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新型肺炎でリクナビ合説や入学式が中止へ~大学・就職への影響は(修正あり)

石渡嶺司大学ジャーナリスト
合同説明会に向かう学生(写真はイメージ)。今年はこうした光景も消える?(写真:森田直樹/アフロ)

リクナビ、合説を全面中止

新型肺炎が連日、話題になるようになってから、大学・就職関係者は頭を抱えていました。

「これから参加者数が増えていくのにどうしよう」

そう、大学だと入試や卒業式などがあります。就職だと合同説明会や会社説明会・セミナー、選考があります。

それぞれ、これからピークを迎えていくのに、首相官邸のホームページには「主な感染場所」として「劇場、満員電車などの人が多く集まる場所」を挙げています。当初はこれに加えて「学校」も入っていました。

「それなら大学入試は中止した方がいいのか。『卒業式は?』となる」

と大学関係者が嘆くと、大学就職課職員も、

「合同説明会がこれから開催されていくし、感染のリスクを疑うなら企業の説明会・セミナーや選考だって該当するはず」

私も事態を注視していましたが、本日2月20日、リクナビが合同説明会の中止を発表しました。

株式会社リクルートキャリア(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:小林 大三)は、新型コロナウイルス感染症が国内で広がっている現状を鑑みて、44都道府県で開催を予定していた就職情報サイト『リクナビ2021』の合同企業説明会を、2020年3月1日から31日まで、すべて中止することを決定いたしました。同様の理由で2月22日に東京都・大阪府、24日に宮崎県、26日に鹿児島県で開催を予定していた就職活動準備イベントも中止いたします。

『リクナビ2021』の合同企業説明会イベントは、3月1日より順次スタートする予定でしたが、各会場にて現状取りうる対策を行ったとしても、拡大する新型コロナウイルスの感染リスクを防ぎきれないと判断し、学生の皆さまの健康や安全面などを第一に考え、3月の開催を取りやめることといたします。4月以降につきましては、事態の状況変化を見極めながら再開を検討いたします。合同企業説明会は中止いたしますが、引き続き、学生の皆さまが納得度の高い進路決定をできるよう支援してまいります。

※2020年2月20日・リクルートキャリア プレスリリース

リクナビは就職情報サイトの最大手です。2月20日15時時点ではマイナビ、キャリタスなど追随の動きはありません。

が、「就活事業では、最大手とされる同社がイベント中止を決めたことで、他社も中止する可能性が高まっている」(産経新聞2020年2月20日記事)。

就職情報会社だけでなく、中小企業家同友会などが主催する合同説明会についても、中止もしくは延期の動きが今後、強まることでしょう。

大学入試は受験拒否か代替措置かどちらか

一方、大学に目を向けると、25日には国公立大学の前期入試を迎えます。

受験生が感染した場合、「受験を認めず再受験もなし」と「特別措置による判定」と対応が分かれています。

前者は東京大学、大阪大学、名古屋大学、九州大学、東北大学、京都大学、首都大学東京、名古屋市立大学、下関市立大学など。

罹患者は本学の入学試験を受験できませんので,ご注意ください。 なお,追試験等の特別措置は予定しておりません。(東京大学)

本学では、入学試験を欠席した志願者への追試験を含む特別措置等の実施予定はありません。(京都大学)

一方、名古屋工業大学、京都工芸繊維大学、北海道大学、大阪府立大学、佐賀大学(一部学部)、県立広島大学などは代替措置を設けています。

具体的には、個別試験を中止として、代わりにセンター試験(またはセンター試験・調査書)で合否を判定します。

私立大学では神奈川大学、駒澤大学などが3月に入試を実施予定です。2月20日15時現在、中止を決めた大学は確認できませんでした。

学内合説・卒業式・入学式を中止の大学も

神奈川大学は2月19日にプレスリリースを発表。学内での合同説明会や就職行事、高校生向けイベントなどについて2月19日~3月22日まで、学内イベントの中止を公表しました。

なお、現時点で卒業式(3 月23 日)の開催については検討中のため、対応が決まりました ら、ホームページ等でお知らせいたします。

この卒業式ですが、2月20日現在、京都外国語大学は卒業式の関連行事となる「総長招待祝賀会」について2月19日に中止を発表しました。

こちらも、

なお、「学位記授与式/修了証書授与式」は現時点では、開催する予定です。ただし、新型コロナウイルスに関しては、日々、新たな情報が発信され、本学の対応もそれに応じて変化していきます。今後も本学ホームページ等を通じ、本学の対応についての最新情報をお知らせしますので、定期的に確認をしてください。

と、中止についても含みを持たせています。

関連行事に卒業式そのものだけでなく、入学式も中止を20日に発表したのが立命館アジア太平洋大学(大分県)です。

立命館アジア太平洋大学(APU)は、昨今の新型コロナウイルスによる新型肺炎の発生状況に鑑み、2020年3月の学位授与式(卒業式)および2020年4月の入学式の開催を中止することといたしました。

