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五輪を宿命づけられた?卓球選手たち 生まれ年の偶然が呼び込んだ幸福な世代交代の必然

伊藤条太卓球コラムニスト
左から 早田ひな、張本美和、平野美宇(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

韓国・釜山で開催されている世界卓球選手権大会で、日本女子の快進撃が止まらない。23日の準決勝で香港を3-0のストレートで圧勝し、3大会連続の決勝進出を決めた。

中心となっているのが、早田ひな、平野美宇、伊藤美誠の23歳の同級生トリオに、15歳の張本美和だ。

実はこの4人には五輪にちなんだ共通点がある。いずれも夏季五輪の年に生まれているのである。同級生トリオはシドニー五輪の2000年、張本は北京五輪の2008年生まれだ。そして今回、出番は少ないがメンバーである木原美悠は2004年、つまりアテネ五輪の年に生まれている。今回の団体メンバー5人がいずれも夏季五輪の年に生まれているのである(さすがに渡辺監督は1961年生まれで違った)。

今回のメンバーの5人全員が五輪イヤー生まれだ
今回のメンバーの5人全員が五輪イヤー生まれだ写真:YUTAKA/アフロスポーツ

これだけでもかなりの偶然だが、偶然はこれに留まらない。

昨年引退した石川佳純はバルセロナ五輪の1992年生まれ、福原愛はソウル五輪の1988年生まれ、そして平野早矢香は1985年3月、つまり1984年ロサンゼルス五輪の「年度」に生まれているのだ。いわずと知れた2012年ロンドン五輪で日本卓球界初のメダルを獲得し”3人娘”として日本中の話題となった黄金トリオだ。

この3人も全員が夏季五輪の年度生まれだった
この3人も全員が夏季五輪の年度生まれだった写真:ロイター/アフロ

夏季五輪の年に生まれた選手だけを恣意的に選んでいるのではない。この20年の日本女子卓球界の中心的選手たちをならべると、それがことごとく夏季五輪イヤー生まれなのだ。実際、2012年ロンドン五輪、2016年リオ五輪、2020年東京五輪、そして2024年パリ五輪の出場選手たちの全員がこのリストに含まれている。

1984年 ロサンゼルス五輪 平野早矢香

1988年 ソウル五輪    福原愛

1992年 バルセロナ五輪  石川佳純

1996年 アトランタ五輪

2000年 シドニー五輪   早田ひな、平野美宇、伊藤美誠

2004年 アテネ五輪    木原美悠

2008年 北京五輪     張本美和

こんな偶然があるだろうか。無論、偶然に決まっている。

しかしこのリストを見れば、彼女らが五輪を宿命づけられてこの世に生を受けた者たちであるような気がしてしまうのは仕方がないことであろう。そして、この上手いぐあいに離れた年齢が、五輪単位でのスムーズな世代交代を必然にしてもいるのである。なんと幸運な偶然だろうか。

ちなみに男子の生まれ年の傾向はなかった。

卓球コラムニスト

1964年岩手県奥州市生まれ。中学1年から卓球を始め、高校時代に県ベスト8という微妙な戦績を残す。大学時代に卓球ネクラブームの逆風の中「これでもか」というほど卓球に打ち込む。東北大学工学部修士課程修了後、ソニー株式会社にて商品設計に従事するも、徐々に卓球への情熱が余り始め、なぜか卓球本の収集を始める。それがきっかけで2004年より専門誌『卓球王国』でコラムの執筆を開始。2018年からフリーとなり、地域の小中学生の卓球指導をしながら執筆活動に勤しむ。著書『ようこそ卓球地獄へ』『卓球語辞典』他。「ロックカフェ新宿ロフト」でのトークライブ配信中。チケットは下記「関連サイト」より。

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