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中学に侵入し教員を切り付けた男が“猫殺し”事件への関与をほのめかす。なぜ猫が虐待の対象になるのか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

TBS NEWS DIGよると、埼玉県・戸田市の中学校に侵入し男性教員を切り付けたとして、高校生の17歳の少年が逮捕されました。少年は、さいたま市内で切断された猫の死骸が相次いで見つかった事件についても関与をほのめかしているということです(まだ正式に、この少年が猫を殺害したと明らかになったというわけではありません)。男性教員の回復を願っています。

今日は、なぜ、猫がこんな悲惨な目に遭うのかとその対策を考えてみましょう。

なぜ、猫が悲惨な目に遭うのか?

猫が殺害され、そのうえ、その猫が切断されて公園や学校などに置かれていたということを聞くと、耐えられないです。

そんな残酷なことができるのか、理解しがたいです。なぜ、猫がこんな悲惨な目に遭うのかを考えてみましょう。

□犬には狂犬病予防法があるが、猫にはそれが適用されない

犬は、狂犬病予防法があるので、飼い主がいない犬が公園などにいれば保健所によって捕獲されます。

その一方で、猫が公園にいても狂犬病予防法が適用ではないので、保健所に連絡しても猫は捕獲はされません。そのため、猫は人間に捕まりやすくなるのです。

□地域猫・TNRなどで人懐っこい猫になる?

最近では、野良猫が増えないように、TNR(Trap・捕獲、Neuter・不妊去勢手術、

Return・元の場所に戻す)という不妊去勢手術をして、元にいた場所に戻しています。TNRは、野良猫の繁殖を抑えて自然淘汰で数を減らしていく活動です。このような活動は、1990年代に滋賀県で開始されたといわれています。

全部の野良猫にTNRをしても飼うことができないので、公園などが猫の生活圏です。猫の保護活動をしている人から、地域猫として餌をもらったりして世話をしてもらっているので、人懐っこい子が多いです。

このようなことから、30年ぐらい前より、野良猫はずいぶんおとなしくなり、捕獲しやすくなりました。それまでの猫は、人間を見れば火が付いたように鳴いたり、捕獲しようとすれば、爪を出したりして狂暴なる子が多かったです。

上記のような理由から、今回の事件のように、猫殺しをする人がある一定数いるので、猫が捕獲されてしまい、虐待されたりしやすくなっているということもあります(だから、TNRをしてはいけないといっているのではありません。悲しい現実もあることも知ってほしいです)。保護猫活動をしている人は、こんな虐待に遭わないためには、狂暴な猫がいいという人もいます。

猫が危険な目に遭わないために

イメージ写真
イメージ写真写真:アフロ

猫が安心して暮らせるためには、野良猫を生み出さないことです。

猫は繫殖能力が旺盛な動物なので、不妊去勢手術をする必要があることを多くの人が認識することが必要です。

野良猫のTNRをするということは、猫が外で生活しますが、なるべく里親・新たな飼い主へ譲渡できるようになることがベストです(なかなか難しいことですが)。

普通では考えられない猫殺しをする人がいるので、猫は完全室内飼いするのが望まれてます。

猫を虐待する人が、エスカレーターして、次に人間を殺害しようとする人もいるといわれています。猫を殺害したり虐待したりするような人を生む出す社会にならないようにみんなで知恵を出し合う必要があります。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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