結局どうなる共通テスト~記述式廃止でもセンター試験から変わる8つのポイント

2019年度のセンター試験会場(写真はイメージ)。共通テストでどう変わる?(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

記述式の延期を発表

批判が止まらない共通テストですが、英語民間試験に続き、国語・数学の記述式についても延期することを萩生田光一・文科相は2019年12月17日の閣議後記者会見で言明しました。

これで共通テストは目玉だったはずの英語民間試験、国語・数学の記述式、それぞれを欠くこととなりました。

そもそも、記述式は2016年の時点でも国立大の9割で導入されています。

ところが、「国語、小論文、総合問題」を実施していない大学が6割あるデータを持ち出して「国立大は記述式をやっていない大学が6割」とするレトリックが記述式導入を後押ししていました。もうこのあたりから、ダメな臭いが漂っていた、と言えます。

まさか、このレトリック、共通テスト批判が強まった昨今では誰も使わないだろうと思いきや、鈴木寛・慶應義塾大教授(大学入試改革の旗振り役の一人)が使っていたのには驚きました。

これまで国立大の約半分と慶應大以外の私大はマークシート試験のみだったのです。(中略)そこで、記述式導入について大学入試改革では3本の柱を立てました。1本目は、国立大はすべて二次試験を記述式にする。これで国立大学はこれまで4割だった記述式試験の割合が9割にまで上がった。

※2019年12月16日配信「大学入試のマークシート偏重に識者『将来の失業者量産』危惧」

センター試験と同じ…ではない

さて、今回のテーマは「センター試験と目玉抜きの共通テスト、何が違う?」です。

なぜ、31年間もうまく運営されていたセンター試験を共通テストに変える必要があるのか、という話は前記事(2019年11月30日配信)に書いたので省略します。

英語民間試験は国立大8割が見送り~共通テストで記述式・民間試験はいつ目玉になったのか

本記事では、英語民間試験と国語・数学の記述式という目玉を欠いた共通テストとセンター試験、何が変わるのか、という点を解説します。

共通テストを初年度に受ける高校2年生や高校教員、保護者の方などは参考になれば、ということで。

今のところ、以下の8点が変更する見込みです。

・英語:発音、アクセント問題などが消滅(確定)

・英語:設問が全て英語(確定)

・英語:リスニングが100点と倍で1回読みが登場(確定)

・英語:単語量増加で難易度が上昇(ほぼ確定)

・国語:書類など実用文からの出題(ほぼ確定)

・数学:数学の知識だけでは解けない(ほぼ確定)

・全科目:ゼロマークの登場(半々?)

・社会・理科:教科内の複合分野の出題増加(半々?)

それぞれについて、解説していきます。

英語:発音、アクセント問題などが消滅(確定)

現在のセンター試験では、発音やアクセント問題、語句の並び替えなどが大問1で出題されています。

これが共通テストではなくなることが確定しています。

なぜ確定しているか、と言えば共通テストで英語民間試験を導入することが予定されていたからです。

当初の予定では英語4技能(読む、聞く、話す、書く)のうち、「話す、書く」は民間試験で、「読む、聞く」は共通テスト、とすみ分けることが予定されていました。

それでセンター試験では大問1で出題されていた発音、アクセント問題は廃止することで作問が進んでいたのです。

ところが、英語民間試験の導入が延期に。

と言って、作問作業は一年以上、かかるため、今さら後戻りはできません。

そこで、11月15日、大学入試センターは英語の問題作成方針について発表。

大学入試センター試験よりリスニング(聞く)の配点を増やすなど、今年6月に示した問題作成の方針から変更はなかった。英語民間試験の活用延期で、共通テストの英語は、当初予定していた4技能ではなく2技能のみを測ることになった。

方針では、センター試験(筆記200点、リスニング50点の250点満点)から配点を変更。20年度からのセンター作成の英語テストではリーディング(読む)とリスニングで100点ずつの200点満点とした。また、現在のセンター試験で「書く、話す」力を間接的に測っていた語句の並び替えや発音、アクセントなどの問題は廃止するとした。

