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【NHL】NBAにはなくてもNHLではファイナルで3連敗から4連勝した”ミラクルチーム”が存在する!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
ワシントンキャピタルズが第4戦を終えて3勝1敗。初優勝に王手!(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 NHLのチャンピオンを決める「スタンレーカップ・ファイナル(SCF)」は、ワシントンD.C.での第4戦を終えて、ワシントン キャピタルズが対戦成績を3勝1敗として、初優勝に王手を掛けました!

▼勝率9割7分

 今季で101季目(ロックアウトによるシーズンキャンセルの年を含む)となるNHLは、プレーオフのSCFを、1939年(1938-39シーズン)からベスト・オブ・セブン(7回戦制)で開催しています。

 このフォーマットになってから昨季までの間に、第4戦を戦い終えた時点で「3勝1敗」として、優勝に王手を掛けたのべ33チームの最終結果は、「32チームが優勝」

 勝率にすると、実に「9割7分」 という高い確率で、スタンレーカップを手にしているとあって、ワシントンファンの期待は、早くも高まっているに違いありません。

▼唯一のチームはトロントメイプルリーフス

 逆にベガスのファンの方は、第4戦までに王手を掛けられながら、逆転優勝を果たした唯一のチームが気になるのでは?

 驚異的な底力を見せつけた唯一のチームは、1942年のトロント メイプルリーフスです!

 この年のトロントは、デトロイト レッドウィングスとのSCFに臨み、第1戦が2-3。第2戦は2-4。敵地に移って行われた第3戦も2-5のスコアで3連敗。

 1勝3敗で第5戦を迎えるベガスを上回り(下回り?)、いいところなく0勝3敗と追い詰められてしまいました。

 王手を掛けられた上に、第3戦に続いて敵地での戦いとなった第4戦も、デトロイトに2点を先制されてしまいますが、ここで奮起したのが、 ボブ・デビッドソン(FW・当時30歳)でした。

▼思わぬ男のゴール

 のちにキャプテンも務め、引退後はスカウトに転じたデビッドソンは、決して得点力に長けた選手ではありません。

 この年のプレーオフを振り返っても、SCF第4戦のゴールが10試合目にして初得点。

 レギュラーシーズンでも、アシストこそチーム内で4番目に多かったものの(37試合出場20アシスト)、得点は「6」

 試合に出場したトロントのプレーヤー(FWとDF)18人の中で比べても、ゴール数は10番目。

 まさに”思わぬ男のゴール”が飛び出して、1点差に詰め寄ったトロントは、その後の接戦を制して4戦目にして初めて白星(4-3)を手にしました。

▼流れを変えた男

 さらに、トロントへ戻って行われた第5戦は、攻撃陣が噛み合って9-3。

 続く第6戦は完封勝利(3-0)。そして、天下分け目の第7戦を3-1のスコアで勝利して、3連敗のあとから4連勝!

 3連敗を喫して迎えた後のない試合で、2点を先制されたあとに飛び出したデビッドソンの第4戦のゴールが、文字どおり「シリーズの流れ」と、「スタンレーカップの行方」を変えたのです!!

▼真のキーマンはFWではない!?

 NHLの長い歴史の中で唯一の大逆転劇とは言え、「76年前のトロントに続け!」との声が、ベガスのファンから聞こえてきそう。

 レギュラーシーズンでは、ウエスタン カンファレス(15チーム所属)で2位の得点力を誇ったベガスだけに、デビッドソンにも増して、攻撃力の高いFWが揃っています。

 しかし、真のキーマンとなりそうな選手は、GKのマーク アンドレ・フルーリー(33歳)です!

真のキーマンとなりそうなマーク アンドレ・フルーリー(Courtesy:@GoldenKnights)
真のキーマンとなりそうなマーク アンドレ・フルーリー(Courtesy:@GoldenKnights)

 フルーリーは、史上二人目となるGKのドラフト全体1位指名を受けて、18歳でメインGKの役割を与えられた、文字どおりの”エリートGK”

 昨季まで在籍していたピッツバーグ ペンギンズでも、3度の優勝経験を誇る一方で、、、

「プレーオフで1勝3敗となったシリーズを、これまでに4度経験しているものの、全て敗退している」

というベガスのファンには、ありがたくないデータが!

 果たして、土俵際から3連勝して、ベガスはミラクルを起こせるか!?

 それとも、またまた巻き返すことができずに、ワシントンの前に敗れ去るのか !?

 第5戦は、今夜(現地時間)再びラスベガスに舞台を戻して行われます。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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