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SNS全盛期の時代 犬が人を次々に襲い咬んだ後、何が起こる?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

2月7日に、群馬県伊勢崎市の公園などで、四国犬が12人(子どもを含む)に次々に襲いかかり咬むという事故が起こりました。それ以外にも小型犬に襲いかかり、その後、小型犬が死んだとされています。

愛犬がこのようなことを起こすと、SNS全盛期の時代に、どのような展開になるのかを見ていきましょう。

保健所に電話が殺到

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イメージ写真写真:ロイター/アフロ

群馬県で12人を咬んだ四国犬は、動物愛護センターにすぐに保護されました。

ネット上でこのニュースが話題になり、人を咬んだ犬がどこに収容されているか知れ渡りました。そのため、動物愛護管理センターには、主に3種類の電話が殺到したそうです。

・人を咬んだ犬を殺処分すべき

電話の主は、子どもを含めて12人も咬んだ犬は、凶暴なのでまた人を咬む恐れがあり殺処分すべきであるというのです。

・人を咬んだ犬だけれど殺処分しないで

いくら人を咬んだからといって、殺処分はすべきでない。犬には罪はないので、ちゃんとしつければ大丈夫という考えです。

・人を咬んだ犬は悪くなく、飼い主の飼い方に問題があるので、犬の飼い方を教える

犬は悪くはない。飼い主がちゃんとしつけをしていないので、このようなことが起こった。または環境が悪かった。人を咬む犬にならないために、飼い主に犬の飼い方の指導をするので、飼い主の連絡先を教えてほしいという電話がかかってきたそうです。

一般的にはすぐに殺処分はされない

現在は、一般的には犬が人を咬んだからといってすぐに殺処分はされません。

飼い主が所有権を放棄すれば別ですが、それ以外は飼い主の元に戻ってきます。

今回の群馬県の四国犬は、狂犬病の予防注射をしていなかったので、狂犬病に罹患していないかどうかの検査があり、すぐに飼い主の元には返せないのです。

もちろん、犬が家から逃げて公園などに行き人や犬を襲ったので、行政の指導があります。行政は、狂犬病予防注射をし犬の登録をして、犬をつないで飼うことなどの注意をしました。

咬んだ犬が自宅に戻ってきても、飼えない可能性が高い

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イメージ写真写真:アフロ

四国犬の話ではなく一般的な話ですが、人を咬んだ犬が自宅に戻ってきても、これだけニュースやSNSで話題にのぼっていると、外に散歩に行けないのです。

近所の人はどの犬が咬んだのか知っているわけです。

猫なら散歩に行かないで家の中だけでも大丈夫です。しかし、四国犬ぐらいの中型犬になると散歩に行かないと、それこそストレスを感じて咬むなどの問題行動を起こしてしまう可能性が高くなります。

殺処分を免れて自宅に戻ってきても、事故の前のようにいかないわけです。それで、この犬のことをあまり知らないところにもらってもらうなどになるのです。

今回、事故を起こした四国犬は、日本では少なくなっている保存犬なので、引き取ってくれるところがある可能性が高いです。

まとめ

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イメージ写真写真:アフロ

日本には、狂犬病予防法という法律があり、犬の所有者は、犬を取得した日(生後九十日以内の犬を取得した場合は、生後九十日を経過した日)から三十日以内に、狂犬病予防注射を打って、その犬の所在地を管轄する市町村長に犬の登録を申請しなければならないのです。

咬む犬だから、狂犬病の予防注射を打つ必要があるわけではなく、飼い主には、飼い主全ての犬に狂犬病の予防注射を打つ義務があるのです。

そして、その犬の習性を知っていることが大切です。大型犬なら散歩の時間が1日1時間以上いる子がほとんどです。筆者の動物病院に来院しているダルメシアンは馬車の伴走・並走をする犬種なので、1日3時間の散歩をしています。四国犬などの猟犬も散歩の時間が長めに必要です。

そして、家の外に逃げないように2重3重に注意が必要です。散歩のときも首輪が外れないように、胴輪などもつけておいた方がいいですね。

犬は、人を咬んだときは興奮していますが、冷静になればなにかよくないことをしてしまったと、飼い主などを見て理解します。そんな思いを愛犬にさせないようにしましょう。

いまの時代、愛犬が人を咬んでしまうと、SNSで炎上していままで以上に誹謗される可能性が高くなります。

飼い主が、その犬の習性などを正しく理解して飼うと、このような悲劇が起こる可能性は低いです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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