エントリーシートを殺すのは誰か~書ける書けないの境目は

北陸人材ネットが販売するLINEスタンプ。あるあるネタがうますぎ(著者撮影)

ESをうまく書けない学生続出

2019年卒(現3年生)の学生は学生が有利な売り手市場。

ところが、学生を取材すると、エントリーシートをうまく書けない、と嘆く学生によく出会います。

エントリーシートとは履歴書の変化球のようなもの。1990年にソニーが初めて導入。以降、各企業に広まり、2000年代には就活市場で定着、現在に至っています。

履歴書と違い、各企業ごとに設問・形式などはカスタマイズすることが可能。

定番の設問は3点。

志望動機、自己PR、学生時代に力を入れたこと(略してガクチカ)。

文字数も企業次第ですが、1項目あたり400字ないし300字とする企業が大半で私が就活取材を始めてから15年になります。2000年代に入ってからは最高と言っていいほどの売り手市場で、なぜ、学生はエントリーシートを書けない、と落ち込むのでしょうか。

そこには、意外な事情が隠れていました。

書けない理由~学生側

まずは学生側の理由から。

主な理由としては3点。

「自信を持てない」「新聞・本・ネット記事など関連記事を読まない」「スマホ・SNS慣れからの『だらだら書き』」です。

就活カフェ・キャリぷら(大阪)でエントリーシートを書く学生(著者撮影)
就活カフェ・キャリぷら(大阪)でエントリーシートを書く学生(著者撮影)

自信を持てない

日本の学生は以前から自己肯定感の低さが指摘されています。これは売り手市場の現在でもほぼ変わりません。

面白いのは、就活前から序盤にかけて、だと、自信のない学生が就活中盤以降、大きく変わっていきます。

かつて、拙著『最高学府はバカだらけ』(2007年)『就活のバカヤロー』(共著、2008年)などでは、この変化を「化学反応」とまとめました。

この「化学反応」、就活取材を重ねた今ならもう少し詳しく説明できます。

就活を開始したばかりの学生は自分の大学が大企業などから相手にされるかどうか、不安です。この不安感は、日東駒専・産近甲龍かそれ以下の中堅私大、地方国公立大だけでなく、MARCH・関関同立、あるいは早慶上智クラスでも、同じように不安となる学生がいます。

ところが、就活を進めていくと学生の想定以上に大学名だけでなく、その他の部分も含めて評価されます。売り手市場の現在では、大手企業も含めて相手にして貰える学生が大半を占めます。これが自信となって中盤以降、変わっていきます。

この循環が売り手市場のこの数年、ずっと続いています。

問題は毎年のように学生が就活前~序盤で自信を持てないでいる点です。

自信が持てない以上、中身のあるエントリーシートを書けるわけがありません。

新聞・本・ネット記事など関連記事を読まない

2000年代に入ってから、学生の新聞離れが指摘されています。全国紙・地方紙とも様々なキャンペーンを実施しているにもかかわらず、その成果はほぼ出ていません。

日本経済新聞が辛うじて出している、と言えなくもないところですか。

新聞を読む率(正しくは「行為者率」/NHK放送文化研究所の国民生活時間調査2015)は平日で10代が男性3.7%・女性3.2%、20代男性8.0%・女性3.0%しかいません。

