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徳島の県境で秋田犬に続いて柴犬の遺棄も相次ぐ。その背景とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

動物の保護活動をしている山本千晴さんが、徳島県と高知県の県境で保護した柴犬についての記録を見ると、2021年3月から今年の2月にかけ、約2年の間に20匹の柴犬を保護し、それに加えて今年4月にも、徳島県と香川県の県境の山奥で5匹の柴犬が保護されたとJRT四国放送は伝えています。

保護された柴犬の特徴

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イメージ写真写真:アフロ

保護された柴犬は、ある特徴があります。それを見ていきましょう。

徳島県と高知県で県境の20匹

・雌犬が多い

・雌犬は、乳腺が発達しているので、出産経験がある可能性が高い

・年齢が、5歳から10歳(若い柴犬はいない)

徳島県と香川県の県境の5匹

・歯が削られている

・爪が伸びている

・車に寄ってくる

・声帯が取られている

上述の柴犬の特徴を見ると、高知県境と香川県境のとは違う人が遺棄したのかもしれませんが、この2箇所の柴犬は、ペットとして飼われていたものとは考えにくいです。

その理由は、雌が多いことと、その多くは出産経験があるということです。一般家庭で飼われている柴犬は、ほとんど出産させず、不妊手術します。犬の平均寿命は、約14年あるので、早めに不妊手術をしておかないと、7歳ぐらいに乳腺腫瘍や子宮蓄膿症になりやすいからです。

それに加えて、保護された柴犬の雌が、ほぼ出産経験があると推測されているので、繁殖用に飼われていたのでしょう。

その上、歯を削るなどは、よほどのことがないと獣医師はしません。筆者は街の開業獣医師なので、犬の歯を削ることはしたことがないのです。診察で、そのような子を見たことがあります。遺棄されて保護施設にいた柴犬が、噛むことがあるので、なかなか里親が見つからず、そのため犬歯を削られた子がいました。

爪も伸びているので、十分な運動もしてもらっていなかったのでしょう。

動物愛護管理法が改正され施行

東京都動物愛護相談センター 令和3年6月1日より施行される改正動物の愛護及び管理に関する法律のお知らせ(抜粋)より
東京都動物愛護相談センター 令和3年6月1日より施行される改正動物の愛護及び管理に関する法律のお知らせ(抜粋)より

2021年(令和3年)6月1日より、動物愛護管理法が、改正されて施行されました。犬猫を扱うペット業者の繁殖・飼育方法に、飼育頭数の上限やケージの広さ、出産の回数、出産の年齢制限などの「数値規制」が導入されたのです。

高知県の県境で、遺棄されたのは、2021年からこの2年で、25匹の柴犬が遺棄されています。それは、この動物愛護管理法の施行に関係があるのではないでしょうか。6歳までで、6回しか出産できないのです。つまり6歳以上で、出産を6回した高齢の柴犬を繁殖用に使えないのです。

ブリーダーからすれば、犬は生活の糧です。愛情を持って一生飼い続けることが、困難なところは、このように遺棄したのかもしれません。

なぜ、柴犬が遺棄されやすいのか?

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イメージ写真写真:アフロ

動物愛護管理法が改正されて、数値規制をされたのは、全ての犬種です。それだったら、他の犬種も山の中に遺棄されるのでは、と思う方もいるかもしれません。なぜ、柴犬がこんなに多いのでしょうか。それは以下のような理由があります。

・柴犬は成犬になると、新たな人に懐きにくい

秋田犬のときもそうでしたが、日本犬は、洋犬に比べてフレンドリーでないです。成犬になって、新しい飼い主に懐くのに、時間がかかります。

・威嚇行動がほとんどなく、すぐに噛む子もいる

犬歯が削られていた柴犬がいたことで、わかると思いますが、やはり噛む子がいます。洋犬は、噛む前に、口角をあげる、鼻に皺をよせるなどの威嚇行動の次に噛む子が多いです。その一方で、威嚇行動がほとんどなく、噛まれることもあるのです。

・体重が10キロ程度なので、小型犬でない

5キロまでの、チワワやトイプードルなどは抱っこをしたりできる大きさなので、飼いやすいです。柴犬は個体差がありますが、体重が約10キロあるので、飼い主は体力がいります。

・散歩が毎日、必要な犬種

犬は、どの子も散歩が必要ですが、小型犬なら、雨の日、飼い主が多忙なときに、散歩に行かないでもなんとかなる場合が多いです。柴犬は、中型犬なので雨の日も飼い主が忙しい日も散歩が必要です。

徳島県の柴犬の遺棄の背後にあるもの

動物愛護管理法が改正されて、2021年6月から施行されました。繁殖用で飼っていた犬が、新しい飼い主が見つかればよかったのですが、柴犬という犬の特性も加わり、このように遺棄されたのではないでしょうか。

愛護動物の劣悪な飼育環境を改善するために施行された法律ですが、山に遺棄されて、彷徨っていたのです。動物愛護管理法が改正されて、行き場を失う子が出ないように、既存のブリーダーには、経過処置として、段階的に適用して2024年(令和6年)6月から完全施行になっています。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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