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猫の「ココ」ちゃんお手柄! なぜ、用水路に転落した高齢者を発見できたのか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロイメージマート)

富山市で用水路に転落した高齢者は、猫のココちゃんのおかげで周りの人たちが動き、救出されました。素晴らしい功績ですね。災害救助犬はいますが、猫はいまのところいないはずです。それにしても猫や犬は、これだけ人と一緒に生活していますから、人のことをよく見ているので、このような不思議な力を発揮できるのでしょう。ココちゃんの映像などから、なぜ、発見できたのかを読み解いてみましょう。

なぜ、転落した人を救出できたのか?

ココちゃんと周りの人の連携プレイがあってこそ、救出できました。以下のような理由です。

・ココちゃんは、穏やかで思慮深い性格。

Twitterで、ココちゃんの動画をみると、表彰式で瞳孔は縮小しています。つまり黒目が、大きくなっていないのです。これは、興奮していないことを示しています。大勢の人が集まると、どうしても興奮する猫も多いです。そのときは、瞳孔が開いて、黒目が大きくなります。一方、ココちゃんは「助けましたニャア」という穏やかな感じですね。首輪とリードはつけられていますが、人の様子を観察しているようにも見えますね。もちろん、飼い主にかわいがられていたので、人との信頼関係があるから、このように堂々としているのでしょうね。猫は、元来、単独生活の動物ですが、室内飼いになり、犬のように群れで生活することになれてきています。それで、人に何らかの異変を伝えるようになったのですね。

・周りにいた人が、猫好きでココちゃんのいつもと違う行動を理解した。

猫に関心がない人は、そこに猫がいても目に入らずスルーします。でも、この場合は、ココちゃんが何かをじっと見つめていて、おかしいとわかってあげたのが大きいですね。飼い主でもない人が、猫が普通ではないと気づいてあげられたのは、相当な猫通ですね。それで、自分で何があるのかと確かめて男性を救出できたのでしょう。

もしかしたら、みなさんの周りにいる猫にもそんな能力があるかもしれません。何かの異変やいつもと違う行動を感じたら、猫が何らかのサインを送っているのかもしれませんね。

以下は、猫ではありませんが、犬が男の子を守った記事です。

自閉スペクトラム症を患う3歳の男の子がある朝、森の中にある一軒家から突然いなくなった。男の子はその日の午後遅くに発見されたが、そばに2頭の飼い犬がピタリと寄り添っていたことから無防備な3歳児を守り抜いた犬たちを称賛する声があがっている。『Bored Panda』『WJHG-TV』などが伝えた。            

出典:オムツだけで行方不明になった自閉症の3歳児、2頭の飼い犬が守り抜く(米)

犬は群れ社会の動物です。

自宅から3歳の男の子がオムツのまま出ていくので、どこかに行くので守らないといけないと思って、犬たちはついて行ったのでしょうね。犬が人を救う話はもちろん、珍しいのです。ただ、犬だと訓練されている災害救助犬があります。以下です。

災害救助犬(レスキュードッグ)とは

地震や台風などで、土砂崩れなどが起きて行方不明になっている人を優れた嗅覚で捜索するために特別に訓練された犬たちがいます。

人命救助を使命としている犬なので、普段からきちんと訓練を積んでいます。災害現場は、足場が悪かったり、注意しないと災害などに巻き込まれますから、訓練は大切です。捜索活動は、きわめて慎重な判断が要求されます。

AIもいいけれど動物の力は素晴らしい

人の仕事が、AIに変わっていくといわれています。そんな中、このように猫や犬が人の命を救うニュースを読む度に、動物の力って、すばらしいと思います。人のように「言葉」を使ってコミュニケーションをしませんが、視線や行動で、私たちに何らかの異変を教えてくれます。普段、動物の診察をしていますが、室内飼いになったペットたちは、飼い主である人の様子をよく理解していると思います。ココちゃん、ご褒美にもらったキャットフード、お口に合ったのかな、と気になっています。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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