が、相手選手との接触により負傷退場。

 急きょホルトビーに出場機会が巡って来たのです。

▼一度きりのチャンスをつかみ取ったホルトビー

 試合開始の約40分前に氷上でのウォームアップタイムがあったとはいえ、試合が始まってからはベンチの中にいなければならず、ホルトビーの体が冷えきってしまっているのは明らか。

 しかし、テレビの生中継がある上、18000人の観客を待たせることなど許されません。

 そのため、ウォームアップの時間を与えてくれないのはもちろん、この試合はワシントンにとって、勝てばプレーオフ進出に望みがつながる反面、負ければレギュラーシーズン敗退が決まってしまうという、掛け値なしの大一番!

 突如大舞台に立つことになったホルトビーでしたが、反撃をしのいでリードを守りきり、ワシントンはプレーオフ行きのチケットを勝ち取ったのです!!

 この試合での活躍を認められ、ホルトビーはプレーオフでも先発マスクを託され、好セーブを連発。

 ワシントンのメインGKの座を勝ち取ったのはもちろん、一昨季にはNHL史上最多タイ記録となる「シーズン48勝」をマーク。近年はオールスターゲームの常連となるほどの存在になりました。

 今にして思えば、ホルトビーがつかみとったのは、彼のホッケーキャリアの中で、間違いなく「一度きり」のチャンスだったに違いないはずです。

▼座右の銘は「改善」

 ところが、今季のホルトビーは本調子には程遠い出来の試合が目立ち、途中交代を命ぜられることも・・・。

 そのためカンファレンス クォーターファイナル(1stラウンド)では、コロンバス ブルージャケッツとの第1戦、第2戦とも、2つ年下のフィリップ・グルバウワー(26歳)が先発に起用され、NHL記録を持つ守護神は、バックアップに甘んじていました。

 しかし、続く第3戦から先発に戻ったホルトビーは、攻撃力の高い選手が揃うコロンバス、ピッツバーグ、さらにタンパベイを相手にゴールを死守! 20年ぶりのSCF進出の立役者の一人となりました。

 そんなホルトビーの座右の銘は「改善」

 ホルトビー自身が「Improve」と話していたように、言葉の意味を分かった上で、AHLでプレーしていた頃から、毎年ゴーリーマスクのデザインは変わっても、ゴーリーマスクの後ろに「改善」の二文字を必ず記しています。

ホルトビーの座右の銘は「改善」 (Photo:Jiro Kato)
ホルトビーの座右の銘は「改善」 (Photo:Jiro Kato)

 本来の出来には程遠かったレギュラーシーズンのプレーからの「改善」を狙うホルトビーが、高いオフェンス力を誇るべガスの前に立ちはだかります。

 

 いよいよ始まるNHLの頂上決戦。

 全体1位指名のエリートと、一度きりのチャンスをつかみ取った93番目の男。

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フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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