特例公債法案可決の先延ばし、最悪のシナリオとは何か?

国会は機能するのか?

いよいよ臨時国会がスタートして、特例公債法案の行方が焦点になってきた。赤字国債法案が、今国会で可決されなければどうなるのか、いまやギリシャの財政危機や米国の財政の崖と並んで、日本の特例公債法案が、世界のリスクのひとつとして金融市場で認識され始めている。

唯一の望みは、自民党の安倍総裁が「審議拒否はしない」と明言していることだが、その一方で参議院が首相の所信表明演説を拒否するなど対決姿勢も続いている。仮に、今回の臨時国会で特例公債法案が可決されなかった場合、どんなシナリオが考えられるのか。

とりあえず財務省などは、いざというときに備えて財務省証券などを発行して急場をしのぐ考えだが、実はメディアが報道しているような生活保護費が出ない、公務員給与の遅配といった国民の生活が直接困窮するような事態は考えにくいのではないか。予算の執行が止まって地方自治体などに国の予算が回らなくなっても、地方自治体は銀行などから資金を借りることができる。日本の銀行は、預金残高が融資残高を200兆円程度も上回っており、当面融資資金は潤沢にあるはずだ。

怖いのは国債発行市場の乱れ

問題なのは、新規に国債を発行するスケジュールが狂ってしまう国債発行市場の乱れだ。11月までに特例公債法案が成立しない場合、12月中の国債発行ができなくなり、その間、先物市場などがどんな動きをしてくるのかが不透明なのだ。周知のように、国債には先物市場やオプション市場があり、そうしたデリバティブ市場はレバレッジを効かせて、少ない資金で大量の売買が可能な仕組みができている。

日本国債発行の空白時間ができることで、海外のヘッジファンドなどリスクマネーと呼ばれる投機筋は、国債の金利上昇を予測して仕掛けてくる可能性がある。東証の「投資部門別 国債先物オプション取引状況」のデータによると、9月3日~9月28日での取引高構成比は、海外投資家がプット(売り)64.98%、コール(買い)53.56%となっている。

5~6割の取引高が海外投資家になっているということだ。それ以外は証券会社と銀行で4割弱を占める。注目したい点は、一時的かもしれないが、海外投資家の取引状況のプット(売り)の値が、8月(54.13%)、7月(50.42%)に比べて10%程度上昇していることだ。2011年、2010年の平均値レベルに戻ったという分析もできるが、この10月の平均値がどんな数字になるのか注目すべきだろう。

プットが増えているということは、国債価格が下落すると読んでいるわけで、国債価格の下落とは債券市場では「金利の上昇」を意味する。

金利の1%上昇で8.3兆円の損失

今回の特例公債法案問題の最悪のシナリオは、実にシンプルだ。欧州債務危機のきっかけとなったギリシャ・ショックもそうだったように、金利が上昇することだ。金利の上昇は、まず国債を保有する金融機関を直撃する。最近発表された日本銀行の「金融システムレポート」でも指摘されていたが、国内金利が1%上昇するだけで3月末時点で大手銀行3兆7000億円、地域銀行3兆円、信用金庫は1兆6000億円の評価損が生ずるそうだ。合計で8兆3000億円の損失が出るとシミュレーションしている。

国債の保有残高が増えたためだが、日本銀行はまた金利が2%上昇すると、名目国内総生産(GDP)の成長率がマイナスに転ずる影響が出ると指摘している。米国の財政の崖なども不安だが、米国の場合は最終的に大統領がリーダーシップを発揮してトラブルを未然に防ぐことができるような気がする。しかし、日本の場合はリーダー不在の国会がこのまま何も決められずに暴走する可能性もある。

個人にできる対応策は、円安の進行に対応した資産運用を心がけるぐらいしかなさそうだ。しばらくの間、国債の金利から目が離せない。