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ネットで話題の【猫吸い】。ニャンコは麻薬なのか? その効果を探る

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

ネットで話題「猫吸い」をご存知ですか?

猫吸いは、SNS上で「一度やったらやめられない」「ニャンコは麻薬」などと話題になっています。

今日は、「猫吸い」とはなにかを見ていきましょう。そして、その効果や獣医学的な観点などもお伝えします。

猫吸いとは?

写真:イメージマート

猫吸いとは、人(主に飼い主)が猫に顔をうずめて息を吸う行為です。吸う場所は、多くはお腹です。そのほかには、猫の分泌物が出るあごや肉球を吸う人もいます。

飼い主は、猫吸いをすることで猫の体温からぬくもりやふわふわの毛並みから触覚としての安らぎを感じることができます。

そしていいにおい(猫が健康なら)を堪能できるのです。猫吸いをするとどんなにおいがするのかを見ていきましょう。

猫吸いのにおいとは?

猫吸いでは基本的には無臭です。太陽のにおいやミルクのにおいがすることもあります。あまりよいにおいがしない場合は、病気が隠れているかもしれません。そのことは、後述します。

村上春樹氏は『ふわふわ』(村上春樹 文・安西水丸 絵 講談社)で猫のにおいをかいでいます。村上春樹氏は「猫の毛はすでに太陽の温かさをしっかりと吸いこんでいて、いのちというものの(おそらくは)いちばん美しい部分について、ぼくに教えてくれる。」と書いています。

猫吸いで本当に癒やされるの? ニャンコは麻薬なの?

写真:アフロ

猫に限らず動物とスキンシップをすると脳内に「愛情ホルモン」と呼ばれる「オキシトシン」が分泌されるという説があります。

それで、猫吸いをする行為で、飼い主は愛猫と触れ合うので、不安を減らしたりストレスを緩和したりできるので、幸せな気分になり麻薬的な効果になる人もいるのでしょう。

リモートワークの人が増えて、仕事でイライラしたら猫吸いをしてクールダウンができて、このような「猫吸い」というワードが人気を集めるのではないでしょうか。コロナ禍になり、自宅で仕事をする人が増えて猫は飼い主に媚びないけれど、ただ触れあえるだけで仕事がはかどったり、落ちついたりできる猫の存在が発見されて話題になっているのでしょうね。

猫吸いのタイミングとは?

写真:アフロ

猫は気分のよいときと、1匹にしてほしいときがあります。やはり猫がリラックスして機嫌のよいときに、飼い主は猫吸いをするようにしましょう。

猫がゴロゴロとのどを鳴らしている

仰向けで寝転がっている(いわゆるヘソ天)

このようなとき猫は、リラックスして機嫌がよい証拠なので、猫吸いのタイミングと考えてよいでしょう。

猫吸いする猫の飼い方とは?

完全室内飼いにしてください。猫を外に出すと、猫同士の病気をうつされるだけでなくノミやダニなどの虫をつけて帰ってくることもあります。そのため、ノミやダニは人に感染しますので、気をつけましょう。それに加えて、真菌などの皮膚病を持っていると、これも人に感染します。

つまり、完全室内飼いで健康な猫なら、猫吸いをしても人が猫から病気を感染する心配はないです。

うちの猫は猫吸いをさせてくれないのはなぜ?

全部の猫が飼い主に猫吸いをさせてくれるわけではありません。

まずは、猫と信頼関係ができていないと、すぐに逃げてしまう猫もいます。その他には、猫によっては触れられることが生まれつき苦手な子もいます。猫は自由奔放な動物なため、抱っこなど動きを制限されるのを嫌がることがあります。無理やり猫吸いはやめてくださいね。猫の様子を見ながら、慎重にしましょう。

それ以外でも猫吸いを嫌がる子は、病気を持っているかもしれないのです。以下のような例です。

心臓病を持っている

関節炎を持っている

がんがある

重篤な疾患があり、ひとりになりたい

以前は、猫吸いをさせてくれたのに、最近はさせてくれないなどがあれば、かかりつけの獣医師にご相談してください。

猫吸いしたけれど、心地よいにおいがしない

猫のにおいは、上述しましたが基本的には無臭です。飼い主が心地よいにおいがしているなら、以下のような病気があるかもしれません。

腎不全(アンモニア臭がします)

糖尿病(甘いにおいがします)

慢性の腸の疾患(酸っぱいにおいがします)

このようなにおいがすれば、かかりつけの獣医師にご相談してください。

写真:イメージマート

猫吸いは愛情の交歓行為です。猫もかまってもらえて嬉しいと感じて飼い主も穏やかになれて、そのうえ、猫の状態もよく把握できます。お互いが幸せに過ごせるよう、猫の様子を見て猫吸いを楽しんでくださいね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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