なお、この行為者率ですが購読率ではありません。大学図書館に置いてある、家族が購読していたのを読んだ、というものも行為者率は含みます。

新聞や本だけでなく、関連のネット記事を読まない学生も増加しています。

もう、いっそのこと、このYahoo!個人記事で「マスコミ志望者が読んでおきたいネットメディア記事10選」でもまとめようか、という今日この頃。

ここまで新聞・本・ネット記事を読んでいない、ということは文章力が劣るのも無理ないでしょう。

自分にとって無関係なニュースばかり掲載されている、とか、ニュースアプリで十分、という反論はシャラップってなものです。

競技に関係なくても体力作りのためにはランニングが必要なはず。

それと同じで文章力・読解力を上げるには、無関係な記事ばかり掲載されている新聞、あるいは本やネット記事など文章をまとめて読むことが必要なのです。

スマホ・SNS慣れからの「だらだら書き」

もはや、インフラの一種と化しているのがスマホです。

「2018年卒マイナビ大学生のライフスタイル調査」(マイナビ)によると、学生のスマートホン(以下、スマホと略)所有率は98.5%。

このスマホで学生はLINEやTwitter、InstagramなどSNSを使って友人・知人と交流をします。

私はこのスマホ・SNS慣れも学生の文章力を大きく落としているのでは、とみています。

スマホ・SNSの利用時間が長いから本・新聞を読まない、という間接的なものではありません。

そもそも本・新聞を読む学生はスマホの利用時間も長いことが大学生協調査で明らかになっています。

では、スマホ・SNSの何が影響するのか。

それは、SNSの特性です。

SNSの特性とは、お互いを認め合う、そして、ゆるくつながる、というもの。

それ自体は悪いことではありません。

しかし、この特性の副作用として、だらだら書くことが習慣づいてしまっているのではないでしょうか。だらだら書く、つまり、余計な修辞や文章が多くても、許容されてしまうのです。

「だらだら書く」という指摘には、「いや、スマホこそ、余計な修辞・文章を落としている」という反論をする方がいることでしょう。

確かにその通り。ただし、それは顔文字を含め、スマホ固有の表現方法があってのものです。いざ文章を書くときに、スマホの習慣をそのまま持ち込める、というものではありません。

就活カフェ・キャリぷらplus北海道で就活相談中の学生(左)とカウンセラー(右)。社会人の話が意外なヒントになることも(著者撮影)
就活カフェ・キャリぷらplus北海道で就活相談中の学生(左)とカウンセラー(右)。社会人の話が意外なヒントになることも(著者撮影)

書けない理由~外部環境

ここまで学生側の理由を3点、挙げました。

しかし、学生がエントリーシートを書けないのは学生以外の要因も見逃せません。

学生以外の理由、すなわち外部環境の理由としては4点、挙げられます。

ネット・就活マニュアル本では古い情報が主

ネットの長所は一度掲載した記事が削除しない限り、ずっと残る点です。

これは短所でもあり、古い情報がずっと最新のもの、と勘違いされるリスクがでてしまいます。

エントリーシート関連のネット情報はこの短所がもろに出ている、と言えます。

エントリーシートは、1990年代半ばに定着。そこから2000年代半ばまでは就職氷河期が続きます。

就職氷河期である以上、学生は少しでも自分の良さをアピールする必要があります。そのため、自己PRを随所に入れようとする手法もありました。それから、学生の自己PR・業績などについて大げさに書く、いわゆる「盛る」が注目されたのもこの時期です。

エントリーシート関連の就活マニュアル本も、この就職氷河期に登場した手法を色濃く反映し、現在に至っています。

では現在はどうでしょうか。就職状況は、2000年代後半に売り手市場→リーマンショック後の就職氷河期と変遷しました。2010年代半ばから再度、売り手市場に転じ、現在に至っています。

そして、2010年代に入り、エントリーシート廃止に踏み切る企業が出てきます。リクルートキャリアが運営するリクナビでもオープンESという志望動機を抜かした共通仕様のエントリーシートを設定(2013年)。

こうした流れの中で「盛る」手法などは企業側が相当、敬遠するように変化しています。にもかかわらず、古い手法がいまだにネットや就活マニュアル本で主流となっている、これは学生を惑わすに十分な要素ではないでしょうか。

自己の経験に依拠する内定学生

内定学生も就活生を惑わせる大きなファクターです。

現在、多くの大学で内定学生が就活生を支援するイベントや相談コーナーなどが用意されています。大がかりな取り組みならずとも、サークル・部活動やゼミ、アルバイト先で内定学生が後輩のエントリーシートを添削する、ということはよくある光景です。

