「加熱式タバコ」乳幼児の「誤飲事故」なぜ危険なのか

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

 年末年始、子どもを連れて帰省する家庭も多いだろう。好奇心旺盛な子どもは、慣れない環境で手近にあるものに興味を示し、口に入れてみようとする。こうした誤飲事故でタバコ、特に加熱式タバコのスティックやカプセルなどが増えている。

多い乳幼児のタバコ誤飲事故

 一般家庭などで起きた薬品使用や誤飲などの急性中毒事故による電話受付を行っている日本中毒情報センターの発表https://www.j-poison-ic.jp/jyushin/2018-2/#2-3によれば、全体の74%が5歳以下の子どもの問い合わせであり、自宅や知人宅などの居住内からの相談が91%となっている。こうした事故では誤飲・誤食・誤使用などの不慮の事故が多く、5歳以下では100%に近い割合になっているようだ。

 日本中毒情報センターによれば、5歳以下での誤飲や誤食などの事故は化粧品が最も多く、ついでタバコ関連品となっている。同センターには特別に「たばこ専用自動応答電話」を設置しているように、タバコ関連品への対応が重要という認識だ。

 また、2018年12月に厚生労働省から発表された「2017年度 家庭用品等に係る健康被害 病院モニター報告」によれば、小児の誤飲事故で最も多かったのがタバコ(147件、23.0%)となっている。

 タバコは喫煙者の日常にごく普通にあるもので、乳幼児や子どもの興味を引きやすくタバコの誤飲事故は多く、救急搬送されたり重篤な症状につながることも少なくない。最近、加熱式タバコの喫煙者が増え、そのタバコ部分が小さいため、誤飲事故がさらに増える危険性がある。

 加熱式タバコを含むタバコ製品は、日本では法律によってタバコ葉を含むものとされている。タバコ葉にはニコチンが含まれているが、ニコチンは薬機法(旧薬事法)によって劇毒物に指定され、許可を得て適切な管理のもとでなければ使用・販売することはできない。

 ニコチンには強い毒性がある。体重1kg当たりニコチン1~13mgが成人の致死量とされ、90kgの成人では1.8%のニコチン溶液5mLで致死量に達し(※1)、乳幼児のニコチン経口致死量は10〜20mg(タバコ半分〜1本分)と考えられる。

ニコチン中毒の危険性が

 最近、日本小児科学会雑誌に発表された東京都立小児総合医療センター救命救急科の研究グループによる調査研究(※2)では、2016年4月1日から2017年8月31日の17ヶ月間に救急外来を受診した加熱式タバコの誤飲症例について分析している。そのうちの8症例が加熱式タバコの誤飲で、生後9ヶ月から16ヶ月までの小児だった。

 使用前のスティックが4例、使用後の吸い殻が4例で、嘔吐が1例でみられたという。一方、紙巻きタバコの誤飲事例は同期間内に31例だった。

 同研究グループは、加熱式タバコのスティック1個に含まれるニコチン量は2〜7mgであり(※3)、小児における経口でのニコチン摂取による中毒症状は約1mgで引き起こされるとされるため(※4)、加熱式タバコのスティックに含まれるニコチン量で小児がニコチン中毒を引き起こす危険があると懸念している。

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上段左から十円玉、上は単四電池、下は誤飲事故がよく起きるボタン電池、下段左からプルーム・テックのたばこカプセル、アイコスのヒートスティック、紙巻きタバコ(マールボロ)アイコスのヒートスティック、プルーム・テック(Ploom TECH)のたばこカプセルは既存の紙巻きタバコ、単四電池よりも小さい。紙巻きタバコの誤飲事故が多いので、乳幼児が容易に口に入れることのできるサイズの加熱式タバコの誤飲事故はもっと増えるだろう。:写真撮影筆者

味付けが多い加熱式タバコ

 加熱式タバコのラインナップをみてみればわかるが、これまでのメンソールに加え、シトラスやベリーなどのミント系、ストロベリーマンゴー、ベリーミント、アップルといったフレーバー系、さらにフィルター内のカプセルをつぶして味付けを出すタイプなどがある。乳幼児や子どもが、こうした甘い芳香に惹かれやすいのは当然だろう。

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現在、売られている加熱式タバコのタバコ葉部分(スティックなど)。網掛けが何らかの味付けがされているもの。ほとんどの加熱式タバコが味付けタバコとういことがわかる。表作成筆者

 これまでタバコの誤飲事故で死亡例はほとんど報告されていない。タバコ葉に含まれるニコチンの強い嘔吐作用により、吸収される前に吐き出されることが多いからだ。また、乳幼児の場合は、そのままタバコを口に入れるのではなく、手でバラバラにし、一部を口に入れたりすることもあって発見が早いからとも考えられている。

 だが、加熱式タバコの場合、サイズも小さい上にプラスチックの小ケースに入っているものもある。乳幼児が口に入れた場合、発見されにくく、嘔吐せずに消化器官へ送られてニコチンが吸収され、中毒症状を引き起こす危険性は高い。

 厚生労働省は、喫煙者はタバコや加熱式タバコのスティックを放置せず、目の届かない場所に保管し、子どもの行動に注意するよう呼びかけている。

 もし仮に子どもがタバコを誤飲した、もしくはその可能性があったり症状から疑われる場合、すぐ医療機関へ連絡し、措置を仰ぎ、症状によっては救急搬送を依頼すべきだ。ニコチンの吸収を早めてしまうため、大量の水やミルクなどを飲ませることは避けたい。

・公益財団法人 日本中毒情報センター「中毒110番・電話サービス

※1-1:Bernd Mayer, "How much nicotine kills a human? Tracing back the generally accepted lethal dose to dubious self-experiments in the nineteenth century." Archives of Toxicology, Vol.88, Issue1, 5-7, 2014

※1-2:Robert A. Bassett, et al., "Nicotine Poisoning in an Infant." The New England Journal of Medicine, Vol.370, 2249-2250, 2014

※2:笹岡悠太ら「加熱式タバコの誤飲による急性ニコチン中毒の危険性」日本小児科学会雑誌、第123巻、第7号、1174-1177、2019

※3:独立行政法人 国民生活センター「乳幼児による加熱式たばこの誤飲に注意」独立行政法人 国民生活センター、2017

※4:星野恭子ら「タバコ誤飲におけるニコチン、コチニンの血中濃度について」日本小児科学会雑誌、第100巻、第8号、1387-1391、1996