大分県内での新型コロナウイルス感染者は現時点では報告されていませんが、日本国内でも感染者が発生しており、今後日本国内でも更なる感染者増加の可能性があります。日本政府や企業などが大規模イベント中止の検討や判断を行なっていることは、みなさん報道等でご存じいただいているかと思います。 APUの学生の約95%は大分県外の日本各地、そして世界各地から集まっています。毎年卒業式・入学式には卒業・入学を迎える学生だけではなく、国内外から多くのご家族や友人、先輩などが駆け付けます。大勢の人が各地から移動し、一堂に会すことになる式典の開催は、感染のリスクを高めることが想定されるため、学生やそのご家族の皆さま、地域の皆さま、関係者の皆さまの健康が何よりも第一と考え大事をとることといたしました。式典開催予定日までまだ日数がありますが、今後状況が好転するかどうかはいまだ不透明であるため、早めに中止の判断を行う運びとなりました。

※立命館アジア太平洋大学サイトより抜粋

大学行事では、私が確認したところ、公立はこだて未来大学・学生研究発表(秋葉原)や杏林大学の企業研究セミナーも中止していました。

卒業式については、各大学とも対応に苦慮しているようです。

「学内で大もめに揉めている。学生の安全だけでなく、近隣住民などの影響も考えれば中止は避けられない、という意見が有力。ただ、政府のはっきりした方針が出ていないのに大きなイベントを中止するのはいかがなものか、と開催論も根強く、まだ結論が出ていない」(私大・東京都)

「他大学や高校の動向によって、中止を検討する」(私大・神奈川県)

「今のところ開催予定だが、中止もあり得る」(私大・関西圏)

ある私大関係者は、「中止の方向で検討しているが、うちだけ突出するのは避けたい」とホンネを話していただきました。

関連行事を中止した京都外国語大学、卒業式に入学式まで中止を明らかにした立命館アジア太平洋大学の2校が契機となり、今後、さらに中止表明を出す大学は増えるもの、と見られます。

就活はウェブセミナー・面接の活用も

就職活動で企業側の動きを見ると、ソニーグループ(合同説明会)、メルカリ、三菱UFJ銀行などが、それぞれ中止が相次いでいます。

こちらは単に中止するだけでなく、ウェブセミナー・面接に切り替える動きもあります。

ウェブセミナーは昨年に続き、マイナビが3月1日に「マイナビWEB就職EXPO」を開催します。10時~21時(昼の部・夜の部を合算)で、スマートフォン・ノートパソコンなど視聴可能なツールがあれば、どこからでも視聴可能です。300社が参加予定であり、各社の説明会・就職講座ではチャット機能を使った質問も可能です。

ウェブセミナー・面接はマイナビ以外にも各社が導入しており、問い合わせが増加しています。

「就職情報会社から、新型肺炎対策でウェブセミナー・面接の企画書が送られてきた」(専門商社・中部)

「元々、オリンピック・パラリンピックの影響で交通事情が不明瞭なことから導入を決めた。新型肺炎のリスクも軽減できるため、導入しておいてよかった」(ウェブ面接を導入済みのアパレル企業採用担当者)

地方学生の負担軽減という点でもウェブセミナー・面接はマッチしており、今後も増加していく見込みです。

就活生は出遅れ組がさらに出遅れることに

2021年卒業予定の就活生は3月1日が広報解禁日です。

しかし、実質的にはすでに会社説明会・セミナーを含む広報活動は大半の企業が展開しています。

さらにIT・外資系企業だけでなく、地方銀行なども含め、すでに選考を実施し、内々定を出している企業も今年は増えています。

もっとも、企業の選考は大学入試のように時期を分割化してのもの。つまり、すでに内々定を出している企業も遅い時期に改めて選考を実施します。

この採用時期の分割化、言い方を変えると「通年採用」ともなります。

本来であれば、就活を遅く始めた学生であっても、この通年採用によって、間に合う見込みでした。

しかし、新型肺炎の影響によって、合同説明会や学内合同説明会、各社の説明会・セミナーなどが続々と中止に追い込まれています。そうなると、すでに就活を進めていて内々定も取り付けた学生はいいでしょうけど、出遅れ組は大変です。

しかも、オリンピック・パラリンピックの影響で今年は各社とも6月ごろまでに採用を一段落させたい、と考えていました。もちろん、大量の内定辞退者が出ることを前提として、です。

これも、新型肺炎の影響でどうなるかわかりません。特に業績にネガティブな影響が出ているホテル、観光、航空、小売、飲食などは採用予定者数を削る可能性まで出てきました。

スケジュールとしては、6月までに一段落し、補充採用は8月下旬か9月以降、という流れは大きく変わらないでしょう。

ただ、企業によっては想定採用者数を大きく下回る(または採用予定者数を大きく削減する)など、不透明な状況です。

就活生は、厚生労働省が出している指針の通り、マスク着用や手洗いなどを徹底するようにしましょう。

そのうえで、ウェブセミナーなどを活用することも含めて、就活の見直しをおすすめします。

なんとか、卒業式や入学式の時期までにこの新型肺炎が収まるといいのですが…。

訂正のお知らせ(2月20日17時)

記事中で「2月25日から後期入試が~」とありましたが「前期入試」の間違いでしたので訂正します。

ご指摘いただいた山口様、ありがとうございました。

記事訂正のお知らせ(2月20日21時20分)

記事公開直後には著者が確認していなかった立命館アジア太平洋大学の卒業式・入学式中止について、加筆しました。

情報提供をしていただいた吉村様、ありがとうございました。

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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