Yahoo!ニュース

センター試験の強制は受験料のムダ?それとも意義あり?

石渡嶺司大学ジャーナリスト
高校生には様々な進路がある。(著者撮影/写真はイメージです)

センター試験を受験しないのに、と嘆く保護者

9月27日の北日本新聞記事で、センター試験の全員受験についての記事が配信されました。

センター受験全員必要? 県内高校、保護者「進学しないのに」 学校側「学習成果を確認」(北日本新聞)

センター試験は全員受験? 26日に出願が始まった大学入試センター試験で、県内では進学や就職などの進路にかかわらず3年生全員に受験を求める高校があり、保護者から異論が出ている。学校側は「3年間の勉学の成果を確かめる機会。学習習慣を継続するため受けてほしい」などとして出願を勧めている。

※同記事より引用

センター試験は国公立大学だけでなく私立大学等の受験にも必要です。2017年度の受験者数は57万5967人。このうち、現役の高校生(卒業見込み者)は47万1842人を占めています。

この現役高校生について、高校によっては半ば強制的に受験させていることを記事は示しています。

センター試験を受けるよう生徒に指導している学校もある。高岡南では3年生全員に出願を呼び掛けており、中田正彦教頭は受験のメリットを「進学に必要なだけでなく、3年間の勉学の成果を発揮する機会でもある」と説明。ただし、強制的なものではないとした。

富山南、石動、呉羽高校なども、生徒全員に受験を勧めている。

※同記事より引用

一般入試にセンター試験が必要な生徒であれば問題ありません。

しかし、高校によっては、推薦入試・AO入試の合格で一般入試受験が必要ない生徒もいます。

それから、専門学校進学者や就職志望者もセンター試験受験は必要ないでしょう。

そうした生徒とその保護者からすれば、センター試験受験は検定料(当然ながら本人負担)もかかりますし、時間も必要です。

富山市内の高校に通う受験生の父親は「私立大専願なのでセンターは3教科しか要らないのに、学校では全教科受験を求められた。無駄な時間だし、体への負担やインフルエンザ感染のリスクが心配」と話す。

※同記事より引用

高校からすれば、間延び対策

本来なら必要ないセンター試験をなぜ高校によっては強制的に受験させるのでしょうか。

記事では高岡南高校が「3年間の勉学の成果を発揮する機会」と説明しています。

おそらく、他県の高校も似たような説明をするでしょう。

これは、言い換えれば間延び対策とも言えます。

つまり、推薦入試・AO入試で合格した生徒や専門学校合格の生徒は10月か、それ以前に合格が決まったとして、卒業までの4か月、勉強への意欲をなくしてしまいます。

進路が決まった生徒同士で遊ぶか、自動車免許でも取りに行くか、というところでしょう。あるいは、アルバイトするとか。

生徒本人と保護者はそれでいいかもしれませんが、たまらないのは一般入試組を抱えた高校教員です。

一般入試を控えた生徒は大学受験直前の半年、いや、3か月でも大きく成績が伸びます。いかにモチベーションを維持しながら教科指導をしていくか、教員の腕の見せ所でもあります。

そこに推薦入試・AO入試合格組が遊ぶだの、自動車免許だの、アルバイトだの、勉強を忌避しているとどうでしょうか。

一般入試組の生徒のモチベーションが大きく下がることは避けられません。

これでは高校教員は困るわけです。

そこで、一般入試組生徒のモチベーションを維持しつつ、推薦・AO入試組・専門学校組生徒が勉強から極端に忌避しないようにする、その手段がセンター試験の強制受験なのです。

どんな高校で問題になるか

このセンター試験の強制受験、まず、一般入試組が大半を占める進学校だとそうそう問題にはなりません。高校生と保護者からすればセンター試験を受験するのが当然、となっているからです。

それから、一般入試組が少数で、専門学校進学者や就職者が多数を占める高校でも、そうそう問題にはなりません。少数の一般入試組が出願すればいいだけ、との雰囲気が定着しているからです。

問題は、大学進学者が多数ではあるものの、一般入試組と推薦入試・AO入試組が拮抗しているか、後者が多数を占める高校です。

高校からすれば、なんとか進学実績を伸ばしたいわけで、そのためにもセンター試験受験は必要、と考えます。

一方、推薦入試・AO入試組の生徒と保護者はいい迷惑、としかとらえません。

本末転倒だが、ほかに手はない?

