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【NHL】ピョンチャンオリンピックへの現役選手出場を認めず! コミッショナーが最終決断!!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
ソチ五輪で金メダルを獲得したカナダのキャプテン シドニー・クロスビー(写真:ロイター/アフロ)

NHLのゲーリー・ベットマン コミッショナーは、開幕まで 300日あまりに迫ったピョンチャン(平昌)オリンピックの開催期間に合わせてレギュラーシーズンを中断する「オリンピックブレイク」を、来季のスケジュールに組み込まないと、昨日(現地時間)正式に発表

これによって、所属チームとの契約がある選手たちは、オリンピックへ出場できず、

「1998年の長野オリンピックを皮切りに、5大会続いて出場していたNHLのスター選手たちのプレーを、ピョンチャンで見ることができなくなりました!」

▼ワールドカップ復活を機に、独自路線へ舵を切る

これまでの経緯を振り返ると、オリンピックのアイスホッケー競技を統括する国際アイスホッケー連盟(IIHF)との交渉で、NHLがアドバンテージを強めたのが、「ワールドカップ」の再開でした。

出身国ごとのチーム対抗を改め、独自色を打ち出して12年ぶりに開催した大会が、収益面で成功に終わったことから、ベッドマン コミッショナーは、ゴルフのライダーカップを模したカップ戦の新設を検討するなど、独自路線へ舵を切り、さらなる収益力アップを目ろんでいます。

▼ピョンチャンへのNHL選手出場は絶望的に

対して IIHF は、冬季オリンピックで最後の金メダルを争う “花形競技” の男子アイスホッケーに、NHLのスター選手が出場しないとあっては魅力も半減。さらに収益面でも少なからず影響を及ぼすだけに、交渉を続けてきましたが不調に。

国際オリンピック委員会も、IIHFを通じて長野大会以降負担してきた「NHL選手が参加する際の保険代や移動の経費負担を、今後は行わない」と昨年4月に公言

このように、NHL、IIHFの双方とも譲らず決別し、ピョンチャン オリンピックへのNHL選手出場は絶望的だと、各国のメディアが報じました。

▼スター選手たちの声が流れを変えた

この流れを変えたのが、NHLのスター選手たちの声でした。

ロシア出身のアレックス・オベチキン(ワシントン キャピタルズ)や、スロバキア生まれのズデノ・チャラ(ボストン ブルーインズ)といったヨーロピアンに限らず、カナダで育ったジョナサン ・テイズ(シカゴ ブラックホークス)ら、各チームのキャプテンをはじめ、多くの選手が「オリンピックに出たい!」と公言。

ファンからの賛同の声も大きかったためにNHLも看過できず、当初は昨春頃までには最終決定を下すと報じられていたにもかかわらず、「来季のNHLのスケジュール作成にとりかかる11月から12月がタイムリミット」と、交渉の窓口を閉ざしませんでした。

▼オリンピックブレイク撤廃

しかしながら、その後も両者の交渉は、「11月から12月」というタイムリミットを過ぎても続きましたが、先月開催されたNHL各チームの代表者会議で、「来季のスケジュール作成は、オリンピックブレイクを組み入れない形で進めている」とベッドマン コミッショナーが明言。

NHL側の主張によると、長野を皮切りにNHL選手の出場を可能にした頃に比べ、「状況が変化している」と話し、

「オリンピックブレイクを設けて、レギュラーシーズンを中断することは、ほとんど利益を生み出さなかった」

との代表者会議で出された多くの意見に加え、17日間のオリンピックブレイクを組み入れたスケジュールでは、

「選手たちが負傷をするリスクが、大きく高まる」

といった声も上がったことから、「オリンピックブレイク撤廃」の決定に至った模様です。

▼NHL選手会は「断固反対!」

NHLが「オリンピックブレイク撤廃」を発表して間もなく、各チームの選手たちが加盟する NHL選手会は、声明を発表しました。

「NHLの異例とも言える決定に失望し、我々は断固として反対する。

(オリンピックブレイクを設けることで)レギュラーシーズンのスケジュールに影響を及ぼすことは、世界中の人たちに、NHLと素晴らしい選手たちを知ってもらう機会を失うことに比べれば、大きなことではない」

▼来季はオリンピックだけのためにプレーする !?

NHL選手会の声明には、多くのファンから賛同の声が上がっている模様ですが、現状の労使協定では、

「NHLに加盟しているチームとの契約を結んでいる選手は、NHLが公認している試合や大会以外は出場できない」

と決められています。

さらに加えて、

もしも所属チームが公認した場合は、フルシーズンに渡って適用される

との規定もあるため、前述のオベチキンが、(これまでオリンピック出場を後押ししている)テッド・リオンシス オーナーから、「Goサイン」をもらったとしても、NHL の試合出場が認められず、「来季はオリンピックだけのためにプレーする」道しか許されていないのです。

▼北京オリンピックもNHLプレーヤー不在に !?

このような経緯がある一方で、NHLは中国マーケットの開拓にも注力し始め、来季のプレーシーズンゲームを、上海と北京で開催するのをはじめ、、、

チャイナシフトを強めていく意向です。

それだけに、2022年には再びオリンピックブレイクが設けられ、「北京オリンピック」には、NHLのスター選手たちが勢ぞろいする! との期待も高まります。

しかし、国際オリンピック委員会は、今回のNHLの決定より先駆けて、

「北京オリンピックにNHLプレーヤーが参加するか否かは、ピョンチャンオリンピックに準じたものとする」

との考えを明らかにしています。

そのため、オリンピックブレイクを設けず、ピョンチャンへの選手出場を認めない決定を下すと、(現状では)北京でもNHLのスター選手のプレーが見られなくなるのですが・・・。

果たして、どうなるでしょうか?

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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