進路相談8・地元の空港会社就職のためには地元の大学進学が有利?
質問:ともかく地元の空港会社に就職したいです。航空業界で働きたいけど、エアラインは厳しそうだし、なら空港のグランドスタッフかな、と。でも地元で就職したいです。地元企業に就職するためにはやはり地元の大学の方がいいですか?
ご質問に対しては、まあ地元の大学でいいんじゃないですか、の一言でおしまいです。
ただ、あなたのような発想、高校生ならまだしも結構な数の大学生(それも地方の)がしていて相当危険、というか、怖いな~と思います。
日本の地方には大体、空港があります(ないのは神奈川、京都など10府県)。
ありますけど、空港のグランドスタッフ(運営会社、航空会社のグランド関連)の新卒採用人数、どれくらいかわかります?
成田国際空港が20人前後。中部国際空港が5~7人。新関西国際空港(関西空港)が10人前後。羽田空港だとANAエアポートサービスが20人前後など。
これでも多い方で地方空港は長崎空港ビルディング(長崎空港)2人など数人程度。年によっては募集しないところもあります。
さて、具体的な県名などを挙げるとカドが立つので、とある県(中規模・文系学部ありの国立大、公立大が各1校、文系学部を持つ私立大3校)の採用状況をフェルミ推定で考えてみましょう。
「航空関連、それも空港で働きたい」「でも地元にこだわりたい」とする学生が「なんとなく」レベルも入れれば、地元の大学各1校につき、100人いるとします。
5校あれば500人。
しかも、ですよ。
「地元出身で近隣県の大学に進学」「地元出身で東京・大阪の大学に進学」という学生だっているはず。
それと「地元かどうかに関係なく空港で働きたいから手あたり次第受ける」という学生だっているはず。
近隣県を3県で合計10校くらいが対象、1校100人くらいとして1000人。東京・大阪・「どこでも」が各100人として300人。
合計1800人。これだけの数が募集枠2人だか10人だかの会社を受けるわけです。
2人なら倍率900倍、10人でも180倍です。
2014年のブラジル・ワールドカップの優勝国賭けオッズだと日本が126倍、アメリカが151倍、ガーナが201倍、アルジェリアが1001倍でした。
日本が1次グループで敗退したのはご存じのとおりですが、それよりも高い倍率です(ちなみに優勝国ドイツは5.5倍)。
地元だから、とか、×大学なら、とか、そういうのを超越した、ある意味、宝くじみたいな倍率です。
ところが、困ったことにこの「宝くじ」に人生をゆだねて、他は何もしない、という学生が結構います。怖いなあ。
地元にこだわる、というなら地元の企業を幅広く受けていけばどこかはあるはず。
あるいは、どうしても、空港・航空業界というなら地元以外にも受けていくべきですし、新卒でダメなら社会人転職で再起を期す、という方法も合わせて検討した方が幸せなはずです。
※『時間と学費をムダにしない大学選び2016』(中央公論新社)より引用