ミーちゃん(仮名)は、シニアになり週に2、3回来院するようになりました。ミーちゃんは、下半身がうまく動かないので冷えるとよくないからとフリースで巻かれて、使い捨てカイロが入っているケージの中にいます。

ミーちゃんは、動物病院に来るのは不本意だけれど、飼い主の中田さん(仮名)が連れてくるので、諦めているという感じに見えます。

下半身麻痺の野良猫が、なぜこのような愛情がたっぷりの生活を送っているかを紐解いてみましょう(10歳を過ぎていますが幸せに暮らしています)。

ミーちゃんは、もともと下半身麻痺の野良猫だった

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

中田さんは、自宅にも猫を飼っていました。それでも、その辺りは堤防などがあり、野良猫が多くいる地域です。中田さんは、買い物に行くとお腹を空かした野良猫がいるので、ときどきキャットフードをあげたりしていました。

ミーちゃんを初めて見たときから、下半身が不自由でうまく歩けない様子だったそうです。

「生まれつきなのか、生まれてすぐに踏まれたりしたのかよくわかりませんが、そんな姿でした」と中田さんは、教えてくれました。

中田さんは、猫好きなのでずっとミーちゃんのことが気になっていました。そんなミーちゃんでしたがある日、急に姿を消したのです。だれかに飼われていたらいいけれど、あんな下半身麻痺の野良猫を飼う人がいるのかな、と中田さんは、ずっと心配していたそうです。

中田さんは、地域猫の世話をしている知り合いに片っ端にミーちゃんのことを聞き回ったそうです。中田さんはミーちゃんという名前をつけていましたけれど、ある人にとっては白ちゃんだったりしていましたが、下半身麻痺の野良猫はそういないのですぐに通じたそうです。

もし、亡くなっていても亡骸はあるはずだと中田さんは思って、以前ミーちゃんがいたところをくまなく探しました。どこを探しても見当たらないので、諦めかけていたときに、ミーちゃんらしい猫がいると情報が入りました。

ミーちゃんは、ゴミ箱の中にいた

中田さんが、ミーちゃんの噂を聞きつけて行った先は、あるゴミ箱でした。弱ったミーちゃんはゴミ箱にいました。中田さんは、ミーちゃんがいなくなってから、多くの場所を探しに行っていたので、いつもミーちゃんを入れられる袋を持っていました。

このときも中田さんは、ゴミまみれのミーちゃんをそっと袋に入れて、家に連れて帰りました。

「ミーちゃんが見つかったので、ほっとしたのと、つらい思いをさせて申し訳なかったと思っています。早く保護したかったけれど、うちの家にも猫がいたので、踏ん切りがつかなくて」と当時のことを思い出して中田さんは話してくれました。

中田さんは、家でミーちゃんの様子を見ながらシャンプーしたそうです。ミーちゃんの体調が整ったぐらいに、筆者がミーちゃんの避妊手術をしました。

そのときは、よくミーちゃんの診察をしていましたが、その後数年間は、ミーちゃんの診察をしないまま時間が流れました。

ミーちゃんを苦しめるような治療はしたくありません

写真:cake_and_steak/イメージマート

最近になってミーちゃんは、筆者の前に再び現れました。

中田さんは「あまり食べなくなったし、片方の目が開きにくいので診てやってほしいの。先生、この子、元野良猫だったでしょう。薬を飲むなどはできないので苦しめないような治療をお願いします」と開口一番に言いました。

ミーちゃんは、血液検査をした結果は初期の慢性腎不全でした。診察の結果、神経症状で左目が開きにくくなっているので、ステロイド剤と免疫力をあげる薬を注射しました。そして自宅では内服ができないので、来院されたときは、食欲増進剤を飲ませています。

ミーちゃんは、冬でも寒さが緩む日を選んで最小限の治療のために来院しています。積極的な治療はしないけれど、中田さんの愛情をたっぷりもらって、温かい家族に見守られています。

猫は寒さに弱いので、冬に野良猫の姿を見かけるたびに、不妊去勢手術をして望まない命を増やさないでほしいと願っています。