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倒壊家屋で行方不明者を捜索する犬、「警備犬」を知っていますか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

犬好きな人には、ジャーマンシェパードが活躍している様子を見ると本当に嬉しいです。

能登半島地震では、倒壊家屋の中に行方不明者がいる可能性があります。

そのなかで「警備犬」がお手柄を立てました。警備犬の存在はまだ、あまり知られていないので、見ていきましょう。

石川県の被災地で「ワン」

災害地で、行方不明者の捜索するのは「災害救助犬」です。SNSでは災害救助犬が懸命に倒壊した家の中に入って活躍している様子が投稿されていました。それ以外にも「警備犬」も働いているのです。

時事通信社によりますと、警備犬の訓練では、災害現場を模した場所で木箱などに人(正存者)が隠れ、ほえ続けることでハンドラー※に要救助者の存在を知らせます。それ以外の場面ではほえないように訓練されていて、一度だけほえる合図はないのです。しかし、ある警備犬は、「ワン」と一度だけほえてハンドラーの顔を見たそうです。そこには、心肺停止状態の女性がいたのです。

この警備犬は、大阪府警に所属して、毎日、訓練をして人の捜索などをしているのですが、教えていない反応をしてハンドラーに異常を知らせたのです。このようなことは、なかなか機械ではできないです。警備犬は知性が高いので、命令にないことも応用し、考えてハンドラーに伝えたのです。

賢い使役犬は、教えていることを応用して、それ以上のことをするすばらしい能力を持っています。

※ハンドラーとは、この場合は警察犬や警備犬、救助犬、麻薬探知犬、セラピードッグなどが与えられた役割を果たせるよう支援する人のことです。

警察犬と警備犬は違う

警視庁警備犬のサイトより
警視庁警備犬のサイトより

警視庁警備犬のサイトによりますと、警察犬と警備犬は違うそうです。

【警備犬】

警備犬は、警備部に所属し、 警備の現場での「爆発物の捜索」「犯人の制圧」「災害救助」などが任務です。

【警察犬】

一方、警察犬は刑事部に所属し、 事件現場において優れた嗅覚で犯人を追跡し、 捜査活動を支援するのが任務です。

【警備犬の首輪によって任務が変わる 災害現場では鈴が付く】

警備犬は、 犬の中では、エリート中のエリートです。

上述のように、犯人の制圧などがあるので、その場合は、犯人を襲ってもいいことになっています。

たとえば、 革の首輪(鈴が付いていない)を着けられると犯人制圧のため、 人にかみつくことをハンドラーから許されています。

一方、災害現場で獰猛なスイッチが入ると困るので、首輪の種類が替わったことによって、 自分の任務が変更されたことを知ります。

災害現場では鈴が付いている首輪になり、警備犬は人を探す任務だと理解するのです。

災害現場で倒壊した家や土砂に埋もれている生存者を嗅覚で探し、 救助活動を行います。

そして、鈴の首輪では、警備犬の鈴が鳴るのでハンドラーから離れて捜索している警備犬の居場所がわかります。

【警備犬の働く場所】

災害現場以外にも成田空港の周辺に警備犬が配置されています。ロケット弾などを打ち込まれたことがあるので、その警戒のために働いています。火薬と爆薬の臭いがすると鋭い嗅覚でわかります。

G7広島サミットのときも、警備犬は活躍しました。

【警備犬の種類】

警備犬はほぼジャーマンシェパードです。闘争心がある犬なので、あまり気性がおとなしい感じの犬は少ないです。他には、ラブラドルレトリバーなどがいます。

自衛隊の警備犬

イメージ写真
イメージ写真写真:イメージマート

警察以外にも現在警備犬を導入しているのは航空、海上各自衛隊の主要基地、分屯基地などです。

以前は、「歩哨犬(ほしょうけん)」という名称でしたが、現在では「警備犬」という呼称になっています。

警備犬の任務は、基地内の巡回警備やゲートにいることで、不審者への警戒などができます。こうした警備・警戒行動に加え、犬の優れた嗅覚能力を生かした爆発物や不審物の探知、不審者を制圧するための襲撃などの任務も担っています。

筆者は、高校時代にジャーマンシェパードを飼っていたのでかわいいと思いますが、一般の人には怖い犬に見ますので、大型犬が巡回・警備している姿を外部に見せることで、侵入を未然に防ぐ抑止力にもなります。

警備犬を見たら注意点

街で警備犬が仕事をしている姿を見たら、近くに寄りたくなります。しかし、警備犬には近づかないよう注意されました。

上述したように、犯人を襲っていいと教えられている犬なので、ハンドラー以外になつかないように訓練されています。警備犬には、警戒するという任務があることを忘れてはいけません。

もちろん、犯人を襲撃するだけでなく、ハンドラーがそれを抑制したら止めるように訓練されています。

警備犬はペットではないので、遠くから見て応援してあげてください。

まとめ

最近は、監視カメラや各種警戒装置があるのですが、やはり警備犬は必要です。警備犬の姿を見るだけで、できる犬という風格を表しているので犯罪の抑止効果がありますし、今回の能登半島地震で心肺停止の人を発見したのですから。

犬の持つ鋭い嗅覚などすばらしい力で、人の生活をより安全にしてなおかつ、捜索活動もしてくれるのです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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