6月時点では、英語テストと民間試験の併用で4技能が測れるはずだったが、今月決まった民間試験の活用延期で、「読む、聞く」の2技能のみを測る内容となった。

※読売新聞朝刊2019年11月16日朝刊「共通テスト 英語『従来と変わらぬ』『読む・聞く』のみ 100点ずつ」

英語:リスニングが100点と倍で1回読みが登場(確定)

現行のセンター試験はリスニングが50点の配点となっています。

これが共通テストでは100点と2倍になります。

さらに、センター試験のリスニングは問題文を2回読むようになっています。これが共通テストでは2回読みと1回読みの両方で構成されることが決定済みです。

配点が倍に増えて1回読みというハードルが上がることを考えると、これまで以上にリスニングの比重が高くなる、と言っていいでしょう。

「後半の2問は英検2級レベルでは対応できない。準1級を目指す必要がある」。4月下旬に東京都内であった代々木ゼミナールによる高校教員向け説明会。英語担当の谷川学講師は45分かけて、主に試行調査での英語のリスニング対策について説明した。「英単語、フレーズを視覚だけでなく音で覚える必要がある。リスニングの訓練を積むべきだ」

※朝日新聞2019年5月14日朝刊「(変わる大学入試2020)共通テスト、英語のポイント」

英語:設問が全て英語(確定)

設問がセンター試験だと日本語でしたが、共通テストでは英語になる見込みです。

共通テストは設問も全て英語になる予定で、近年、同様の出題は増えています。ただ、英語だからといってややこしい設問になるわけではないので、それほど心配しなくてもいいでしょう。

※朝日新聞2019年11月16日朝刊「(変わる進学 大学入試新時代へ)英語長文化にどう対処」/コメントは駿台予備学校講師・増田悟さん

英語:単語量増加で難易度が上昇(ほぼ確定)

読解量・単語の量は共通テストだと大幅に増える見込みです。

河合塾の調べでは、共通1次試験の英語総語数は、1988年度は約2500語でしたが、近年のセンター試験では4千語を超え、2019年度は約4200語。これが共通テストの試行調査は約5400語と一気に増え、各大学の個別入試と比べても突出しています。80分間でどれだけの生徒が最後まできちんと読み切れるでしょうか。

東京大の前期も15年前の2400語程度から19年度は3千語程度に。早稲田大政経学部も約3500語、慶応大商学部も約3100語。難関大で増えていないのは1千語程度で推移する京都大などごくわずかです。

もちろん語数と難易度は比例するとは限りません。東大や京大の出題は奥が深く、思考力を試す良問です。気になるのは、長文化するだけで深みのない出題が増えていること。昨今は、雑誌や新聞からの引用も目立ちます。こうした文章は、最初から最後までしっかり読解しなくても、問題文や選択肢をまず読む、結論から読むなどの「受験テクニック」で解答できてしまうものも少なくありません。

※朝日新聞2019年11月16日朝刊「(変わる進学 大学入試新時代へ)英語長文化にどう対処」/コメントは河合塾講師・成川博康さん

単語の量が増えたからと言って、必ずしも難易度が上がるわけではないのは、上記の河合塾講師のコメントにある通りです。

ただ、近年の高校生は新聞・本の読書量が大幅に低下しています。当然ながら読解力も高くありません。

一部のトップ進学校を除けば、高校教員の多くが「共通テストは読解量が極端に増えている。英語でも国語・数学でも読解力がないと回答できない。結果的には難易度は上がるのではないか」と指摘しています。

国語:書類など実用文からの出題(ほぼ確定)

共通テストのプレテストでは、2回とも実用文が出題されました。

1回目は高校の生徒会の部活動規約。これに生徒同士の会話文とアンケート結果など形式の違う資料がつきました。

2回目のプレテストでは著作権について書かれたポスター、著作権法の条文、さらに著作権についての論説文。

これまでのセンター試験とは大幅に異なる形式です。

出題の狙いはどこにあるのか。文科省の山田さんはこう説明する。

「会話文や部活動規約など形式の違う複数の文章や資料を出題するのは判断力などを測るためです。さまざまな情報の中でどの資料のどの部分が重要かを見極められるか。もちろん、従来通り小説や評論文も出ますが、年度によっては契約書やポスターなど実社会で目にする書類も出題される可能性があります」

