Yahoo!ニュース

「犬の謎の呼吸器疾患」が全米で拡大 飼い主ができる対処法を獣医師が解説

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

NATIONAL GEOGRAPHICは「イヌの謎の呼吸器疾患が全米で拡大、おそらく新たな病気、最前線の専門家に聞いた」とセンセーショナルなタイトルの記事を掲載しました。

謎の呼吸器疾患というワードを見た愛犬家たちは、「うちの子は大丈夫かな」「日本で流行したらどうしよう」などとSNSで話題にし、Xではトレンド入りしました。

今日は、米国で流行している「謎の呼吸器疾患」とはどんなものかと、その対処法をお伝えします。

「犬の謎の呼吸器疾患」とは?

FUJI TV DC OFFICEフジテレビDCのXより

米国で謎の犬の呼吸器疾患が流行していると報道されています。全米50州のうち14州でこの病気が確認されているそうです。

記事には、以下のように掲載されています。

「既知のRNAやDNAウイルスは何も見つかりませんでした。真菌、バクテリア、原生動物(単細胞で運動性がある生物)、後生動物(多細胞動物)も見つかりませんでした。既知の病原体と密接な関連はなかったのです」と、米ニューハンプシャー獣医学診断研究所の上級獣医学病理学者であり、米ニューハンプシャー大学の教授でもあるニードル氏は言う。また、イヌもかかる可能性がある新型コロナウイルスの検査も陰性だった。

つまり、この病気にかかった犬は、呼吸器疾患の症状が出ますが、一般的な犬の呼吸器疾患の検査結果は全て陰性で病原体がわからないのです。もちろん、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でもないことがわかっています。

人々は、パンデミックである新型コロナウイルス感染症を体験しているので、「原因不明」「謎」「未知」というキーワードを見ると、不安になるのは無理もないことですね。異常に怖がることはなく、こんなときこそ科学的に正しい知識を持つことが大切です。

□犬の謎の呼吸器疾患の症状

犬の一般的な呼吸器疾患の症状は、くしゃみ、鼻水、咳、発熱、だるさ、食欲不振などがみられます。感染した犬のほとんどは軽症(死亡率10%程度)で、2〜4日の潜伏期間を経て発症後3週間以内に完治することが多いとされています。

この謎の呼吸器疾患は、完治する期間が長引きます。最低でも10日ほどはかかるそうです。ただし、重症化した犬では二次感染などによって肺炎を起こし、死亡する可能性もあるそうです。

□呼吸器疾患の感染経路

呼吸器疾患に感染する経路として「接触感染」と「飛沫(ひまつ)感染」があります。

・接触感染

呼吸器疾患に感染した犬の鼻汁や唾液には多くの病原体が存在します。感染した犬と一緒に遊ぶなど直接的な接触によって感染します。

ほかにも、感染した犬が使用した食器やおもちゃ、給水ボトルやケージ、飼い主さんの衣服などとの間接的な接触によっても感染します。

・飛沫感染

呼吸器疾患に感染した犬がくしゃみや咳をした際に、病原体を含んだ飛沫をほかの犬が吸い込むことで感染が広がります。

□人間には感染しない

いまのところ、謎の呼吸器疾患になっている犬の飼い主には感染していないそうです。犬同士では感染しますが、人間には感染しないようです。

犬が呼吸器疾患になったときの対処法

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

愛犬と接触することがある家族や友人などのなかで、この犬の謎の呼吸器疾患が流行している国や地域への渡航歴がある場合は、注意が必要です。

万が一、愛犬がこの呼吸器疾患になってしまった時にはどのような対処をすべきなのでしょうか?

□軽症の場合

安静と栄養管理に徹します。加湿や室温調整、水分補給も忘れず行いましょう。症状が3週間以上続く場合や、重症化しやすい子犬や老犬や基礎疾患を持っている子場合は、軽症でも動物病院に連れて行きましょう。

ほかの犬との接触を避けるため、感染症が疑われる場合には、受診前に動物病院へ電話するようにしましょう。

□重症の場合

高熱が続く、食欲がない、ぐったりしている、呼吸困難に陥っているような場合には、急いで動物病院に連れて行きましょう。この場合も、動物病院へは受診する前に電話をしておいたほうがよいでしょう。

「犬の呼吸器疾患」の懸念される場所は「多頭飼育」

呼吸器疾患が流行して、一番懸念される場所は、犬の繁殖場、ペットショップ、保護施設などの多頭飼育しているところです。

感染経路が、接触と飛沫なので、多頭飼育しているところは、病気が一気に広がる可能性があるのです。子犬、老犬、心臓病などの基礎疾患を持っている子などは、感染して悪化しやすいです。

理想は、別の部屋へ速やかに隔離した方がいいのですが、現実的には難しいです。

呼吸器疾患が出れば、ケージや食器、給水機、床材、タオルなどは塩素系の消毒液や洗剤を使って消毒しましょう。

「犬の呼吸器疾患」の予防策

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

飼い犬を守るためにできる予防策はいくつかあります。まず、住んでいる地域で犬の呼吸器疾患が流行しているかどうかを確認しましょう。地元のニュースを見たり、獣医師に問い合わせたりするとよくわかります。

最大のリスクは「ほかの犬と関わること」です。公園、ペットホテル、トリミング、ドッグランなどの場所に行かないことです。犬は、人のように満員電車に乗って仕事に行く必要がありません。呼吸器疾患が流行すれば犬同士を接触させないこと、感染を防ぐことができます。咳をしているなど呼吸器疾患の症状が出たからと遺棄しないように。

早く病気の原因が解明されて、治療が進むことを祈るばかりです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

石井万寿美の最近の記事