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人が作り出した“テディベアのような犬”は、「怪物を解き放った」のと同じこと?その真意は

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

イギリスのペットグッズの通販会社が、300以上の犬種、45万匹以上の犬のデータから発表した英国発の「最も甘やかされている犬種ランキング」に1位が「キャバプーション」、2位が「マルプー」となっていました。

キャバプーションという犬は耳になじみのない種類ですね。これは「キャバリアキングチャールズスパニエル」と「プードル」と「ビションフリーゼ」の3種類の犬を掛け合わせたハイブリッドドッグです。

マルプーは、日本でも目にすることがありますが、この犬は「マルチーズ」と「トイプードル」を掛け合わせてたハイブリッドドッグです。

今日は、ハイブリッドドッグやデザイナードッグと呼ばれている犬の問題点について考えていきましょう。

ハイブリッドドッグ・デザイナードッグとは?

ラブラドゥードル
ラブラドゥードル写真:PantherMedia/イメージマート

ハイブリッドドッグは、デザイナードッグともいわれています。

2種の血統種を交配して生まれた犬のことです。このように人為的に作り出しています。簡単にいえば、血統書付きの犬同士のミックス犬(雑種)のことです。

一番有名なのは、「ラブラドゥードル」です。

オーストラリアの盲導犬団体に勤務していたウォーリー・コンロン氏は、1989年に動物アレルギーをもつ人のために、ラブラドールレトリバーと、毛が抜けにくく動物アレルギーがあっても飼いやすいといわれるスタンダードプードル交配させて「ラブラドゥードル」を世に送り出しました。このことがきっかけで、ハイブリッドドッグに関心が集まりました。

前述した「キャバプーション」は、巻き毛はトレードマークで愛らしい子犬の目をしていて、彼らは「決して年をとらない犬」「テディベアのような犬」といわれています。かわいい犬を求めている人にとっては、人気のある犬になるのは、納得できますね。

このように、犬のいいとろこだけをデザインすることができるのなら、人間の欲望に沿って、ハイブリッドドッグを作ればいいのでは、ということになりますね。

ところがそんな単純なことではないのです。次にハイブリッドドッグの問題点を考えます。

ハイブリッドドッグの問題点

マルプー
マルプー写真:nozomin/イメージマート

ハイブリッドドッグやデザイナードッグという言葉を耳にすれば、その犬のいいところどりが出来ていいように思いますね。双方の血統種に特徴する優れた性質だけが犬に伝わればいいのですが、そうとはいかないのです。

CNNが伝えるところでは、前述のラブラドゥードルの生みの親であるコンロン氏は「ラブラドゥードルの多くは精神に異常をきたしているか遺伝上の問題を抱えており、健康な子犬が誕生する例は「ごくわずか」だ」といっています。

さらにコンロン氏は「パンドラの箱を開け、フランケンシュタインの怪物を解き放ってしまった」とも振り返っています。

ラブラドゥードルは「ラブラドールレトリバー」と「スタンダードプードル」に共通の股関節形成不全や眼病を発症する可能性が高くなります。

キャバプーションは「キャバリアキングチャールズスパニエル」と「プードル」と「ビションフリーゼ」に共通する心臓病や膝蓋骨疾患や耳の疾患などを発症する可能性が高くなります。

まとめ

ラブラドゥードル
ラブラドゥードル写真:PantherMedia/イメージマート

ハイブリッドドッグやデザイナードッグは、外見の特徴を重きにおいて交配されていることが多いです。

それと毛が抜けにくく動物アレルギーがあっても飼いやすいといわれるプードルとの交配した犬種が多くあります。たとえば、マルプー(×マルチーズ)、シープー(×シーズー)、コッカプー(×アメリカンコッカースパニエル)です。これらの○○プーという犬は、プードルと交配しています。これらの犬が、全てプードルのように毛が抜けにくいか、というとそうでもないのです。動物アレルギーの予防のために飼ったのに毛が抜けて問題になっていることもあります。

ハイブリッドドッグは、歴史が浅いためにどんな疾患を持っているか、性格などもわかりにくいのです。

ハイブリッドドッグには、このような事実があったことを知識としてもってほしいですね。

人間は、犬の望ましい性質を選択して犬の種類を作ってきた歴史があります。そのためチワワからセントバーナードまでの多様な犬がいますね。

新しい犬種を作り出すためのブリーディングは、先天的な疾患などがないか、じっくりと見極めることが望ましいですね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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