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保護した猫に咬まれたら命の危険も… 知っておきたい「重症熱性血小板減少症候群」とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの感染が広がっています。これだけ医学が進歩していてもウイルスの脅威をひしひしと感じますね。猫に咬まれて一般的な人畜共通感染症は「猫ひっかき病」です。それ以外に、新しいウイルスの感染症があるのをご存じですか。

重症熱性血小板減少症(severe fever with thrombocytopenia syndrome :以下SFTS)が2013年に日本で見つかりました。マダニが関係しています。4月頃~10月下旬頃までは、マダニが発生します(マダニは動物に寄生し、吸血)。気温が20度を超えると、ダニの注意も必要になりますね。今日は、そのSFTSについて、考えていきましょう。このウイルスに感染するとほとんど人が発症して、高い確率で重症化します。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

2011年に中国において新しい感染症として流行していることが報告された病気です。その感染症が日本に入ってきました(元来からあったという説もありますが、今後の研究でわかってきます)。2013年1月、SFTSの患者(2012年秋に死亡)が国内で初めて確認されて以降、毎年60~90名前後の患者が報告されています。2017年3月以前はこの病気に感染して発症するのは人だけだと考えられていました。しかし、2017年4月に猫、2017年6月に犬がたてつづけにみつかりました。

まだ、あまり知られていない感染症ですが、猫や犬から人に感染して発症したケースも報告されています。

猫ー人に感染した1例

外にいる猫に餌やりをしていた猫に咬まれたのは生来健康な50歳代の女性でした。

症状は、発熱、食欲低下、 嘔吐等の症状があり血液検査で白血球減少と血小板減少が認められ、その後、 症状が悪化し死亡しました。詳細な検査の結果SFTSが原因であったことが明らかになりました。

犬ー人に感染した1例

犬が元気を消失し、食欲低下を示しました。その犬は回復しました(よくある症状ですね)が、 犬の発症から10日目に飼い主が発熱、関節痛、頭痛等の症状に引き続き下痢等の消化器症状がありました(咬まれたとは、書いてないので濃厚接触の可能性かもしれません)。その犬も飼い主もウイルス学的な検査を実施したところ、ともにSFTSの感染が確認されました。

病原体

ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルス

感染経路

マダニ(STFSウイルスを持っている)に咬まれる、STFSウイルスを持っている犬や猫に咬まれた、または濃厚接触。

症状

・発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)。

・ときに、腹痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状など。

・血液所見では、血小板減少、白血球減少。

・致死率は10~30%程度。

2017年4月に和歌山県にてSFTS発症ネコが発見されました。 世界で初めてのSFTS発症動物の確認例となり、厚生労働省によるSFTS発症ネコに関する通知がありました。2019年までに 120頭のSFTS発症ネコが確定しています。

・元気・食欲消失(100%)

・黄疸(95%)

・発熱(78%)

・嘔吐(61%)

猫では黄疸が多いこと、下痢が少ないことが人と異なります。

・血液検査ではCKやCPK上昇(100%)、 血小板減少(98%)、 総ビリルビン(T-Bil)上昇(95%)、 肝酵素ASTやGOT上昇(91%)、 白血球減少(81%)など。

・致死率は約60%と非常に高い。

以前は、猫だけがこの病気にかかって、SFTSは多くのイヌで不顕性感染すると考えられていました。しかし、 2017年6月に徳島県にて世界で初めてSFTS発症イヌが発見され状況が変わりました。

・元気・食欲低下(100%)

・発熱(100%)

・黄疸(2頭中1頭)

・消化器症状(75%)

犬は、猫ほど黄疸の症状がないようですね。

・ 血液検査 白血球減少(100%) 血小板減少(100%)肝酵素ALTやGPT上昇(100%) 総ビリルビン上昇(4頭中2頭)など。

・致死率は29%。

予防

このような感染症の特徴は

・高い死亡率

・治療が難しい。

・ワクチンがない。

・特効薬がない。

です。主にマダニが媒介するので生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボンを着用しサンダルのような肌を露出するようなものは履かない。

それ以外に、猫ー人感染、犬―人感染がわかっているので、咬傷あるいは濃厚接触は避けましょう。猫や犬の唾液・糞便・尿中からウイルスが排泄されることもあるので、飼い主は迅速な処置を手袋でするのがいいですね。

まとめ

春になると野山に遊びに行きたくなりますね。グローバル化の時代になり、人や物についていろいろなウイルスも移動します。そしていままでなかったウイルスも日本に入ってくるのも事実です。今日はダニから媒介される話です。不安を煽っているわけでないですが、科学的に正しい知識を持って猫や犬に接してほしいと考えています。アウトドアの季節になりますが、飼い主も猫も犬も健やかで幸せな生活を望んでいます。

参考サイトは以下です。

SFTS発症動物について(ネコ, イヌを中心に)国立感染症研究所

ペットからSFTSウイルスに感染し, SFTSを発症した事例報告 国立感染症研究所

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について 厚生労働省

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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