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【世界最高齢の猫は27歳】人間なら120歳の元野良猫、数奇な運命を生き抜く?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
ギネス世界記録 公式チャンネル より

ギネスワールドレコード社は、英国在住の「フロッシー」ちゃんを世界最高齢猫に認定しました。フロッシーちゃんは、2022年12月で27歳になり人間の年齢に換算すると何ともうすぐ120歳なのだそう。

愛猫家は、27歳のフロッシーちゃんが歩いている姿を見ると、どのようにしたらそんなに元気で長生きしてくれる猫になるのかを探りたくなります。

ひとりの飼い主にずっと飼われていたと思いがちですが、フロッシーちゃんはなんと飼い主が3回も変わっているのです。それでは、フロッシーちゃんの数奇な人生ならぬ「猫生」を振り返ってみましょう。

4人の飼い主でフロッシーちゃんの命をつなぐ

ギネス世界記録 公式チャンネル より

猫の年齢が27歳というと、飼い主が20歳のときに飼い始めても47歳になっています。ずいぶん長い間、同じ飼い主と一緒に時を刻んだのなと思っていると、そうでもないので驚きです。飼い主が3回も変わっているのです。

これは、英国の動物愛護の文化の懐の深さを表しているのでしょう。日本ではなかなかないことです。

野良猫だったフロッシーちゃん

Hint-Potによりますと、フロッシーちゃんは1995年にイングランド北西部の病院近くでさまよっていたところを、病院スタッフに保護されました。野良猫の生活から変わって温かい寝床で愛情たっぷりの環境で10年間そこで暮らしていました。飼い主は、フロッシーちゃんが10歳のときに、亡くなりました。

フロッシーちゃんの2代目の飼い主は?

それで、フロッシーちゃんが遺棄されることもなく、飼い主の妹さんが次の飼い主になりました。前の飼い主の親戚なので、フロッシーちゃんの様子を知っており、フロッシーちゃんも穏やかに暮らせたのでしょう。しかし、その14年後、フロッシーちゃんが24歳のときに妹さんは亡くなりました。

フロッシーちゃんの3代目の飼い主は?

3代目の飼い主として名乗りを上げたのが初代の飼い主の息子さんでした。彼は3年間、フロッシーちゃんの面倒を見ましたが、自分はフロッシーにとって最高の飼い主ではないと感じて(なにがあったのかわかりませんが)、猫の保護団体「タンブリッジウェルズ、クロウボロー&ディストリクト」にフロッシーを連れていくことにしました。

この点、英国の保護団体が充実しているので、ちゃんと引き取り超高齢の猫の里親を探してくれるのですから驚きです。日本なら、こんな超高齢の猫を引き取ってくれる保護団体は少ないと思います。

フロッシーちゃんの4代目の飼い主は?

ギネス世界記録 公式チャンネル より
ギネス世界記録 公式チャンネル より

猫の保護団体は老猫の介護経験があるヴィッキー・グリーンさんをフロッシーの里親として託したそうです。

こうやって、4代目の飼い主を見つけられる英国の愛護動物の文化は素晴らしいです。グリーンさんによりますと、フロッシーちゃんは目が悪いので環境が変わり鳴いてばかりいたそうです。しかし、グリーンさんは、老猫の介護経験があるので、焦ることなく見守っていたのでしょう。そしていまは、一緒にベッドで添い寝してくれるまでになっているそうです。

鳴いて部屋を歩き回るフロッシーちゃんに心を寄せるグリーンさんに、フロッシーちゃんも心を開いたのでしょう。そして、フロッシーちゃんは飼い主が3回も変わっていますが、27歳まで生き抜いて機嫌よく暮らしているそうです。

これからペットの長寿社会になる予測ですが、その課題とは?

デヴィ・スカルノさん
デヴィ・スカルノさん写真:Motoo Naka/アフロ

日本の犬と猫の平均寿命は、約15年です。

飼い主が愛情を持って世話をする上に獣医学が進歩して犬や猫の寿命がさらに延びると予想されます。一説によりますと、猫が腎不全にならないと猫の寿命が30歳までになるともいわれています。

そうなるとひとりで飼いきれないことが出てくるのです。このフロッシーちゃんのように、数人の飼い主がペットの命をつなぐことが一般的にならないと遺棄されるシニアのペットは増え続けることになるのです。

一般の人ではないですが、超セレブのデヴィ夫人は、ご自身のブログ「Dewi Sukarno Official Blog」「新しい家族が迎えました♪」で以下のように書いています。

我が家に、 新しい マイファミリーが

やってきました!キラキラ チワワの 女の子、

ナナちゃん、 11歳です

12月のお誕生日で 12歳になります♪

飼い主の方が ご高齢となり、 介護

ホームに 入ることとなり、 泣く泣く

手放され、 我が家へ お迎えすることと

なりました。

(略)

でも 心臓が悪いとかで、 朝晩のお薬は

欠かせません。

つまりデビィ夫人は、もうじき12歳のシニア犬で心臓病のチワワの里親になったということです。

一般の人は、まだまだシニアで持病の子の里親にならないです。シニアの子は、病気や介護ということがついてくるので、なかなか難しいのです。動物病院に連れていくときに、元気な子より世話の時間がかかり、注意深さが必要だからです。

そのことはよくわかっていますが、日本でもこのフロッシーちゃんのような命をつなぐ文化が根付いてくれることを願います。

デヴィ夫人のようにシニアのペットでも里親になる人が増えると、日本の愛護動物の文化ももっと成熟していくのでしょう。犬や猫は、ひとりで飼い主を探せないし生きていけないので、長寿になればその辺りのことも考えていきましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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