ただ、これが実は落とし穴。

内定学生のエントリーシートが正解か、と言えば実はそうとも言い切れません。

確かに文章をブラッシュアップした、という点では一日の長があります。

しかし、それだけ。

文章力が多少劣っていた、としても、今の採用状況を考えれば、とりあえず次の選考に回そう、と考える企業があったとしてもおかしくはありません。

それを一方的に、こういう書き方で内定を取ったから正しい方法、と内定学生が言い切るのはやや危険です。

まして、就活生が内定学生の指導を100%受け入れるのも、同じくらい危険と言わざるを得ません。

古い情報頼みの採用担当者・就職情報会社・大学

では、内定学生ではなく、大学キャリアセンター・就職課の就職ガイダンス、就職情報会社のエントリーシート講座、企業の採用担当者による指導などはどうでしょうか。

まず、大学や就職情報会社のすべて、とまでは言いませんが一部では、古い情報を使いまわしています。

たとえば、関西のある有名私大では、エントリーシート関連のガイダンスで外部講師を招聘しています。

外部講師の招聘そのものは構いません。付言しますと、私も大学からの依頼で就職ガイダンスの講師として登壇することがありますし。

さて、関西の有名私大が招聘した外部講師の方がどんな指導をしているのか、聞いてみました。

「強調したいことは赤いペンなどで目立つように書こう」

「蛍光ペンを使ってもよい」

……。えー、えーとですね。いまどき、紙ベースでエントリーシートを提出させる企業だと原本をコピーしたうえで読むようにしています。赤ペンを使えば汚く出るし、蛍光ペンだとモノクロコピーでは反映されないはずなのですが。

そもそも学生個人の内容をどう書くか、という本来の話からは程遠いですし。

いまどき、赤ペン・蛍光ペンを使って目立つように書く、という手法はそれほど目新しいものではありません。まして企業側はそこまでこだわらないのですが、この手の古い話をさも最新情報であるかのように伝えてしまう、そんな大学なり就職情報会社なりのガイダンスがときどきあります。

かわいそうなのはこれを真に受けてしまう学生です。

一生懸命に大学・就職情報会社の指導通りに書くのですが、その結果、学生個人のことを十分に伝えていないエントリーシートを量産するだけ。当然ながら書類選考ではうまく行きません。

ここ5年ほどの間に企業の採用担当者が自社の採用ノウハウ(学生からすれば就活のテクニック)を伝える就職支援型の1日インターンシップが増えています。企業の採用担当者のノウハウを学生が知るのは有効、ということで中小企業や地方企業でも広がりつつあります。

ここでも一部の企業ではやや古い情報を最新のもの、として伝えてしまいます。

それから採用担当者の場合、やはり自社のノウハウが第一。

そのため、一部では自社のノウハウを他の業界にも通用する話、としてまとめてしまいます。

たとえば、商社、サービス業など古い業界、かつ、手紙・書類などを重視する企業では、紙ベースでどう書くか、書式をどう揃えるか、などにこだわります。

一方、IT業界では、エントリーシートも紙ベースではなく、ネット提出。そのため、書式がどうした、とか、マナー的な部分は軽視しがちです。

新聞記者・出身者が文章にこだわりすぎ

エントリーシート添削では文章術が関わる、ということで大学によっては新聞記者または新聞記者出身者をエントリーシート講座に起用します。それから就職ナビサイトによっては新聞記者が文章講座の連載を持つことも。

新聞記者ないし出身者のうち、現状の就活事情を取材していてそれを反映できていれば特に問題はありません。

が、大半は(あるいは、控えめに言っても一部は)、現状の就活事情を分かっていません。そのため、文章講座では自身の経験に依拠することになります。

確かに新聞記者は文章のエキスパート。基本的な部分における指導方法は優れています。ところが、文章のエキスパートとして、ときには就活であまり使われていない高等テクニックを出してしまいます。

たとえば、見出し付け。一家言あるのはよくわかります。が、たかが400字程度のエントリーシートで見出しを付けたところでどうでしょうか。それだけ文字数を使い、ムダになるだけです。

