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厚労省の「ぐだぐだ記者会見」 オミクロン株対策に不安を与えてしまうのでは?

石川慶子危機管理/広報コンサルタント
厚労省HP 筆者撮影

厚労省アドバイザリーボードの座長らが、新型コロナウィルス変異型のオミクロン株への感染が確認された国内2例目の対応状況について、12月1日に記者会見を行いました。まだ、実態がよくわからないオミクロン株情報。緊張が走る会見かと思っていたところ、約40分間の会見は、苦笑い、派手なマスク、ずっと下向き、だらしない着こなし、間延びした雰囲気。何とも頼りない会見に見えました。一言でいうならば、「国民をないがしろにしたぐだぐだ会見」。これでは国民の協力など得られないのではないでしょうか。政府を支えるアドバイザリーボードへの不安が一気に高まりました。こ記者会見の行い方として何が悪かったのか解説します。

主な内容は、政府が新規入国を停止する前に空港から11月27日に入国した1名にオミクロン株が発見され、同乗していた114名を濃厚接触者としたこと、健康観察中であるとのこと。内容は複雑ではなく、報道陣からの質問は、114名がどこにいるのか、どのように健康観察しているのか。

幹事社が3問質問した後は、全てオンラインチャット質問。どうやら会場は、幹事社と内部関係者のみ。全ての報道陣はチャットの質問しかできない形式でした。見ていると何とまどろっこしい。パソコンの向こう側にいる記者を相手にしているため、終始目線は下でパソコンに向かって話しかけている。カメラの背後にいる国民を全く見ていない。

途中で補足説明に駆け寄った課長は、なぜか派手な福岡県の宣伝マスク(?)を着けて、立ったまま腰をかがめ、「自治体の方で体制強化しています。ゲノム解析能力あります」とパソコンに向かって話しかける。見ている方は何で下に向かって話しているのかわからない。パソコンのマイクに向かっている?とにかく国民から見えるのは、カメラがとらえた本人の頭のみ。

テレビカメラのマイクは音声をよくとらえていて、回答の声はよく聞こえるのですが、登壇者らの意識はもっぱらパソコン。「わかりにくくてすみません」「音声が聞きとりにくいですか」「もう一度説明します」の連発。質問する記者側はチャットでしかできないため、タイムラグが続いてしまいました。パソコンにひたすら話しかける登壇者を見るのは、異様な光景としか言いようがありません。

国民の関心が高い重要な会見がなぜチャットなのか、記者が音声を出さない形式にした理由が皆目わからない。国民に説明する意思があるのか疑います。記者を通して背後の国民に説明するといった本来の目的が全く果たせていません。こんな中途半端な絵になる会見であれば、いっそカメラを入れずにやればいいのです。カメラを入れるなら、司会が質問を読み上げて、登壇者はカメラに向かって回答する。どちらかにすべきでした。

最も許せないのが、司会役が終始半笑いでの説明であったこと。マスクをしているため、表情もわからない、と油断していたのかもしれませんが、あまりにも頻度が高いので、マスクの上からでもわかってしまいました。

「この空港の検査では・・・・まあ、答えると、(ハハ)この方だけ陽性だったと聞いています」

陽性でなぜ笑い?

「(ああ、ハハ)114人についてですね。今のところ、症状の連絡はないということです」

症状がなくても濃厚接触者とされた114名はショック状態であろうに。

「あえて(ハハ)、濃厚接触者とは言いませんが、濃厚接触者扱いです。え、あ、(違った?)今、課長から回答します」

別の課長が派手なマスクで駆け寄ってパソコンに向かって回答。「国際便であれば、前後2列を濃厚接触者にしますが、今回のオミクロンでは濃厚接触者を同乗者全員とします」

濃厚接触者の定義変更は非常に重要なのに内部で統一されていない?

さらに緩いやりとりは続きます。

「次の質問、あっと字が流れて、ハハ、ちょっと待ってください、、、」

「(満面の笑み)はい、115人の健康フォローはしているということでいいです。その通りです」

難しい質問を受けた際に、困って思わず苦笑いを反射的にしてしまうこともあります。しかし、ここでは説明の中での笑い。しかも「思わず」というよりは終始半笑い状態であることが許しがたい。

「回答させていただきまーす」「引き続きどうぞよろしくお願いしますー」

語尾を伸ばすために、ふざけているように見えてしまう。真剣にやっているのだろうか、と不安になってしまいます。

説明者は5名。着席は4名で支援が1名。司会者が中央で、肝心の脇田座長は端に着席。メインのスポークスパーソンがなぜ端なのか意味不明。彼らの服装は、ストライプシャツ、カジュアルなボタンダウンシャツ、派手なマスク。着こなしについては、スーツの上着はボタン外したまま、シャツの襟が飛び出ている、ゆるゆるネクタイ、ネームホルダーもかけたまま。会見の進行だけではなく、表情、言葉遣い、服装も着こなしも緩すぎで緊急事態になっていませんでした。

オミクロン株、解明されていないのに、なぜこんなに明るくのんきなのでしょうか。たとえ、深刻ではないにしても、国民の関心が高い内容については、きちんと感のある服装と態度、表情で緊張感をもって発信すべきです。また、チャットといったまどろっこしい形式ではなく、リアルタイムでの質疑応答により、的確にわかりやすく伝える責任があるのではないでしょうか。

参考動画:日テレNEWS配信 厚労省記者会見動画(YouTube)

https://www.youtube.com/watch?v=3eA9Nq3o9nw

【記事と連動した動画解説】

リスクマネジメント・ジャーナル(日本リスクマネジャー&コンサルタント協会)

危機管理/広報コンサルタント

東京都生まれ。東京女子大学卒。国会職員として勤務後、劇場映画やテレビ番組の制作を経て広報PR会社へ。二人目の出産を機に2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。リーダー対象にリスクマネジメントの観点から戦略的かつ実践的なメディアトレーニングプログラムを提供。リスクマネジメントをテーマにした研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱。有限会社シン取締役社長。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長

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