※『プレジデントファミリー』2019年4月号「まるわかり『新大学入試』知っておきたい3つのこと/コメントは山田泰造・文部科学省大学入試室室長

数学:数学の知識だけでは解けない(ほぼ確定)

共通テストのプレテストでは身近なテーマについて問題文を読ませたうえで数学の知識を必要とする設問が出題されました。これは共通テストでもほぼ同じと思われます。

問題文自体が長く、内容を把握するのに時間がかかり、一般的な読解力の高校生は時間内に全てに手が回らなかったかもしれない。大学入学共通テストの狙いの一つである思考力を問うため、身近な事象を数式や記号に置き換える力を確かめたいのは理解できるが、数学なのに「国語力」が多く問われた出題になっている。量や内容の調整が必要だろう。(駿台予備学校)

※2017年12月5日毎日新聞朝刊「大学入試:新共通テスト プレテスト 数学1・数学A 記述式問題の分析」

全科目:ゼロマークの登場(半々?)

現在のセンター試験は、選択肢が4~5程度あり、その中から1つを選ぶようになっています。つまり、正解が分からなければ、どれか1つを適当にマークすれば正解になる確率が四択なら25%と、それなりにありました。

共通テストのプレテストでは、「正しい選択肢をすべて選べ。正しいものがなければゼロをマークせよ」が登場しています。

知識の応用力を重視したマーク式では、ひとつの設問に正しい選択肢が複数あり、その全てを選ばなければ正答とならない新形式の出題があったが、苦戦した生徒も多かったようだ。

※産経新聞2017年12月5日朝刊「大学入学共通テスト試行調査 正答率1%切る設問も」

教育再生会議の委員だった陰山英男さんは『プレジデントファミリー』2019年4月号記事で次のように述べています。

「これまでは選択肢の中に必ず正解が一つありましたが、共通テストでは選択肢が増え、さらに選択肢の中に正解が複数ある問題も出されます。まぐれでは正解しづらくなり、より深い思考力が問われるのです」(陰山さん)

確かにその通りなのですが、一方、日本テスト学会は繁桝算男・理事長の名で「平成 29 年 11 月実施の大学入学共通テスト導入に向けた試行調査に関する日本テスト学会の意見」(2018年1月9日公表)の中で、この方式についても否定的な見解を示しています。

「適当なものをすべて選べ」という解答形式によって生じる変化は、正答率の低下です。

これは添付の【補足資料】に示されている通りです。関連して生じるもう 1 つの変化は、識別力の低下です。たとえば「5 つのうちから適当なものをすべて選べ」という設問は、上述のように 5 つの二者択一問題と同等であり、二者択一にすれば 5 問正答から 0 問正答までの細かい個人差を見ることができるものを、5 問正答のみを正答し、4 問以下の正答は 0 問正答と同じとみなすわけですから、貴重な個人差情報を捨ててしまうことになります。

また、テスト理論上のこととは別に、マークシート解答の読み取りにおいても、複数の選択肢を選ばせることはトラブルのもとになることが懸念されます。それは受験者がマークを消して付け直すことをした場合、消し方によっては、消したのかどうか判然としないことがあり、その判断が、1 つのみマークすることになっている場合に比べ、いくつでもマークしてよいことになっている場合にはより難しくなると考えられるからです。

このように、「適当なものをすべて選べ」という解答形式は、単に正答率を低下させ、識別力を低下させる機能しかなく、採点実務上のトラブルにつながる可能性もあるため、原則として使用しないことが望まれます。

こうした批判が強いこともあり、この形式の出題については確定しているわけではありません。

社会・理科ほか:教科内の複合分野の出題増加(半々?)

