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2019年、一番人気の猫 ヒカキン氏も飼っている折れ耳スコティッシュフォールドの真実

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

今年も残すところ、わずかになりました。みなさま、よき1年でしたか。師走で何かと慌ただしいときですが、SNSでかわいい猫の姿に癒される方も多いのではないでしょうか。そんなときだからこそ、今年話題になった人気の猫について考えてみましょう。

2019年、猫の人気ランキングは?

さて、猫の人気は年々、変動するものですが、近年はアメリカンショートヘアーが高くなっています。しかし、今年は各種ランキングサイトで、スコティッシュフォールドがアメリカンショートヘアーなどを抑えて、1位になりました。

https://forincs.com/read/cat-rank/

SNSでも本当によく見かけますね。SNS映えするからという理由で飼っている方も中にはいるのかもしれません。

スコティッシュフォールドの遺伝疾患

YouTuberで人気のヒカキン氏も、人気のスコティッシュフォールドを飼われています。SNSで丸い顔でとても可愛い「まるおちゃん」と「もふこちゃん」のことをよくアップされていますね。もちろん大切に飼われていまし、この猫の特性をよく理解されていると思います。

私たちが、臨床現場で血液検査のために採血しようと保定すると、この子たちは、大抵、「ウーファー」といって怒ります。

なぜ、他の猫に比べて怒るのでしょうか。それは、関節などが痛いのです。

スコティッシュフォールドの歴史は、1961年にスコットランドの農家に生まれた一匹の白猫に始まりました。「スージー」というこの雌猫は、どれだけの月日が流れても耳が立たなかったのです。その子猫も同様に折れ耳だったのです(猫のほとんどが、立ち耳をしています)。

スコティッシュフォールドの特色

スコティッシュフォールドとは、スコテットランド地方の折れ曲がったという意味です。耳が、折れ曲がっているのが、特徴です。そして、短めの首で、丸い顔、大きな目、丸みを帯びた体とされています。

スコティッシュフォールドの病気

骨軟骨異形成症

見た目は、丸みがあってかわいいのですが、折れた耳の理由は、軟骨の形成異常(骨軟骨異形成症)によるものとされています。先天的なそのような疾患になる遺伝子を持っているのです。耳(耳にも軟骨があるので)以外の骨や軟骨にも重度の異常が見られることも多く、歩行困難になる可能性もあります。骨にコブである骨瘤ができている子もいます。折れ耳同士を交配すると75%以上の確率で、折れ耳が生まれます。折れ耳と立ち耳を交配しても50%以上の確率で折れ耳が生まれています(優性遺伝の疾患)。つまり、折れ耳の子は、ずっと四肢に痛みがあることを意味するのです。

そして、関節痛などがあるので、高いところに乗ったりできないので、ひたすら床にいる子もいます。飼い主は、スコティッシュフォールドが、そういう痛みがあるということを理解していなくて、おとなしい性格だと思っている人もいます。実は、テーブルの上に乗らないということは、そのような痛みを孕んでいることを意味します。

他の病気になったときに難治性

一般的に、ひとつ先天的な疾患を持っている子は、他にも持っていること多く、他の猫より病気が治りにくいです。下部尿路疾患などがあれば、他の猫より難治性のこともあるので、臨床現場では、注意しています。

スコ座り

撮影筆者の知人 スコ座り
撮影筆者の知人 スコ座り

SNSで、このスコティッシュフォールドの座り方をスコ座りといって、可愛いといわれています。本当は、痛み関節に負担がかからないように、このような座り方をするのです。可愛いのではなく、痛みのせいなのです。

耳が立っているスコティッシュフォールド

撮影は筆者の知人 立ち耳のスコティッシュフォールト
撮影は筆者の知人 立ち耳のスコティッシュフォールト

そんなことから、最近では、スコティッシュフォールドなのに、耳が立っている子もいます。折れ耳同士を交配させると、このような軟骨の疾患が増えるからです。耳が立っているスコティッシュフォールドでもスコ座りしているので、やはり痛みがあるようです。

年末の干支に絡んだ猫の小ネタ

来年の干支は、子・ネズミ年ですね。干支は、ご存知のように、十二支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12種類です。子であるネズミが入っているのに、猫がいないのは、愛猫家にとってさみしいですね。何故、干支に猫年がないのでしょう。 諸説ありますが、日本でよく言われているのが以下の説です。

ネズミが猫に間違った日を教えた

元旦の日に、その辺りに住んでいる動物に、神様は、あいさつに来るようにいいました。

その日最初にあいさつに来た動物から順番に、12番目に来た動物までを、干支の動物にするというものでした。これを聞いた動物たちは、何とか年の動物になろうとしてはりきってでかけました。

ところが、猫はうっかりして、いつ神様のところに行けばいいのかを忘れてしまったのです。困った猫は、ネズミの所に聞きにいきました。ネズミは意地悪をして、ネコに1日おそい日を教えたといわれています(それで、『トムとジェリー』のように、猫とネズミは仲が悪くなったといもいわれています)。ネズミは、元旦に一番乗りして、干支の筆頭の動物になっていますね。

猫のせいでブッタが亡くなった

仏教の開祖ブッダは80歳でこの世を去ったのですが、死因は食中毒であったといわれています。その様子はブッダの遺言集である経典『涅槃経(ねはんぎょう)』に綴られています。

ブッダは、食中毒に効く薬があるのでネズミに取りに行くように命じます。しかし、その道中で猫が使者であるネズミを食べてしまったため、薬が飲めず亡くなってしまったという伝説もあります。

いずれにしろ、古い時代から、猫が人間と一緒に寄り添いながら生きてきた愛すべき存在だということがよくわかりますよね。

まとめ

来年は、ネズミ年ですが、この年末に、人気の猫のスコティッシュフォールドについて考えてみませんか。インスタ映えするといって、スコ座りがたくさん載っています。それは、本当は、関節の痛みを軽減する座り方だったのです。スコティッシュフォールドが、日本では人気で飼われています。そのような先天的な疾患を持っている子が多くいることを知って欲しいです。その子たちを痛みのないような生活を送ってもらいたいものです。私たちは、この子たちを抱っこしたり、採血するときは、痛みがあるということを頭に置いて、治療をしています。このような先天的な疾患を持っている子を繁殖させるのはよくないですね。24時間、痛みがあるのは、耐えられないことです。消費者であるあなたは、スコティッシュフォールドの可愛い仕草は、実は疾患によるものが多いことを理解して欲しいです。今いる子たちを大切に世話して、その子一代限りにして欲しいと切に望みます。今年も残すところ、4日になりました。まったりしたお年をお迎えくだいませ。そして、SNSで人気のスコティッシュフォールドのことを少し考えていただくと嬉しいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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