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【平昌オリンピック】12年ぶりの金メダルを狙うスウェーデンの秘密兵器は17歳のディフェンスマン

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
17歳のラスムス・ダリン(Courtesy:@GareJoyceNHL)

 韓国で初めての冬季大会となるピョンチャン(平昌)オリンピック

 来月9日の開幕が近づいているにもかかわらず、依然として入場券の販売不振のニュースが伝わってきますが、その大きな要因は、男子アイスホッケーに現役NHL選手が出場できないことが挙げられます。

▼6大会ぶりに現役NHL選手が「ゼロ」

 冬季オリンピックでは、常に最後の金メダルを懸けて決勝戦が行われてきた”花形種目”ながら、(オリンピックのアイスホッケー競技を統括する)国際アイスホッケー連盟と、レギュラーシーズンの中断を強いられるNHLとの交渉が合意に至らず・・・。

 独自での収益アップを目指すNHLは、ワールドカップの再開とともに、オリンピック開催期間に合わせてレギュラーシーズンを中断していた「オリンピックブレイクをスケジュールに組み込まない」ことを、昨年4月に発表。

 これによってピョンチャンオリンピックは、1994年(リレハンメルオリンピック)以来、6大会ぶりに現役NHL選手が「ゼロ」の中で開催されます。

▼KHLのスター選手がピョンチャンへ

 NHLとは対照的に、ヨーロッパの主要なトップリーグでは、従来どおりオリンピックブレイクを設けていることから、ピョンチャンオリンピックのメンバーが多く選出されています。

 なかでもNHLに次ぐ規模を誇り、ロシアをはじめ8か国のチームが参加するヨーロッパ屈指のビッグリーグ KHL(コンチネンタルホッケーリーグ)のチームからは、チェコ15人(補欠選手も含んだ正式発表時点/1試合につき最大22選手出場可能)

 これまでNHLのスーパースターが顔を並べていたカナダでさえ「13人」もの現役KHLプレーヤーを揃えて、ピョンチャンへ乗り込みます。

▼スウェーデンが代表メンバーを発表

 昨季の世界選手権で世界一に輝いたスウェーデンも、ピョンチャンオリンピックの代表メンバーを、昨日(現地時間)発表しました

 スウェーデンの顔ぶれの中にも、現役KHLプレーヤーが「10人」含まれていますが、なかでも注目されるのが、パトリック・ハースリー(#6/スカサンクトペテルブルグ所属 DF・31歳)と、ライナス・オマーク(#67/サラバトユーレェイフ所属 FW・30歳)の両選手。

▼ゴールネットを突き破るシュートを放つ男

 ハースリーの魅力は、強力なスラップシュート。

 オールスターゲームの前に行われたシュートスピードコンテストでは、165.98キロ(103.1マイル)のスピードを記録して優勝。

 昨季のプレーオフでは、ゴールネットを突き破るシュートを放つなど、相手チームの脅威の的になっているDFです。

 ”パワー”のハートリーに対して、オマークは”スキル”に長けた選手。

 NHL(エドモントンオイラーズ)でプレーをしていた時には、不要な(?)スキルを披露するシーンも・・・。

 このようなプレーが要因となって、マイナーリーグに降格を命じられたこともありましたが、スキルの高さは誰もが認めるところ。

 オールスターゲームでも、スタンドを大いに沸かせました。  

▼17歳のDFがオリンピックへ!

 ハートリーやオマークのような実績のある選手とは対照的に、スウェーデンは17歳の選手も代表メンバーに選びました。

 ラスムス・ダリン(#26/フロルンダ所属 DF)です。

ラスムス・ダリン(Courtesy:@frolunda_hc)
ラスムス・ダリン(Courtesy:@frolunda_hc)

▼今年のNHLドラフト1位最有力候補

 2000年4月13日生まれ17歳であるにもかかわらず、今季からスウェーデンのトップリーグでプレーているダリンは、先月末から年頭にかけて行われた「U20世界選手権」にも主力として出場しましたが、目を引くのは何と言っても卓越したスキルとスピード。(黄#8)

 身長189センチのサイズも武器とあって、上の動画の最後のシーンにもあるように、力負けしないパワーもダリンの魅力の一つ。

 さらに加えて、パックをキープして自ら攻めていく能力にも長けているだけに、DFながら攻撃の核としての働きも担う存在(青#26)に。

 トリノオリンピック以来、12年ぶりの金メダルを狙うスウェーデンのファンはもちろん、6月にダラスで行われるNHLドラフトで、「全体1位指名最有力候補」との呼び声が高い選手なので、日本のスポーツファンの方も必見の選手だと言えそうです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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