共通テストのプレテスト(2回目)では日本史で東北の地図、それも南北逆転した地図が出題されました。そこから、中央政府と蝦夷の関係性を読み取ることが求められたのです。

現代社会では学校新聞が出題され社会のあり方について考察する内容でした。

プレテスト(1回目)では日本史で世界史的な視点から考察する問題や、世界史では「金印」を題材として日本を含む東アジア世界を考察する問題が出題されました。

これらはいずれも、読解力を必要とするだけではありません。

共通テストの目玉としてかつて考えられていたのが、合教科型です。

ワインについての文章を読み(国語)、ローマ帝国の歴史(世界史)や発酵に関係する化学式(化学)などを答える

※「朝日新聞」2014年7月18日朝刊「達成度テスト、入試どう変わる センター試験後継、文科省が検討中」

という形式が合教科型です。ユニークですし、うまくはまれば、広い視野を持った人材育成に一役買うのでは、と私個人は思います。

ただ、当然ですが、この合教科型には各教科の知識を相当修得していて、かつ、読解力が備わっていないと回答できません。

案の定、反対論が強く、共通テストの目玉にならなかったことは前記事で出した通りです。

この合教科型の名残りとして、社会のプレテストで出題されたのではないでしょうか。

この合教科型の名残、社会だけでなく理科などでも出題される可能性がありますが、こちらも確定しているわけではありません。

センター試験から変わりすぎで大学受験は難易度上昇か

以上、8項目がセンター試験から共通テストに衣替えするにあたって、変更になる見込みです。

まとめますと、読解力などを問うために、難易度は現行のセンター試験よりも上昇する可能性が高いです。

そうなると、共通テストは敬遠しようとか、私立大専願で、いや、いっそのこと、簡単そうな推薦・AO入試で、と考える受験生もいるでしょう。

が、私立大は入学定員の厳格化などの影響で難関大だけでなく中堅、中堅以下の大学もそれぞれ倍率が上昇しています。

特に東京都内の私大は大きな影響を受けています(このあたりは別記事で出す予定)。

それから、推薦・AO入試ですが、こちらも一般入試に比べて楽、というわけではありません。読解力重視の流れは推薦・AO入試でも変わりません。

2018年、甲南大学の推薦入試で私のコラム(2019年3月まで毎日新聞関西版での就活コラム連載)が使われました。

当初、私が知らなかったのは言うまでもありません。問題文の著作権者に大学が告知することはまずないので。

この推薦入試の問題を第一学習社という出版社が収録したいので許諾を、と連絡してきたのが2018年秋のことでした。

異論はないので承諾したところ、ゲラと収録の参考書(『小論文実力養成講座 ステップアップ小論文』第一学習社・編/2019年2月改訂7版)が送られてきたのです。

私のコラムは新聞コラムとしては分量がやや多く1800字程度あります。それだけでも読む高校生は面倒と思ったのですが、私の想定を甲南大学は上回っていました。私のコラムとは別に同じテーマのコラムをもう1本(ほぼ同分量)、読ませたうえで「これらを比較し、コミュニケーション能力について、自分の考えを六〇〇字程度で述べよ」。

他にも課題文とデータを両方読ませる複合型(同問題集では関東学院大学を収録)など、推薦入試・AO入試のザル状態を知る身からすれば、「え?こんなに難しいの?」という問題がズラリと並んでいました。

このことを高校講演で紹介したところ、多くの高校教員から、

「よくぞ話してくれた」

「今の保護者は推薦入試を甘く見すぎている。実際はどの大学でも難化しているのにそれを理解していない」

との意見が続出したのです。

このように共通テストを敬遠しても、共通テストの影響は推薦入試・AO入試ですでに出ているのです。

大学入試改革の方向性として、読解力や思考力の重視、「主体的・対話的で深い学び」(大学入試改革のお題目の一つ)を問うことには私も異論はありません。

が、そのためにはもっと慎重、かつ、丁寧な議論のもとに進められるべきでした。拙速を重ねて迷走した結果、受験をする高校生はいい迷惑です。せめて今後の収拾策は受験生を第一に考えていただきたいものです。

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。2018年は肩書によるものか、バイキング、ひるおびなどテレビ出演が急増。ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。主な著書に『大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)『女子学生はなぜ就活に騙されるのか』(朝日新書)など累計28冊・55万部。

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