Yahoo!ニュース

「推し」への熱量が社会貢献に? 若者向け動物愛護雑誌『HARBOR』が生まれた理由

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
『HARBOR』の編集部より提供

沖縄の動物愛護団体の人は、「子どもが動物愛護に対して正しい知識を持っていると、それをおじいちゃんやおばあちゃんに話すので、いいのですよ。たとえば、避妊手術をしないと猫は繁殖能力が高いので子猫をどんどん産んでしまいます。1回の出産で数匹で、年に3回、出産する子もいます。それなら、自分のうちの猫も不妊去勢手術をしようとおばあちゃんやおじいちゃんに言うようなるので」ということを教えてくれました。

この動物愛護団体は行政と一緒に小学生に猫の飼い方などの授業をしています。

子どもに猫の飼い方の知識を伝えることで、世代を超えて現代に合ったペットの飼い方が広まることを教えてもらいました。

今月創刊される『HARBOR』の編集者・菅原史稀さんも10代から20代の若い人に動物愛護について知らせたいと言っていて、沖縄の動物愛護団体の方と同じ構想を描いていることに感動しました。

さらに、若い人たちのは自分の”推し”のアーティストが犬や猫に接している様子を知ることで、より具体的なアクションもできると語ります。

菅原さんに、若い人向けに動物愛護の雑誌を作ることになった経緯や思いをお伺いしました。

『HARBOR』はどんな雑誌か?

『HARBOR』の編集部より提供
『HARBOR』の編集部より提供

石井:『HARBOR』を制作しようと思うに至った経緯を教えていただけますか?

菅原さん(以下は菅原):『HARBOR』は、カルチャー誌『クイック・ジャパン』編集部による新しいプロジェクトとして始動しました。

『クイック・ジャパン』は、これまで約30年間にわたり、主に若い世代向けのカルチャー=ユースカルチャーと並走しながらその現象の様相を捉え、誌面を通じて発信してきた媒体です。

そんな同誌の制作に携わるうえで、私たち編集部スタッフは、10~20代の若年層による“好きなもの”への熱量の大きさを日々体感してきました。

彼らは、誌面に登場するアーティストやカルチャーに対して熱狂するだけでなく、それらをより深く知ろうとする探求心、魅力を世間に伝えるためSNSなどで自ら発信する行動力もあります。

こうした光景を目の当たりにしながら、しだいに「このエネルギーを、メディアを通じて社会貢献へ繋げることはできないか?」と考えるようになりました。

世の中の関心は高まる反面、情報が少ない「動物愛護」をテーマに

菅原:そんなアイデアについて編集部内で話し合っていたところ、昨年10月より新たに『クイック・ジャパン』の編集長となった田島から「動物愛護関するメディアを作ってみてはどうだろう」と声が上がりました。

“ペットも家族”というフレーズもよく聞かれるようになった昨今では、動物を大切にしたい/保護動物を迎えたいと考える人も増えている一方、具体的な施策・適切な保護団体選びを発信しているメディアが多いとは言えないのが現状です。

田島自身も保護犬・保護猫を迎え入れたいと考えたこともありましたが、保護動物を迎え入れるための条件にかなわず、実現できなかった経験があります。

それであればメディアに関わる仕事を続けてきた経験、そして『クイック・ジャパン』というプラットフォームを活かし、動物愛護について考える“入り口”を作り出そうと思い至りました。

課題解決のため、動物との関わりが異なるあらゆる人に届けたい

石井:若い世代にということでしたが、具体的にはどんな人に向けて作った媒体ですか?

菅原:動物にかかわる各分野の専門家やペット業界関係者、動物の保護活動に関心の高い層はもちろん、ペットがいる人、様々な事情で動物と一緒に暮らすことができない人、動物に対して関心を持ったことがない人など、あらゆる人が届けることを目指しています。

異なる立場にいる人たちの声が調和することで、社会全体が抱える課題の解決への一歩が踏み出されるのではないかと考えています。

創刊号の特集「Knowledge Saves Animals(“知ること”から始めよう)」では、かねてより動物の保護活動について関心を寄せ、保護犬と共に暮らした経験も持つ女優でモデルの北野日奈子さんによる、神奈川県動物愛護センターの視察レポートや、施設職員への取材記事を掲載します。

北野さんのファンの方や同世代の若い人たちが、動物愛護について考えるきっかけになればと思います。

【『HARBOR』の取扱店】

QJストア ※一般書店流通の予定はありません。QJストアのみで取り扱い予定です。

発売:2024年1月31日(水)

発送:2024年1月30日(火)頃より発送開始

価格:3,190円(本体2,900円+税)※送料別

詳細は太田出版のサイトをご覧ください。

雑誌の売上の一部は動物愛護活動に寄付されます。

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサーが企画・執筆し、編集部のサポートを受けて公開されたものです。文責はオーサーにあります】

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

石井万寿美の最近の記事