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【臨床獣医師の告白】野良猫は「ほとんど生き残れない」過酷な現実を知っていますか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

今日は、クリスマスですね。コロナ禍で会いたい人にもなかなか会えません。ひとりでクリスマスイブを過ごすと、孤独を感じている人も多くいます。ふと屋根を見上げると野良猫が、まったりと昼寝をしている風景を見ることがあります。野良猫は、のんびりしていていいなと思っていませんか。

しかし、実際は、野良猫は過酷な環境にいるのです。「生き残れる子は、ほんのわずか」という実態をみていきましょう。

以下のような野良猫の記事があります。

■もともとは飼い猫だった野良猫

野良猫は、もともとは飼い主に捨てられたり、ふらっと家から外に出た時に道に迷って帰れなくなったりした猫なのだそうです。

そんな猫たちに、「外での本来の居場所はない」と橋本獣医師は言います。

食べ物はなく、寝る場所もない。それでも生きていくために必死でゴミを漁ることを覚え、時には花壇でトイレをして、ガレージで眠るしかないのです。交通事故や悪い人に虐待される危険にも常にさらされています。

「飼い猫が外に捨てられたら、生き残れるのはほんの一部です」と、続ける橋本獣医師。

獣医師に聞く、野良猫に関する大きな誤解 捨てられたら「生き残れるのはほんの一部」

さらに詳しく野良猫の実態をみていきましょう。

野良猫は、人が作ったもの

日本の街に見られる野良猫は、人が作り出したものです。人に捨てられたり、家に帰れなくなった猫が、外に暮らすようになったのです。それを忘れてはいけません。日本国内では、野生の猫は、イリオテヤマネコやツシマヤマネコぐらいしかいないのです。

いまやフクロウはペットして飼われています。日本にも野生のフクロウはいますが、野生の猫はほとんどいないのです。猫は、外で暮らすことは、過酷なのです。そのことについてみていきましょう。

野良猫の過酷な生活

野良猫は、気楽ではないのです。そう見えるだけなのです。現実は、以下のような過酷な生活なのです。

・寒さのストレス

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

本州でも冬になると、朝晩はぐっと冷え込み0度近くになることもあります。家猫は、床暖房やホットカーペットの上でぬくぬくしているかもしれません。外の子は、自販機の下や車のエンジン付近に入り込んで、暖をとっているのです。車を運転しようとしたら、車のエンジン部分に猫がいたなどの事故があるのもこのような理由からです。

・暑さのストレス

寒いのもストレスですが、暑いと熱中症になることもあります。家猫は、エアコンをつけて、快適にしてもらっています。でも野良猫は、そんなことはないので風の通しのいいところで、涼むぐらいしかできないのです。

・雨のストレス

写真:satoshi881/イメージマート

屋根があれば、雨がかからずにすみますが、野良猫は、狭い軒下などに行かないと、雨に濡れることもあります。雨が降ると、外は、濡れていることも多いので、寒い時期は、余計にストレスで、病気にかかりやすいです。

・食事のストレス

写真:satoshi_0_0v/イメージマート

家猫は、毎日、美味しそうなキャットフードを用意してもらえます。今日は、これを食べる雰囲気ではないと思えば、飼い主が、気をきかせて美味しそうなものを出してくれます。

それに引き換え、野良猫は、今日の食事にありつけるかどうかもわからないのです。地域の人は、キャットフードをくれる人もいますが、その人が何かの都合で来ない日もあるのです。

このような経験をしているので、飼い猫になり、ちゃんとキャットフードをもらっていても、なんでも口にして、トイレの砂も食べる子がいました。がつがつ食べなくなり、そして、トイレの砂も食べなくなるのに、飼い猫になって数年かかりました。いつもひもじい思いをしていたので、それがなかなか抜けませんでした。

・寝床のストレス

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

家猫は、ふかふかのベッドや飼い主と同じ布団で寝ていたりします。野良猫は、もちろん布団などなく、雨風のかからない軒下などで寝ます。だれが来るかわからないので、なかなか熟睡できません。

・不妊去勢手術をしていない子は、 喧嘩や交配から伝染病に

去勢手術をしていない雄猫は、テリトリーを気にします。そのため、自分のテリトリーに入ってきた猫と、喧嘩をすることになるのです。そうなると、当然、噛まれたり、ひっかかれたりするわけです。それで、FIV(いわゆる猫エイズ)FeLV(猫白血病ウイルス感染症)などの猫同士の伝染病にかかります。

雌猫で不妊手術をしていないと、発情期には交配して、FIVやFeLVに感染します。

・猫嫌いの人

世の中には、猫が嫌いの人、そして猫に虐待をする人もいます。そのような人に、追い払われたり、いたずらされたりするかもしれないのです。外にいると、人に作り出された野良猫なのに、人から危害を加えられることもあるのです。

・交通事故

野良猫などは、どこへ行ってもいいわけなので、道を横断します。車を見ているのですが、やはり事故に遭うこともあります。そうなると命の危険にさらされるのです。

寿命の問題

いまや、家猫は、十年以上生きる子が、ほとんどです。ご長寿の子は、二十年以上生きる子もいるのです。

その一方、野良猫のほとんどが、生き延びることができません。2、3年しか生きられない子が多くいます。上記の多数のストレスがあり、その上、猫同士がかかる伝染病にもかかりやすいからです。

野良猫のいない世界を目指して

写真:Cultura/イメージマート

野良猫は、人が作り出したものです。寒空の下で、ひょっとしたら、キャットフードが合わずオシッコが出にくい下部尿路疾患になり、人知れずなくなっている子がいるかもしれません。そのような子を作らないために以下のことをしましょう。

・不妊去勢手術をする

望まない命を生み出さないために、家で飼っていても不妊去勢手術をしましょうね。猫は、つがいでいれば、1年間に20匹も増える動物なのです。

子猫を捨てない(遺棄しない)

子猫を捨てることは、動物愛護法により犯罪です。捨てられた子猫は、多くの場合、死が待っているのが現実です。外でひとりで生きていくことは、難しいのです。

・室内飼いする

外に出て、迷子にさせないために、完全室内飼いで飼ってあげましょう。外に出すと、交通事故に遭うリスクがありますし、他の猫から、伝染病がうつることもあります。一歩も外に出さない室内飼いの方が、元気で長生きです。

数年たって、そういえばこの辺りに野良猫が数多くいたけどいなくなったというような日本になることを望んでいます。野良猫は、人が作り出したものだから。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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