倒置法などは、よほど長文のエントリーシート(または小論文)でもない限り、全く無意味。文章の構成(起承転結・序破急)もレポートならまだしも、というところ。

就活初期段階における学生の文章が練れていないのは事実です。そのため、文章のエキスパートたる新聞記者ないし出身者の指導は有効です。

ただし、文章術に頼りすぎて学生本人の話が出ていないとそれはまた本末転倒です。

という事情を果たして大学で話す新聞記者ないし出身者の講師がどこまで理解しているでしょうか。ちょっと不安です。

参考・石渡嶺司

ここまであれこれ書いてきて、じゃあお前はどうなんだ、と言われる方がいるかもしれません。

大丈夫、私も例外ではありません。

私の場合、採用担当者にいつも取材しているため、エントリーシートについても最新情報を入手しています。

ただ、言うまでもなく、すべての業界・企業に当てはまるとは限りません。結果として学生のエントリーシートを書けなくしている可能性はあります。

就活生のできる、できないの境目は

ここまで、学生がエントリーシートを書けなくする、内部要因と外部要因(含む・石渡嶺司)について解説しました。

ここで、学生の反応は大きく分かれます。

「あれもダメ、これもダメ。じゃあ、答えはなんだ?答えを言ってくれなきゃ困る!」

なのか、

「あれこれダメ出ししているけど、一方で使える部分はそれぞれあるはず。どこが使えるか、自分で考えてみよう」

なのか。

前者だと、就活で苦戦しやすく、後者だと、就活がうまく行きやすいです。

そもそも論で言えば、就活、それからその後の社会人生活に答えはありません。

自分なりに回答を探し(あるいは、作り出し)、トライ&エラーを繰り返すしかないのです。

就活のエントリーシートはその第一歩。

自分なりに回答を探すには、誰か1人に答えを求めても意味がありません。何しろ、それぞれが違うアドバイスをするわけですから。

結構な頻度で「石渡さんのアドバイスはキャリアセンターの話と違う。どちらが正しいのですか?」と聞かれます。

当事者である私に聞かれても。

こういう就活生はやや苦戦しやすくなります。

その点、できる就活生は違います。

私もしくはキャリアセンターなどのアドバイスをそれぞれ聞いて、自分なりに回答を出して行きます。この部分は石渡、この部分はキャリアセンターのアドバイスを使おう、と。

こうしたカスタマイズ、社会人になってからも重要です。

北陸人材ネットの応接室で販売中のLINEスタンプを前にポーズを取る山本均・代表(金沢大学就職支援室室長を兼任)。LINEスタンプは就活あるあるネタばかり。山本代表が示しているのはエントリーシートでもよくあるような(著者撮影)
北陸人材ネットの応接室で販売中のLINEスタンプを前にポーズを取る山本均・代表(金沢大学就職支援室室長を兼任)。LINEスタンプは就活あるあるネタばかり。山本代表が示しているのはエントリーシートでもよくあるような(著者撮影)

普通の学生はどうすればいい?

それでも、自信が持てないというのであれば、以下の10点にこだわってみてください。

基本編

自信を持つ・ありきたり批判にめげない

結果よりも過程

自己PRと具体例は合っている?

ネガティブ・マニュアルネタのリスクを考える

ガクチカで自己PR的なまとめは入れない(もしくは短くする)

1点目「自信」は前段に書いたので省略。

2点目は、日本の新卒採用(特に文系総合職)が見込み採用である以上、結果よりは過程から、見込みの有無を判断します。

そのため、よさこいサークル(あるいは弓道部、あるいはゼミでも何でも)だと「何とか大会で優勝した」(あるいは予選を突破した云々)と学生は成果を書きたがります。

よさこいの専門職(あるいは弓道でも何でも)を採用するならまだしも総合職なら、結果は二の次、三の次。

それよりは、練習でも何でも過程を書く方が採用担当者を引き付けます。

3点目は、自己PRを先に考え出して具体例が合わない学生多数。友人でもキャリアカウンセラーでも親戚でもいいので話を聞いてもらってからフィードバックを受ける、いわゆる他己分析から考えるといいでしょう。

4点目、ネガティブな話を書く学生がいますが(家族でしんどい思いをしたとか)読んでいて相手(採用担当者)がどう思うか、それも含めて検討した方がいいでしょう。

それから本人はいいエピソードで書いていても、マニュアルネタと疑われることもあります。コンビニなら「子どものためにストローを付けるようにした」とか。あるチェーンでは店員次第かもしれませんが、別のチェーンではマニュアル化されています。それを書いてもなあ…。

5点目、ほぼ全学生がガクチカで「この経験から~という能力を得ました。これを貴社でも生かしたいです」云々と書きます。それをガクチカで長々書いても。それよりは、ガクチカ、それも経過を丁寧に書く方が良いでしょう。

文章編

余計な修辞・文章は入れない

文章は適度に短く、適度に文節を変える

冒頭は短く、すっきりと

箇条書きは禁止

1項目は1ネタで通す

こちらは、私の別の連載(日経カレッジカフェ)で書いたのでそちらをどうぞ。

基本編は学生により分かれますが、文章編は大半の学生が引っ掛かっています。

この文章編5点だけでも変えると、エントリーシートは格段に良くなります。ご参考までに。