高校からすれば、進学実績を上げるためにも、一般入試組のモチベーションを維持するためにも、強制的に受験させたい。

不要と考える推薦入試組等の生徒と保護者からすればいい迷惑。両者の言い分は交わりそうにありません。

確かに本来、大学受験に必要であるセンター試験が大学受験以外の目的で使われるのは、本末転倒との批判もあるでしょう。

が、大学進学者に限ると、高校教員側の立場を考えれば、ほかに適当な手段があるか、と言えば、ないのが現状です。

大学進学後、国家試験・公務員志望ならセンター試験が役立つことも

私個人としては、大学進学者のうち、将来、国家試験受験が必要な医療・栄養・福祉系学部への進学者、それから公務員・教員志望ということであれば、センター試験受験は必要、と考えます。

理由は、これもセンター試験の本来の目的とは別の、副次的なものです。

つまり、センター試験は2日間で5教科をまとめて受験することになります。それから、その対策のために、広く勉強するわけです。

複数の分野について、広く学ばないと得点できないのは国家試験や教員採用試験、公務員試験でも同じです。

その経験を高校卒業の直前にしておくのは、将来への投資、という点ではそうそう高い買い物とは思いません。

それから、国家試験や教員採用試験・公務員試験以外の民間企業就職でも適性検査がついて回ります。

この適性検査は種類数が多いのですが、能力試験分野については基本は数学と国語です。

ただし、大手企業では英語や理科、社会を含む適性検査を採用しているところもあります。

そうした企業への選考に参加する可能性を鑑みても、センター試験受験は意味がある、と考えます。

専門学校・就職組には何かできないか

問題は専門学校進学・就職組です。いくら、「一般入試組のモチベーション低下という迷惑をかけてくれるな」との思いがあっても、「じゃあ、そのために1万円以上(2教科以下で1.2万円、3教科以上で1.8万円)をかけるのは負担が重い」との批判の方が強そうです。

専門学校進学・就職組を分けておくのはどの高校でもやっていそうですが、さらにセンター試験時期に合わせて別の行事を実施する、というのは有効そうです。

専門学校進学であれば、専門学校のカリキュラムについて入学前に準備する講座を実施するとか。

就職組であれば、就職対策講座を実施するとか。

別に個々の高校が主体となって実施する必要はありません。高校によっては専門学校進学者・就職者が少数で、教員の手が回らない、というところもあるでしょうし。

専門学校であれば、進学先の専門学校、あるいは、地域の専門学校団体が主体となるのはどうでしょうか。言うなれば、冬のオープンキャンパスなのですが、オープンキャンパスと言いつつ、参加者は専門学校進学が決まっている高校生限定。

そこで、専門学校団体が共同で開催すれば、結構な規模になりますし、個別の専門学校の負担も減らせます。高校側の受けもよさそうです。

進学決定者限定のオープンキャンパスは?(著者撮影/写真はイメージです)
進学決定者限定のオープンキャンパスは?(著者撮影/写真はイメージです)

就職組も同じで、各地域にある中小企業同友会などの企業団体が主体となって実施するのはどうでしょうか。

就職が決定しているのであれば、入社前教育、ということでマナー研修などを実施します。企業団体が主体となれば一社当たりの負担は大きく減らせます。

いずれにしても、現状ではセンター試験の強制受験について、私はある程度は避けられないもの、と考えます。

そのセンター試験は出願が10月6日(金)までです。センター試験が必要な方も、そうでなく、強制的に受験させられる方も、締め切りは締め切りなのでお忘れなく(石渡嶺司)。

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

教育・人事関係者が知っておきたい関連記事スクラップ帳

税込550円/月初月無料投稿頻度:月10回程度(不定期)

この有料記事は2つのコンテンツに分かれます。【関連記事スクラップ】全国紙6紙朝刊から、関連記事をスクラップ。日によって解説を加筆します。更新は休刊日以外毎日を予定。【お題だけ勝手に貰って解説】新聞等の就活相談・教育相談記事などからお題をそれぞれ人事担当者向け・教育担当者向けに背景などを解説していきます。月2~4回程度を予定。それぞれ、大学・教育・就活・キャリア取材歴19年の著者がお届けします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

石渡嶺司の最近の記事