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【獣医師が解説】「水中毒」を知っていますか?犬と川や湖で水遊びするときに気をつけたいこと

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

水は、犬が生きていくために必要不可欠なものです。

その一方で、犬が熱中症になってはいけないと必要以上の水分を摂取させると水中毒を起こす恐れがあります。水中毒の症状や対策について解説します。

なぜ、犬が水中毒になるか?

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イメージ写真写真:イメージマート

「水中毒」という言葉を聞かれたことはあるでしょうか?人の病気の1つとして知られるようになって来ています。人は精神疾患などから、この水中毒になる場合が多いです。

一方、犬にも同じ症状が起きることがありますが、精神的なことは少なく、遊びなどで水中毒になることがあります。

たとえば、飼い主は暑いので、ホースで犬と遊びをしたりします。そのときに、多量に水を飲んでしまった場合になる可能性があります。また、川や湖で口を開けたまま泳いで大量の水を飲む、水の中に投げられたボールを何度もキャッチして水を飲んでしまうなどがあります。

犬の水中毒は、川や湖に行ってや水遊びなどでなることがほとんどです。部屋にいる犬が、水が置いてあるので多量に水を飲んで水中毒になることはほとんどありません(糖尿病、腎不全などで多飲多尿になることは、ありますが、それとは別です)。

水中毒とは?

水を多量に摂取することによって尿の処理能力が低下すると「希釈性低ナトリウム血症」という状態が起こります。

血液中のナトリウム濃度が低下し、電解質のバランスが崩れることで、体に様々な不調があらわれます。

水中毒の症状

水中毒の症状は、意識がなくなりだらりとすることが多いので、熱中症が悪化したようにも見えます。暑い日に、水遊びさせていたけれど、熱中症にかかってしまったと飼い主は思いがちです。

動物病院に行き血液検査すれば、ナトリウムなどの電解質が著しく下がっているのですぐわかります。具体的な症状は以下です。

・ふらふらする

・怠そうな感じ

・吐き気

・大量のよだれ

・腹部の膨満

・瞳孔散大(明るい所にいるのに瞳孔が大きくなっている)

さらに重篤な症状では、呼吸困難、昏睡、痙攣などがあります。このような場合は、命にかかわります。

水遊びをしていて、上記の症状があればすみやかに動物病院に連れていきましょう。

水中毒の予防

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水中毒が最も起こりやすいのは、川や湖でのレジャーです。

また水に向かってボールを投げてモッテコイ遊びをすることもハイリスクです。ボールを咥えると必ず大きく口が開くため、水が入りやすくなるからです。

ラブラドールやニューファンドランドなどは水の中で活動するよう改良されてきているので、泳ぐ時に自然と口を閉じることができる個体が多いですが、一般的な犬は、口を開けたままで水に飛び込んだり泳いだりすることが少なくありません。愛犬が、川や湖で泳いでいるときに、口を開けていないかをよく見てください。

これらは水中毒のリスクの高い行動です。

長時間ホースの水に犬が飛びついて遊ぶことで水中毒になることもありますので、注意してください。

犬が水に入って遊んでいる時には頻繁に休憩を挟んで、排尿をする機会が増えるようにすることが大切です。

まとめ

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猛暑が続いているので、愛犬と水遊びをしたくなります。【獣医師の警告】犬との川遊びで気をつけたい。その危険性と安全対策という記事も書きました。さらに、水中毒は頻繁に起きる病気ではありませんが、淡水の場合にもリスクがあるという知識を持っておくことは大切です。

大切な愛犬を守るための知識をバージョンアップさせて、この猛暑を乗り切りましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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