「猫に服を着せる」問題を獣医師が解説。やむを得ない事情も
いまの時期、犬は散歩に行くときに服を着ている子が多くいます。防寒のために犬が服を着ることは一般になり、ペットショップにはカラフルな服が並んでいます。
犬と同じように、猫も服を着る子が増えているのです。猫に服って「チャラチャラしているんじゃねーよ!」と怒っている人がいるかもしれません。しかし可愛いだけで、服を着ているのではないのです。今回は、いまどきの「猫の服事情」を解説します。
元野良猫で家に来たときは、瘦せ細っていて貧血気味
猫の飼い主のInstagramを覗いていると、猫に服を着せている写真が投稿されていました。猫にも服を着せる時代がやってきたのです。
上の写真の后梅ちゃんは、保護猫で元野良猫です。Iさんのところに来たときは、瘦せ細っていて貧血している状態でした。
もちろん完全室内飼いですが、それでも服を購入されたのです。その理由は、ベランダで日向ぼっこや通院をする際などに服を着せて、少しでも快適に過ごしてもらうためなのです。
獣医療も進んできて、昔なら助からない子猫も生き延びることができます。本来なら母猫やきょうだい猫と一緒に暖を取るのですが、野良猫の子は、一匹で保護されることが多く保温が必要なのです。低栄養な子は、体温調節がまだまだ上手くいかず、低体温を起こしやすいので服を着せるのです。痩せているので、寒さに弱いのです。まさに寒さが骨身に沁みるのを防ぐために服を着ています。
彼らは、厚着をして病院にやってくるのです。冬場に服を着ていないと、具合の悪くなる猫もいます。
がんのために温活で服を着せる
がんの子になる原因はいろいろとありますが、ひとつは免疫不全です。そのため、体を冷やすとよくないので、服を着ている子もいます。
高齢の猫になると、体重が2キロを切る子もいます。全身毛に覆われている猫でも低体重だと、体温調節が上手くいかず、重ね着をしてくる子もいるのです。人間でいうところのTシャツのような綿素材の上に厚手のコートのようなもの着てくる子もいます。下に湯たんぽを置いて、フリースなどを巻いてケージに入っているのです。
こういう子は、診察する前に「裸にして」つまり、服を脱がしてしまいます。猫の裸って何?と思われるかもしれませんが、がんで痩せてきた子は服を着て来院する子も多くいます。
術後服
避妊手術などで、開腹した子は、患部を舐めないために、術後着の子もいます。猫の舌は、おろし金のようにザラザラとしているので、その舌で患部を舐めるとよくないので術後服を着るのです。
皮膚病の子
アトピー性皮膚炎などを持っている子は、治療をしていても24時間、痒みが伴います。彼らは仕事をしているわけではないので、食事をしているとき以外は、ずっと掻いている子もいます。そんな子は、皮膚を守るために、体を多く覆うような服を着ています。舐める、掻くことで余計に皮膚病が悪化するからです。
まとめ
昔は、猫は外に行くことも多く服を着る猫などはいませんでした。猫に服って「チャラチャラしているんじゃねーよ!」と、疑問に思われていたかもしれません。時代は流れて、野良猫が保護されて低栄養の子もいるし、寿命も飛躍的に延びてがんで痩せ細っている子もいるので、このような猫の事情があることをご理解いただければ、と思っています。
注意点として猫のなかには、犬と違ってウールサッキングといって布を噛みちぎって食べる子もいるので、その子には、もちろん服を着せることはできません。
彼らはフサフサの毛に覆われていますが、やはり冬になると寒がる子もいるのです。ちょっと服を着ることで、病気になるリスクを減らしたり、快適に過ごすことができるのですから。いまの時期、筆者の病院では診察を終えると診察前に脱がした服をちゃんと着せて飼い主のところに彼らを連れて行っています。
寒さに弱い猫のために、これからの季節はしっかり防寒対策のひとつとして服を着せてあげたいですよね。ちょっとした工夫でも、愛猫が寒い思いをせず快適に過ごせるようになります。