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動物愛護団体の犬猫が、なぜ神奈川県警に押収され約80匹が行方不明か #専門家のまとめ

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(提供:イメージマート)

動物愛護の精神が高まりつつあります。虐待があれば警察に通報して、犬や猫などを安全な環境で暮らしてほしいと思っている人も多くなっています。獣医師は、2019年に動物愛護管理法が改正され、虐待があれば、通報することが義務になりました(以前は努力義務)。

神奈川県警が動物愛護団体のシェルターなどから押収した犬や猫計約110匹のうち、約80匹の行方が分からなくなっていると、SNS上で話題になっています。

県警は押収した犬や猫を全て自らの施設で管理していたわけではなく、別の動物愛護団体にその管理を委託。その団体が分裂した結果、誰がどの犬や猫をどこで管理しているのか特定できなくなっています。

犬や猫は押収物にあたるので、刑事訴訟法(123条)で留置の必要がなくなれば事件が終結する前でも所有者に還付しなければならないと定められています。

犬や猫の所有権は押収を受けた保護団体にあり、その団体が所有権を破棄しないと、その子らを保護できないのです。

つまり虐待の疑いのあるところに戻る可能性があるのです。そのため、委託された動物愛護団体が元の愛護団体に戻るのを危惧して、犬や猫をすでに譲渡しているかもしれません。

▼押収された犬猫は、警察ではなく愛護団体に委託。その愛護団体が分裂し、連絡が取れなくなっています。そのため、80匹の犬や猫が行方不明。

▼押収を受けた愛護団体「レスキュードアニマルネットワーク」の代表は、「命がある動物なので、早く自分のもとに返してほしい」と主張

▼動物愛護団体は、しつけという口実で、犬や猫を叩く、蹴るなどをしていたので、虐待と認めら、代表は刑事告発。。その犬や猫を神奈川県警がけがの有無を調べるために押収

まとめ

飼い主がしつけできないということで、愛護団体に犬や猫を託したら、その施設で虐待の疑いがありました。それらの犬や猫の所有権が愛護団体にあるので、戻してもらおうと思っても、そう簡単ではありません。今回は、その犬や猫は警察に押収されていましたが、行方不明ということが起きてしまったのです。

将来的には、犬や猫は虐待の疑いのあるところに戻さず、行政がすみやかに保護できるようになることを願います。行方不明の犬や猫が動物愛護に基づいて飼われていますように。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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