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【獣医師が解説】災害時に対する犬や猫の精神的なケアの必要性

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

1月1日に石川県能登地方で発生した最大震度7の地震(令和6年能登半島地震)から14日以上がたちました。この地震に伴う震度1以上の有感地震※の回数は800回を超えました。日ごとの地震回数は減少傾向となっています。

しかし、9日(火)17時59分頃には佐渡付近でM6.0の地震が発生し、新潟県長岡市で最大震度5弱を観測していました。

筆者の動物病院は大阪にありますが、富山県の犬を見ているので、どんな様子だったのかを飼い主にメールで尋ねました。

「初めてこのような大きな地震を体験しました。ニコ(犬の名前)は寝ていたので、初めは気づきませんでした。起きてからは少し興奮していました。余震がなかなか収まらなくて終わりが見えないところが不安です」

とニコちゃんの飼い主のHさんからメールが届きました。

犬や猫の中には、地震を初めて体験する子がいるので、そのケアの仕方をお話しします。

※有感地震とは、人体で感じることができる地震のことです。気象庁は地震を震度0〜震度7と分けていますが、このうち震度1〜震度7が有感地震です。

有感地震が続く地方は、犬や猫の精神的なケアも必要

もちろん飼い主も有感地震が続き不安な思いをされていると思います。犬や猫は、人間より敏感に地震を感じることができる子が多いのです。こういった反応が起きていることを、飼い主は理解して、ペットと一緒に暮らしましょう。

犬や猫が、一度、地震を体験すると音や揺れに敏感になることは、正常な反応です。特にボーダーコリーなどは、聴覚が優れているので、耳介を普段より左右や後ろ向きに動かして、音に敏感に反応します。

敏感な子は、有感地震が続くと以下のようなことが起きる可能性があります。

・睡眠時間が短くなる

・睡眠が浅くなる

・落ち着きがなくなる

・食欲不振

・下痢が続く

・オシッコをトイレ以外のところでする

・痙攣が起きる

上記のようなことがあれば、動物病院に相談した方がいいです。

飼い主ができる犬や猫の精神的なケア

写真:イメージマート

有感地震が続く地方の飼い主は、不安になっているので、難しいかもしれませんが、いつもより犬や猫のスキンシップを増やすといいですね。そして、安全なときに、犬の場合なら散歩の時間を増やすのもおすすめです。

猫の場合は、ペット用のこたつをおく、人のこたつの中に入れるのもおすすめです。猫は犬と違って、単独行動の動物なので1匹でじっとできる空間を作るのもいいです。

それに加えて、地震で少し物が落ちてきても大丈夫な机の下などに寝床にするのもいいかもしれません。

そして、地震の起こる前のルーティーンを行って日常を取り戻してもらうと、いいですね。

現場に行けない人の支援

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

能登地方に住んでいない人は、直接、現場に行きにくいのでどのようにすればいいのでしょうか。もちろん、寄付などもあります。

それ以外にライフラインが回復している知り合いの飼い主に、お見舞いのメールなどの連絡を入れるのもいいです。

どのようなメールを送ったらいいか悩むところです。無理に励ましたりせず、悲しみや苦しみやそういったことがいろいろ表現されたりすることが当たり前だと思って寄り添って頂くのが一番いいと思います。

この震災を乗り切るためには体はもちろん、飼い主とペットの心の健康を保つことも大切です。被災地の一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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